ツール・ド・フランス総括~山岳・ポイント賞・新人賞:予定外の山岳賞獲得のアラフィリップ、怪我をしてもこらえて6度目のポイント賞ジャージ獲得のサガン、アシストしながら新人賞のラトゥール
水玉模様と言えば自転車好きならだれもがすぐに思い浮かべるツール・ド・フランス山岳賞ジャージ、総合優勝のマイヨ・ジョーヌと並ぶ誰もが欲しがるジャージの一つだ。そして今年そのジャージを獲得したのが、ジュリアン・アラフィリップ(エティックス・クイックステップ)だ。山岳賞と言えばピュアクライマーや総合系の獲得が多かったのだが、アラフィリップはどちらかと言えば1週間ほどのステージレースやクラシックを得意とする選手であり、パンチャー的な選手でありピュアクライマーではない。今大会でもエティックス・クイックステップはあくまでもステージ優勝をを狙いに今大会へ乗り込んできただけに、この獲得は予想外の収穫だったと言えるだろう。
チームとしてフェルナンド・ガヴィリア(エティックス・クイックステップ)がステージ勝利を量産するには至らずリタイアとなったことで、早々と逃げによるステージ勝利に切り替えた。その中でアラフィリップがそれに”ドはまり”したのだ。ジャージを獲得してからは後は連日逃げに乗り山岳ポイントを荒稼ぎ、今年のコース設定が難しかったこともありこれと言ったライバルが現れなかったことも幸いした。もうそうなればジャージを獲得したものだけが体験できる”マジック”で、100%以上の実力を発揮し、ステージ2勝、結局終わってみればチームで予定通りともいえるステージ4勝を挙げ、さらには山岳賞まで獲得したのだから、チームにとってもアラフィリップにとっても大成功と言える大会となった。
「正直自分の人生の中で、山岳賞ジャージを着てシャンゼリゼを走るというのは全く予定にすらなかったよ。これはこのチームで無かったら成し遂げられなかったね。」アラフィリップは個性派集団の一員として、大きなサプライズをやってのけた。
そしてポイント賞争いは実質的に早々と決着してしまった。今大会で6度目のジャージ獲得を狙った世界チャンピオンのピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)は、予定通りステージ前半戦で勝利とジャージを獲得すると、そのまま中盤山岳ステージへと突入する。するとここでサガンを追っていたポイント賞争い上位の選手たちがことごとく崩れてリタイア、まったく敵なしの状態となったサガンはそのままゴールまで走り切ればいいだけになっていた。しかし最後まで分からないのがレース、なんと第17位ステージでまさかの落車で宙を舞い、コースオフ、かなりの怪我を負ってしまう。しかし競い合わずとも完走さえすればジャージが確定するだけに、無理をしてでも完走を目指す決断をする。
第19ステージの最難関ステージではサガンにとってはただひたすら耐えしのぐだけの時間となった。タイムオーバーでの失格を避けるべく奮闘、総合上位勢がハイペースで勝負する展開にひやひやしながらも、何とか最後まで我慢を続け、時間内にゴール、ようやく安堵の表情を見せた。
「このグリーンジャージは過去のどの勝利よりも価値があるよ。本当にきつかった、特に落車後はただひたすら痛みに耐えていなければならなかったからね。」最多タイ記録となる6度目のポイント賞ジャージを獲得したサガンはその獲得を噛みしめた。
新人賞争いは正直誰が獲得するのかが読めない大会だった。しかしピエール・ラトゥール(AG2R)が、チームのエース、ロメイン・バルデ(AG2R)のアシストをしながらも粘りの走りを続け、時には積極的に総合勢に対して仕掛けて見せるなど果敢な走りを見せた。フランスにとっては遠い総合優勝の壁、それだけに若手総合系選手の台頭は嬉しいところだ。
H.Moulinette