ツール・ド・フランス第17ステージ:僅か65kmのショートバトル、勝利したのはキンターナ!フルームは終盤で遅れ総合3位転落、総合4位のログリッチにも一気に迫られる!サガンが落車
昨日のハプニングだらけのステージから一夜明け、今度は僅か65kmしかない超ショートステージ、間違いなく総合系のバトルが起きる気配と共に、間違いなくハイペースで進むであろうことが予測できるだけにレースは序盤から緊張感が漂う展開となった。そんなステージで最後に笑ったのは、今大会トリプルエースで挑みながら結果を残せないで苦戦していたモビスターのナイロ・キンターナ(モビスター)、ようやくらしい走りを見せ山岳での強さを披露、独走で勝利し総合でも5位まで順位を上げた。このステージでは昨日のジルベールに続きポイント賞ジャージの世界チャンピオン、ピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)がコーナーを曲がり切れずにコース外へと吹き飛んでしまう派手な落車をしてしまう。ジルベールはその後骨折が判明しリタイアとなったが、サガンはこのまま最後まで大会を完走すると宣言している。
アップダウンしかない過激なコース設定だが、仕掛けるのであれば積極的に行くしかないというコース設定、スタート直後からレースは動く。山岳賞ジャージをキープし続けるジュリアン・アラフィリップ(エティックス・クイックステップ)を筆頭に、まずは22名が飛び出していく。タネル・カンゲルト(アスタナ)とニコラス・エデ(コフィディス・ソルーションクレジッツ)が先行し、20名の追走、そして総合勢はそのさらに後ろとなる。20名の中にはアダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)やアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)らも混じるなど、危険な匂いのする攻撃となる。
先行したカンゲルトとエデだったが、まずエデが脱落、そしてこの日最初の頂上を超えると下りでアラフィリップとクリスチャン・デュラセック(UAEチームエミレーツ)がカンゲルトを捉える。その背後では総合勢が駆け引きを繰り広げる。しかしチームスカイが睨みを利かせそう簡単には攻撃を成就させない。
気が付けば先行するカンゲルトらを追走するメンバーはバルベルデやラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ)ら4名まで激減、勝負はさらにペースを上げていく。しかし先頭の勢いは二つ目の頂上を超えても衰えない。アラフィリップはまたしても頂上からの下りでかっとびダウンヒルを披露、デュラセックを置き去りにしカンゲルトとの直接対決へと持ち込む。
そしてこの日最後の上り、残り16kmで山頂ゴールのコル・デュ・ポーテに突入すると、アラフィリップが脱落しカンゲルトが一人旅となる。その背後ではバルベルデがペースを上げ、こちらも人数が絞られていく。そしてその更に背後の総合勢はおよそ2分半の差で上りへと突入、すぐさま動きが発生する。
まずはダニエル・マーティン(UAEチームエミレーツ)とキンターナが飛び出していく。これでモビスターは先行するバルベルデ、さらには逃げ集団追走にマルク・ソレル(モビスター)もおり、戦略的に優位に立つ。しかしチームスカイは冷静沈着に淡々と走り続ける。目下のライバルはトム・デュムラン(チームサンウェブ)であり、そこへ絞った体制で動き続ける。
さらには残り13.5km、総合4位のプリモズ・ログリッチ(ロットNLジャンボ)がアタックを仕掛ける。これにはさすがにクリス・フルーム(チームスカイ)が対応、代わりに集団はデュムランが先頭となり、それをマイヨ・ジョーヌのゲラント・トーマス(チームスカイ)がマークする形となる。この集団に残されているのはロメイン・バルデ(AG2R)、ミケル・ランダ(モビスター)、スティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ)らという少数のみとなる。そしてデュムランのペースアップでログリッチとフルームは再び吸収されてしまう。
その先ではキンターナとDマーティンが好調な走りで次々と先行する選手たちをパス、残り8.5kmではついにキンターナが先頭に躍り出る。マイカが踏ん張りを見せるが、結局は脱落し、先頭キンターナ、それに遅れてDマーティンと言う形になる。バルベルデら中間にいた面々は順番に総合勢に置き去りにされ、この日の役目を終えていく。
