ブエルタ・ア・エスパーニャ第19ステージ:頂上決戦で泣いたのはモビスター、S.イェーツががっちり首位をキープ!クライズワイクが再び総合3位に!ステージはピノーが2勝目で総合7位
残り2ステージの山岳、その第1ラウンドは、攻め続けたモビスターにとっては悲しい結末となってしまった。アシストとなったキンターナがバルベルデをアシストしようとするがまさかのパンク、これによりアシストを失ったバルベルデはそのままタイムを失い、総合でこの日だけで1分以上を失う大ブレーキとなった。総合2位は守ったものの、一気に総合3位へとジャンプアップしたスティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ)と4位へと順位を下げたエンリック・マス(クイックステップ・フロアーズ)に肉薄される形となり、総合優勝争いよりも一気に総合表彰台争いが激化する形となっている。
しかしステージの主役はティボー・ピノー(グルーパマFDJ)、浮き沈みの多い走りを見せた今大会だが、これでステージ2勝目、さらには総合7位へとジャンプアップを果たした
勝負は残り19km最後の頂上への上り口から始まった。先行していた逃げがステージ優勝目指し踏ん張ろうとするが、総合優勝への争いが集団のペースを上げ、みるみる間にその差が詰まっていく。積極的に攻めたのはモビスター、ダブルエースのためにライバルたちをふるい落としにかけるが、脱落していくのはすでに総合争いから離脱した元総合優勝候補らばかり、現在のトップ10は揺るぐことなく淡々と対応をする。
残り17kmで逃げを吸収すると、まず動いたのはナイロ・キンターナ(モビスター)だった。様子見の揺さぶりをしながら、残り12.9kmでアタックを仕掛けると、スティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ)とジョージ・ベネット(ロットNLジャンボ)のコンビがすぐにそれに対応をする。しかしこのキンターナのアタックがライバルたちに勢いをつけてしまった。ベネットは脱落したがそこへピノーが合流、さらには残り10kmを切りサイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)が一気に追いついてくる。ここで総合2位で25秒差につけているアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)が上がってこないことに気づいたキンターナは先頭集団からあえて離脱、減速してバルベルデを待ち合流、追走を目指す選択をする。バルベルデとS.イェーツとのタイム差は15秒、勝負はこれからかと思われた。
しかしここで不運が訪れる。なんとキンターナが残り6kmを切りパンク、すぐにホイール交換は終えたものの、ここからの追走はチームにとって致命定期なダメージとなる。残り4kmでバルベルデとピノー、クライズワイク、S.イェーツとの差は1分を超えてしまう。しかしここからバルベルデは驚異的な粘りを見せる。その差が広がることはなくなったが、逆に縮まることもなく、総合優勝を狙った大ベテランはひたすら耐えタイムロスを抑えることに専念しなければならない時間が続く。残り2kmでキンターナがようやくバルベルデに合流を果たすが、追走で足を使い切り、さらなる追走を仕掛けられない。
先頭は残り1kmを切りまずクライズワイクが脱落し、そしてピノーがアタックを決めS.イェーツは振り切りそのままゴール、総合優勝争いを早い段階であきらめた男が総合で再び順位を戻した。
「薄氷の上を渡るような勝利だったね。自分でも確信がないままに走り続けたよ。先日の山岳では調子が落ちたけど、今日はまたいい感じだったんだよ。それにもうこうの順位だから楽しんで勝負したかったんだ。だから早めに動いたんだよ。でもS.イェーツが調子よさそうだったから、そればかりが気になったよ。」ピノーの勝因は踏ん切りをつけての展開だったようだ。
そして総合で優勝に一歩近づいたS.イェーツは、「調子がよかったんだよ。チームが機能したね。あとは明日の山岳をこなすだけだけど、明日が終わるまでは気を緩めることなんてできないね。」と口にし、気持ちを引き締めた。
このステージでタイムをしないながらもなんとかステージ8位、総合2位をキープしたバルベルデだが、まだあきらめてはいない。「今日はライバルたちのほうが調子がよかったということだよ。調子がいい時もあれば、悪い時もあるさ。タイムを失ったことだけが残念だよ。」まだ大ベテランの目は死んでいない。
総合ではステージ3位のクライズワイクが3位へと浮上、バルベルデには先着したが、エンリック・マス(クイックステップ・フロアーズ)はステージ4位へと順位を落としたが、まだまだ総合表彰台を狙える位置にいる。
ブエルタ・ア・エスパーニャ第19ステージ
1位 ティボー・ピノー(グルーパマFDJ) 3h42’05”
2位 サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) +05”
3位 スティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ)と +13”
4位 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーションファースト・ドラパック) +52”
5位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ)
6位 エンリック・マス(クイックステップ・フロアーズ)
7位 ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ) +1’03”
8位 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター) +1’12”
9位 トニー・ギャロパン(AG2R) +1’15”
10位 ナイロ・キンターナ(モビスター) +1’49”
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) 76h44’41”
2位 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター) +1’38”
3位 スティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ) +1’58”
4位 エンリック・マス(クイックステップ・フロアーズ) +2’15”
5位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +2’29”
6位 ナイロ・キンターナ(モビスター) +4’01”
7位 ティボー・ピノー(グルーパマFDJ) +5’22”
8位 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーションファースト・ドラパック) +5’29”
9位 ヨン・イザギーレ(バーレーン・メリダ) +6’30”
10位 トニー・ギャロパン(AG2R) +7’21”
H.Moulinette