ツール・ド・フランス第19ステージ:ログリッチ快走!オービスク峠からのライバルを下りで置き去りにしステージ勝利で総合3位へジャンプアップ!サガンはタイムオーバーぎりぎりでゴール


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佳境に入ったツール・ド・フランス、最後の山岳ステージは一つでも上の順位を目指すもの通しの激しい駆け引きとバトルの応酬となった。そしてそんなノーガードの打ち合いを制したのはプリモズ・ログリッチ(ロットNLジャンボ)、元ジャンプ金メダリストから転職してきた男が、グランツールでの適応力を見せるだけにとどまらず、最強のグランツールライダー優勝のみならず、これでボーナスタイムを獲得しクリス・フルーム(チームスカイ)を逆転して総合3位へとジャンプアップを果たした。チームメイトのスティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ)との連携も機能し、チームスカイ崩し、の一つの形を示して見せた。相手に上りでも下りでも攻め続けることができるスタミナと切れ味を見せつけた。
今大会最後の山岳ステージ、しかし上りゴールではなく下りゴールであることが各選手たちの戦略に大きく影響を与えた。攻め手側よりも守り手側にとって防御態勢が取りやすいだけに、いかに早い段階で攻め手相手を脱落させるかが、一つポイントとなるステージだった。

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146名でスタートしたこのステージは、アスピン峠、トゥールマレー峠、オービスク峠と名だたるツールの名所を超えていくアイコニックなステージとなった。この日は波状的に逃げが発生、後から発生した逃げが順番に前の逃げに合流し、その数が膨れ上がっていく。山岳賞ジャージのジュリアン・アラフィリップ(エティックス・クイックステップ)の姿はもちろんそこにあり、この日も着実にアスピン峠とトゥールマレー峠をトップ通過し、あとは今大会を完走さえすれば山岳賞が確定となるところまできた。

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しかしレースは中盤となり、総合勢を巡る動きが活発化する。トゥールマレー峠で追走するメイン集団から飛び出したミケル・ランダ(モビスター)に対し、チームメイトのアンドレイ・アマドール(モビスター)は逃げグループから番手を落とし合流、ランダを一気に先頭集団まで牽引する役目に徹する。このグループには今大会積極性を見せ続けているロメイン・バルデ(AG2R)、ラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ)、イルヌール・ザッカリン(カチューシャ・アルペシン)、さらにはヤコブ・フグルサング(アスタナ)といった強力なメンバーが顔を揃えた。しかしフグルサングは脱落、さらには先頭集団から脱落してきたアダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)も一時合流するなど、大会前の総合上位候補がずらりと顔を揃える豪華な顔ぶれとなる。しかし結局Aイェーツは頂上を前に脱落、この追走グループはアラフィリップら先頭集団まで30秒弱のタイム差で頂上を超えていく。

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その下りで二つのグループは合流、後続のメイン集団との差は3分半という危険視域にまで達する。そしていよいよ最後の上りへ突入していく。チームスカイはペースを維持していたがここへ来て攻撃的な姿勢を見せたロットNLジャンボが動く。ロベルト・ヘーシンク(ロットNLジャンボ)を追走に送り込み、一気に先頭グループとの差を縮めにかかったのだ。チームスカイもすでにアシストを減らしており、この動きはマイヨ・ジョーヌのゲラント・トーマスと総合3位のクリス・フルームのポジションを守るうえではプラスに働くこととなるかに思われた。しかしロットNLジャンボはその攻撃の手を緩めなかった。今度は総合6位のクライズワイクがアタックをしさらに揺さぶりをかける。この時点でこの総合勢を要する集団は僅か11人にまで絞られてしまう。

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先行する逃げもランダら4人まで減る中、クライズワイクの動きを追うようにまずは総合2位のトム・デュムラン(チームサンウェブ)が動く、しかしこれは総合4位のログリッチにマークされてしまう。しかしデュムランがもう一度アタックを仕掛けると、チームスカイはついにアシスト勢を失ってしまう。それでもGトーマスはキッチリと対応、しかしフルームはここで苦悶の表情を見せる。さらに動きは続き、今度はダニエル・マーティン(チームUAEエミレーツ)がこの日も元気に攻撃を仕掛ける。これにログリッチが反応、だがこの動きはついにフルームを脱落させてしまう。何とかアシストのイーガン・ベルナル(チームスカイ)が合流し、フルームは遅れながらも我慢の走りを続ける。
残り25km、ついに後続の追走が、ランダら4人を視界にとらえる。一度は遅れたフルームもオービスク頂上前の僅かな下りセクションを使い何とかログリッチやデュムランに合流を果たす。しかしオービスク頂上までの区間で、再びログリッチが動く。あっという間に先行していたランダとバルデに合流、さらに加速をする。デュムランもここで離されるわけにはいかぬと追走、それにGトーマスがぴったりとついていく。上りでの積極的な動きを続けたログリッチだったが、頂上前に決定的な差をつけることはできず、集団は総合上位勢一塊となってゴールまでの下りへと突入していく。