そして総合系メイン集団は残り5kmで今度はクライズワイクが仕掛ける。しかしこれはチームスカイの次世代エース候補、イーガン・ベルナル(チームスカイ)が潰しにかかる。しかしチームスカイにはもう攻めの手は残されていなかった。今度はログリッチが残り3kmで再びアタック、これにベルナルは即座に反応するも、エースのフルームが脱落したのを確認し自らペースを落とす。
これで勢いづいたのはデュムラン、何とか残るGトーマスを脱落させるべく攻めに出るが、苦しいのはデュムランも同じ、攻め手を欠いた攻撃となる。するとログリッチがここへ来てさらに攻撃を加速させる。自らの逆転表彰台も視野に入るだけに苦しい中でも積極性を見せ続けた。しかしマイヨ・ジョーヌを着用するGトーマスは揺るぐことなくデュムランとログリッチの攻撃を持ちこたえると、今度はゴール直前で加速、キンターナ、Dマーティンに次ぐステージ3位を獲得し、デュムランとログリッチを突き放すことに成功した。
しかし本来チームのプランAであったはずのフルームは失速、ここへ来て痛いタイムロスを喫し、デュムランらに50秒近い後れを取ってしまった。これでデュムランがフルームをかわして総合2位、ログリッチはフルームに一気に迫り、僅差で総合4位となっている。
「きつかったね、でもこの日のために準備していたんだよ。すべてが予定通りだったよ、バルベルデとソレルが前にいて、集団にプレッシャーをかけ、さらには僕が追走のアタックで合流して揺さぶりをかける、このステージはクライマーの資質が試されるステージだったんだよ。大会序盤は調子がよくなくてタイムを失ったけど、こうやって今結果が残せていることが重要なんだよ。僕はそもそもがスロースターターではあるからね。」キンターナはステージ勝利を手にし、さらには総合でも順位を上げ表彰台を射程圏内に捉えた。
「まだ総合優勝のことは考えていないよ。毎日のステージをこなすだけだし、フルームだってまだ3位だろ。注意すべきはデュムランとログリッチ、違うチームの二人を敵に回すことで防御が増えるね。それとフルームはライバルではなくチームメイトだよ。」~Gトーマス
「僕は信心深いからね、夢と希望は最後まで捨てないんだけど、ここ2週間で、間違いなくGトーマスが一番強いのははっきりしたし、今現在の走りでは彼を突き放すことができないというのが現実だよ。ただ僕はあきらめてはいないよ。僕だって優勝するためにここへ来ているんだよ。」~デュムラン
「僕は誰かの背中を追うのが好きじゃないんだ。タイムを稼ぎ出したいし、さらに高みへも上りたいんだよ。だから集中をして挑戦を続けるし、攻め続けるんだよ。日々これ精進が向上への近道だろ。」~ログリッチ
「後悔はないよ。Gトーマスが本当にいい走りをしてくれてるよね。僕の直感では彼はあれをパリまで着ていくと思うよ。そういう時もあるのがプロの世界だし、僕は今のパフォーマンスにも順位にも納得はしているよ。今日はただ脚がなかったんだよ。ここまでグランツール4戦連続だからね、さすがにきついんだよ。今できる事をして、Gトーマスをサポートできたらいいね。」~フルーム
ツール・ド・フランス第17ステージ
1位 ナイロ・キンターナ(モビスター) 2h21’27”
2位 ダニエル・マーティン(UAEチームエミレーツ) +28”
3位 ゲラント・トーマス(チームスカイ) +47”
4位 プリモズ・ログリッチ(ロットNLジャンボ) +52”
5位 トム・デュムラン(チームサンウェブ)
6位 スティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ) +1’05”
7位 イーガン・ベルナル(チームスカイ) +1’33”
8位 クリス・フルーム(チームスカイ) +1’35”
9位 ミケル・ランダ(モビスター)
10位 イルヌール・ザッカリン(カチューシャ・アルペシン) +2’01”
ツール・ド・フランス総合順位
1位 ゲラント・トーマス(チームスカイ) 70h34’11”
2位 トム・デュムラン(チームサンウェブ) +1’59”
3位 クリス・フルーム(チームスカイ) +2’31”
4位 プリモズ・ログリッチ(ロットNLジャンボ) +2’47”
5位 ナイロ・キンターナ(モビスター) +3’30”
6位 スティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ) +4’19”
7位 ミケル・ランダ(モビスター) +4’34”
8位 ロメイン・バルデ(AG2R) +5’13”
9位 ダニエル・マーティン(UAEチームエミレーツ) +6’33”
10位 ヤコブ・フグルサング(アスタナ) +9’31”
H.Moulinette