ブエルタ・ア・エスパーニャ第15ステージ:今大会のクイーンステージ、それでも決定的な差がつかぬ総合バトルを制したのはピノー、これで総合トップ10入り、総合は究極のどんぐりの背比べ!
今大会のクイーンステージでようやく本格的な総合バトルが開始された。しかしそれでも差がつかぬどころかさらに混沌とした結果に終わるほど、今大会での実力差は少ない。真っ向勝負の中で二人のエースを残したモビスターに対し、総合リーダーのサイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)がいら立ちを見せるシーンもありながらも、総合上位を狙うティボー・ピノー(グルーパマFDJ)、さらにはミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ)がアタックをして先行、総合トップ3とそれぞれタイムを詰める形となった。ステージ優勝はピノーが快心のアタックから独走、そのまま総合でも一気にトップ10入りを果たした。
例年であれば大方の勝負はこのあたりで見えてきてもおかしくないはずだが、今年は違う。間違いなく本命なき戦い、どんぐりの背比べ状態での潰しあいに誰が生き残れるかのサバイバル総合バトルとなっている。この日の最後の上り勝負、先行していたイヴァン・ガルシア(バーレーン・メリダ)が残り8kmでペースを上げてきた総合勢の集団に飲み込まれてしまう。すると次に動いたのはピノーだった。
残り6km、ペースを上げるピノーに対し誰も追走を仕掛けない。タイム差は10秒ちょいと大きくは広がらないが、縮まりもしない。ここから誰が抜け出すかでエンリック・マス(クイックステップ・フロアーズ)、ロペス、ナイロ・キンターナ(モビスター)、S.イェーツがお互い揺さぶりをかけるが、どれも決定打にならない。
そしてピノーはそのまま最後まで独走を貫き見事ステージ優勝、この勝利で全てのグランツールでのステージ勝利を達成した。「6kmからのアタックは予定通りだったよ。調子がよかったし、やれると思っていたからね。まだ直接対決と言う意味では蚊帳の外だと思っていたから、逃げを容認されるだろうと想定したんだよ。勝利は嬉しいね。それも大会の名物峠で勝てたのは最高の気分だよ。あとは一つでも総合順位を上げて、そして世界選手権だよ!」ピノーは冗舌に語った。
その背後では残り1km手前、緩斜面からいったん短い下りに入ったところでに入りロペスがアタック、これが決まってしまう。これに対しS.イェーツが追走の姿勢を見せないキンターナとアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)に対して声を荒げる一幕も。それでも動かなかったモビスターの2トップ、さらにはキッチリとそこについていたマスはそのままゴールでスプリント勝負、S.イェーツがロペスに次ぐステージ3位となりボーナスタイムも獲得した。
「まったく協力体制がなかったからね。だから攻め手がなかったんだよ。少し向かい風があったから、仕掛けてもタイム差をつけにくかったんだよね。だから全体としてはあまり動きのないステージになったね。そういう意味ではピノーのアタックは素晴らしかったね。」前回チームの動きを批判されたS.イェーツが今度はモビスターの動きを批判、心理戦を繰り広げた。
「タイム差がついたのは気にしないけど、ボーナスタイムを取られたのは嫌だね。批判されるのは全然痛くもかゆくもないよ。でも脚は痛いんだよ。だからあまり仕掛けられなかったんだ。僕はパワー系じゃないから、力技で引き離すのは難しいからね。」~キンターナ
「モビスターとして総合優勝したいね。僅差の勝負、総合上位のうちだれが勝ってもおかしくないね。うちのチームではどっちがリーダーかは決まっていないよ。僕がたまたま順位では上だけど、まだだれがどこでバッドデイを迎えるかわからないからね。」~バルベルデ
ブエルタ・ア・エスパーニャ第15ステージ
1位 ティボー・ピノー(グルーパマFDJ) 5h01’49”
2位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +28”
3位 サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) +30”
4位 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター) +32”
5位 スティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ)
6位 エンリック・マス(クイックステップ・フロアーズ) +34”
7位 ナイロ・キンターナ(モビスター)
8位 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーションファースト・ドラパック) +1’25”
9位 エマニュエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグロエ) +1’33”
10位 ヨン・イザギーレ(バーレーン・メリダ) +1’49”
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) 64h13’33”
2位 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター) +26”
3位 ナイロ・キンターナ(モビスター) +33”
4位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +43”
5位 スティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ) +1’29”
6位 エンリック・マス(クイックステップ・フロアーズ) +1’55”
7位 ティボー・ピノー(グルーパマFDJ) +2’10”
8位 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーションファースト・ドラパック) +2’27”
9位 ヨン・イザギーレ(バーレーン・メリダ) +3’03”
10位 エマニュエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグロエ) +3’15”
H.Moulinette