ブエルタ・ア・エスパーニャ第9ステージ:キングがキング・オブ・ヒルに!逃げから飛び出し粘りの走りで今大会2勝目!総合勢大シャッフル!1秒差でサイモン・イェーツがマイヨ・ロホ獲得!
休息日前のこのステージは間違いなく荒れた展開になるだろうと想定された。山岳賞狙い、ステージ優勝狙い、総合狙いの様々な思惑が渦巻くなか、ステージ優勝は逃げ集団に委ねられた。そしてその中から飛び出したベン・キング(ディメンション・データ)が最後まで踏ん張り切り独走、苦しい表情を見せながらも最後までペースが落ちずに今大会2勝目を挙げた。そして総合争いも激化、完全にサバイバル状態となりばらばらの状態で次々とゴールする結末となった。その結果サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)がアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)を1秒差抑えて総合リーダーに躍り出た。
第4ステージでも勝利を挙げたキングはこのステージでも11人の逃げに加わると、そこから飛び出して独走態勢へと持ち込む。バウク・モレンマ(トレック・セガフレド)がそれを単独で追走、優勝争いはこの二人に絞られる。その背後では総合勢の集団がペースアップ、各チームのエースたちによる意地の張り合いと駆け引きが始まる。
モレンマはキングとの差をどんどんと詰めていき、一時は16秒差にまで迫り、その背中を眼前に捉える。しかし体を左右に振りながら走るモレンマに対して、キングは上体がぶれることなく淡々と漕ぎ続ける。一度は縮まったその差も残り2kmを切るとまたじわじわと広がり始めると、ゴールではおよそ50秒差にまで広がっていた。キングは圧巻の勝利で今大会2勝目、勝利後のインタビューでチームスポンサーである慈善団体のキュベカの活動に言及するなど、喜びを見せながらも冷静だった。
「ステージ1勝でも夢のようだったけど、今回の勝利で最初の勝利がフロックではなかったと証明できたんじゃないかな。僕自身グランツールの勝利が選手としての目標だったから、それを達成できてとにかくうれしいね。正直言って今日の苦しみは人生最悪レベルのきつさだったよ。今でもまだ意識が若干ぼ~っとしているよ。多分もう少ししたら冷静になってこの勝利を実感するんだろうね。今年何が変わったかだって?結婚したんだよ!嫁が信じて応援してくれるから元気百倍だよ!」キングはプライベートの変化で覚悟が変わったようだ。
モレンマはステージ2位に終わり、不名誉なシルバーコレクターの愛称が再び囁かれ始めた。ステージ3位にはディラン・テウンス(BMC)が入ると、ここから総合上位勢が完全にばらばらの状況で続々とゴールする。ステージ4位には終盤で動いたミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ)、ナイロ・キンターナ(モビスター)、そして昨日パンクで不本意な形でタイムロスをしたウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ)が入った。
さらにはそこからわずかに遅れてリごベルト・ウラン(EFエデュケーションファースト・ドラパック)、ヨン・イザギーレ(バーレーン・メリダ)、S.イェーツがゴールする。さらに遅れてジョージ・ベネット(ロットNLジャンボ)、バルベルデと順にゴールする。
僅差になった総合争いは、S.イェーツがこれで総合リーダージャージのマイヨ・ロホを獲得、僅か1秒遅れでバルベルデとなった。さらには順位はこれで大きくシャッフルされ、総合第10位のベネットまでが僅か48秒の間にひしめく大混戦、、総合1位から5位までがわずか17秒差と、レースはほぼ振出しに戻ったようなものだ。
「これでチームとゆっくりと話し合う必要が出てきたね。これから数日このジャージをどうすべきかを休息日に考えないとね。正直今日ここで総合リーダージャージを獲得する予定はなかったからね。ジロの時の二の舞にならないようにどうしていくかを考えないとね。すべてのレースは異なる環境でもあるし、冷静に考えていくよ。」~S.イェーツ
「最初にブエルタの総合リーダージャージに袖を通してから12年だからね。正直僅か1秒差でそのリーダージャージを着れなかったのは少しむかつくね。でも裏を返せば、リーダージャージを持たないことでプレッシャーを感じることは少ないからね。リーダージャージをを持てばチームが集団をコントロールせざるを得ないからね。」~バルベルデ
「風が強くてアタックをするのが難しかったんだよ。おまけに暑かったしね。だから皆仕掛けることを躊躇したんだと思うよ。ブエルタに勝てる大チャンスだからね。本来はツールを狙いたかったんだけど、結果が出なければ何もしなかったのと一緒になってしまうからね。僕も脚の調子はいいし、狙っていくつもりだよ。」~キンターナ
ブエルタ・ア・エスパーニャ第9ステージ
1位 ベン・キング(ディメンション・データ) 5h30’38”
2位 バウク・モレンマ(トレック・セガフレド) +48”
3位 ディラン・テウンス(BMC) +2’38”
4位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +2’40”
5位 ナイロ・キンターナ(モビスター)
6位 ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ)
7位 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーションファースト・ドラパック) +2’43”
8位 ヨン・イザギーレ(バーレーン・メリダ) +2’46”
9位 サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) +2’49
10位 ジョージ・ベネット(ロットNLジャンボ) +3’02”
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) 36h54’52”
2位 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター) +01”
3位 ナイロ・キンターナ(モビスター) +14”
4位 エマニュエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグロエ) +16”
5位 ヨン・イザギーレ(バーレーン・メリダ)(AG2R) +17”
6位 トニー・ギャロパン(AG2R) +24”
7位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +27”
8位 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーションファースト・ドラパック) +32”
9位 スティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ) +43”
10位 ジョージ・ベネット(ロットNLジャンボ) +48”
H.Moulinette