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誰もが下りでは落車の恐怖がある中、先頭を走るログリッチはここでも驚異的なペースと攻めの姿勢を見せ続ける。デュムランが懸命の追走を見せるも、ログリッチは後続を突き放す快心のダウンヒルを見せ一気に独走モードへと突入、そのままゴールラインまでペースを落とすことなく駆け抜け、ステージ勝利を手にした。またそれと同時にボーナスタイムを獲得したことで一気にフルームを逆転し総合でも3位までジャンプアップ、総合2位のデュムランまで19秒とせまり、一気に総合2位まで射程圏内に捉えた。

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「嬉しいね~!でもクレイジーだろ。最高の気分だよ。今日は何度も仕掛けたけど、最後の下りでようやく抜け出せたよ。脚はよく回っていたからね。ステージ勝利を獲得できたという意味では完璧な一日になったね。明日の個人TTはチーム力ではなく個の能力戦、また新たな気持ちで挑んでベストを尽くしていくよ。」ログリッチには挑戦者としての意気込みが感じられた。

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総合リーダージャージを守り切ったGトーマスは、「きついに一日になるのはわかっていたよ。その予想通り一日中バトルが続いたからね。でも何とか乗り越えられてほっとしているよ。最後の下りはかなり飛ばしたからね。何とかトラブルなく無事走り切れてほっとしたよ。」と語り、総合リーダージャージを守ることの大変さというものを改めて痛感したようだ。「僕はデュムランだけをマークしていればよかったからね。デュムランは間違いなくログリッチをマークするだろうと予測していたからね。しかしログリッチは強かったね。今日が山岳最後の日でほっとしたよ。」

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総合で2位をキープしているデュムランにはいつものゴール後の笑顔はなかった。「ログリッチは下りでかっ飛んでいったね。彼は速かったけど、僕が彼に後れを取ったのは、彼が速すぎてモトバイクのスリップストリームに入ったからだよ。あれじゃ僕がどんなに漕いでも追いつけないよ。僕が直線で遅れるなんてありえないからね。」と不満げな表情を見せた。
この日の犠牲となったのはナイロ・キンターナ(モビスター)、総合トップ10では唯一のバッドデイで一気に順位を下げた。これで残すは個人TTでの勝負、果たして誰が総合トップ10、そして総合トップ3、そして総合優勝の座を射止めるのだろう。大混戦の可能性がまだまだあるだけに目が離せない。

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またグリーンジャージを守り続けているピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)は、顔をゆがめながらもタイムアウト前に何とかステージゴール、これでこちらもジャージを確定的とした。
ツール・ド・フランス第19ステージ
1位 プリモズ・ログリッチ(ロットNLジャンボ) 5h28’17”
2位 ゲラント・トーマス(チームスカイ) +19”
3位 ロメイン・バルデ(AG2R)
4位 ダニエル・マーティン(UAEチームエミレーツ)
5位 ラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ)
6位 トム・デュムラン(チームサンウェブ)
7位 ミケル・ランダ(モビスター)
8位 クリス・フルーム(チームスカイ)
9位 スティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ) +31”
10位 イルヌール・ザッカリン(カチューシャ・アルペシン)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 ゲラント・トーマス(チームスカイ) 79h49’31”
2位 トム・デュムラン(チームサンウェブ) +2’05”
3位 プリモズ・ログリッチ(ロットNLジャンボ) +2’24”
4位 クリス・フルーム(チームスカイ) +2’37”
5位 スティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ) +4’37”
6位 ミケル・ランダ(モビスター) +4’40”
7位 ロメイン・バルデ(AG2R) +5’15”
8位 ダニエル・マーティン(UAEチームエミレーツ) +6’39”
9位 ナイロ・キンターナ(モビスター) +10’26”
10位 イルヌール・ザッカリン(カチューシャ・アルペシン) +11’49”
H.Moulinette