総合勢にとっては、昨日のステージでヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)やイルヌール・ザッカリン(カチューシャ・アルペシン)といった総合優勝候補勢が脱落したことで、ことさらに慎重に展開を進めるステージとなった。その為総合リーダージャージをエースのミカル・クウィアトコウスキーが保有するチームスカイは無理な追走をすることなくメイン集団をコントロール、結果的に逃げを容認する形となりサイモン・クラーク(EFエデュケーションファースト・ドラパック)がステージ優勝を、そしてステージ6位に入ったルディー・モラード(グルーパマFDJ)が全く予想外の形で総合リーダーの証、マイヨ・ロホを獲得する形となった。
残り6km、逃げ切りが容認される中で先頭にはクラーク、アレッサンドロ・デ・マルキ(BMC)、バウク・モレンマ(トレック・セガフレド)の3人が展開する。この3人は第2追走にも1分以上の差をつけていたが、ここから何度となく仕掛けるタイミングを巡っての心理攻防戦が始まる。すると第2集団との差はみるみると縮まっていくが、メイン集団は積極的な追走をしないためにその差は縮まってこない。
残り1km、決定打がないままにゴール勝負へと向かう中、3人はお互いをけん制しながら、20秒ほどにまで迫ってきた追走集団を目視で確認しながら、いよいよゴールスプリント勝負へと動く。しかしそうなればスプリント力に自信のあるクラークが有利、直接対決を制したクラークがステージを制し、最後まで勝利がなかったワールドツアーチームがようやく今シーズン初勝利を挙げた。
「ただただ驚いているよ。前回勝利してから長ったわ。ようやく勝利が一つ増やせたよ。今日だって最後まで勝てるかどうかなんて確信はなかったんだ。今日みたいに逃げのメンバーが多い時は、協調性が保てないことが多くて疲弊するだけのケースが多いからね。でもそこから勝利への動きが発生した時に、”動くなら今”って体が動いたんだよ。その動きが勝利に繋がることを祈っていたよ。デ・マルキもモレンマもスプリント力がないわけではないし、強いのはわかっていたけど、今日は勝てるという確信がどこかにあったんだよ。」クラークは安堵の表情を見せた。
そして同じ逃げに乗りながらも、後れを取り第2追走集団となっていた3人のなかにいたモラードは、先頭から遅れる事僅か8秒でゴール、そして追走のメイン集団とのタイム差が大きく開いたままで最後まで推移したことにより総合リーダーに躍り出た。そしてなんとそのまま夜には2年間の契約更新を発表、チームにとってもモラードにとってもこれ以上ない一日となった。
「今日は本当は逃げに乗らないで様子を見る予定だったんだよ。でも逃げが発生した時に、なんとなく直感的に”え~い、逃げに乗っちまえ!”って感じで乗ってしまったんだよ。」モラードは満面の笑みでこの日の戦略を無視、直感に従って動いたことを語った。
「総合リーダージャージをグランツールで着用できるなんて感無量だよ!こんなことはめったにないことだからね!この機会を目いっぱい楽しみたいね。リーダージャージを意識したのは本当にステージ終盤だよ。どちらかと言うとステージ優勝ばかり意識していたから、あまり頭になかったんだよ。」~モラード
「正直ジャージを失うのは複雑な気持ちだよ。まあでもそれが戦略であれば仕方がないし、負けて失ったわけじゃないからね。1か月の長丁場、無理をしてジャージを守り続ければチームの負担が大きいからね。今は総合狙いだけど、そこが難しくなればステージ狙いに切り替えるよ。さらにその先には世界選手権もあるからね。」~クウィアトコウスキー
ブエルタ・ア・エスパーニャ第5ステージ
1位 サイモン・クラーク(EFエデュケーションファースト・ドラパック) 4h36’07”
2位 バウク・モレンマ(トレック・セガフレド)
3位 アレッサンドロ・デ・マルキ(BMC)
4位 ダビデ・ビレッラ(アスタナ) +08”
5位 フロリス・デ・ティエ(ロットNLジャンボ)
6位 ルディー・モラード(グルーパマFDJ)
7位 マクシム・モンフォール(ロット・ソウダル) +1’58”
8位 ヨナタン・マルチネス(カハルーラル・セグロスRGA) +2’00”
9位 フランコ・ペリッツォッティ(バーレーン・メリダ)
10位 マラウィ・クドゥス(ディメンション・データ)
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 ルディー・モラード(グルーパマFDJ) 18h27’20”
2位 ミカル・クワイトコウスキー(チームスカイ) +1’01”
3位 エマニュエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグロエ) +1’08”
4位 サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) +1’11”
5位 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター) +1’13”
6位 ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ) +1’26”
7位 ヨン・イザギーレ(バーレーン・メリダ) +1’31”
8位 トニー・ギャロパン(AG2R) +1’34”
9位 ナイロ・キンターナ(モビスター)
10位 スティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ) +1’38”
H.Moulinette