ツール・ド・フランス第16ステージ:ジルベールが崖下に転落リタイアも、チームメイトのアラフィリップがその雪辱のステージ2勝目!農家のプロテストでレースが中断のハプニングも
休息日明けの第16ステージ、ピレネー山脈ファーストラウンドは様々なことが起きる波乱のステージとなった。まずはスタートから30kmでまさかの農家の人々による抗議活動がコースをふさぐハプニング、警察が鎮圧にペッパースプレーを使ったために一部選手たちは目の痛みを訴え治療を受ける羽目となった。無事に藁のバリケードを超えて再開されたレースは、逃げのためのステージとなった。そしてそんなステージを制したのは山岳賞ジャージを着用するジュリアン・アラフィリップ(クイックステップ・フロアーズ)、アシストのフィリップ・ジルベール(エティックス・クイックステップ)が崖下へと落車しリタイアとなるハプニングを乗り越え、今大会2勝目を挙げて見せた。
フランスでは労働組合や生産者により多くのデモやプロテストなどの抗議活動が行われるが、今年のツール・ド・フランスはその格好のターゲットとなってしまった。第16ステージ、200km以上の長丁場のステージで僅かスタートから30km、選手たちの進路を阻んだのは藁のバリケードだった。完全に道路をふさいでいたわけではなく、進路を狭めた形となったが、警察隊が道路わきに陣取ろ農家の人々らに催涙ガス(ペッパースプレー)を使用して鎮圧を試みたために、選手たちがそのとばっちりを食らうこととなった。選手たちは目の痛みを訴え治療のためにレースは一時中断となる。総合トップ2のゲラント・トーマスとクリス・フルームのチームスカイコンビもその巻き添えとなった。
そしてレースが再開されると、このトラブルの影響もあったか、逃げが容認される雰囲気を感じた選手たちが猛然とアタック合戦を始める。スタートから70km、逃げに総合上位を狙うアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)が逃げに紛れ込んだためにチームスカイが猛然と潰しにかかった。そして最終的に逃げな容認されたのはレース中盤となった105kmを超えてからだった。なんと40人以上の大所帯が逃げを許され、その中には総合争いから脱落したアダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)なども含まれていた。
このステージでもエティックス・クイックステップはアラフィリップとジルベールが逃げに乗り、それぞれがクラシックで優勝経験のあるこのタッグはその強さと駆け引きの巧みさを存分に発揮する。誰もがアラフィリップのアシストのためにジルベールが逃げに乗ったと思っている中、躊躇なくジルベールは逃げグループから飛び出し、あっという間に1分以上の差を広げていく。ステージ優勝を狙い今大会でも積極的な動きを見せているベテランの動きは、切れ味鋭かった。
しかしその切れ味が思わぬハプニングを呼ぶ。高速の下りでバランスを崩したジルベールは、減速はしたもののかなりの速度で道路わきの石垣に突っ込み、そのまま宙を舞って崖下に消えていったのだ。1995年にはこの同じ下りで同じように崖下に落ちた選手が亡くなったこともあり、一瞬にして現場の空気は凍り付いた。しかしジルベールは何とか難を逃れ、安堵の空気が場を包んだ。それでもジルベールはその後なんとレースに復帰しゴールを果たしたが、ステージ終了後にリタイアとなった。
逃げ集団ではステージ勝利を目指す駆け引きが開始される。ロベルト・ヘーシンク(ロットNLジャンボ)、ダミアーノ・カルーソ(BMC)らが動き、さらにそこにアラフィリップ、Aイェーツ、バウク・モレンマ(トレック・セガフレド)が合流を果たす。しかしこの動きも一度吸収され、再び17人と言う大所帯となる。
総合のチャンスを失った、Aイェーツはステージ優勝を目指しここでも積極的な動きを見せる。そして最後の頂上をトップで超えていくが、山岳賞ジャージ以上の物を求める男がそのイェーツを狙っていた。下りの技術が高いアラフィリップを前にミスなく下りたかったAイェーツだったが、焦りからか落車、するとその間にアラフィリップは難なくトップに躍り出る。もうこうなれば誰もアラフィリップに追いつくことはできず、圧倒的な存在感で今大会2勝目をガッツポーズで決めた。
「今日のステージはクレイジーだったよ。多くの選手が苦しんだと思うよ。まさか自分もステージ2勝目があげられるとは思ってもいなかったよ。ここはよく知ったコースだったから、だから積極的に動けたのが勝因だね。今日の勝利は忘れがたいものになったよ。山岳賞ジャージを着用して勝利できたなんて最高だよ。最後までこのジャージを守っていきたいね。」アラフィリップは勝利を喜んだ。
総合勢はこの日は動かず、明日のステージへ向けて選手たちは力を蓄えるステージとなった。
「突然目と肺に激痛を感じたんだよ。」~シルヴァン・ディリエ(AG2R)
「人生に新しい経験は大歓迎なんだけど、まさかレース中にペッパースプレーとはね・・・」~ダニエル・マーティン(UAEチームエミレーツ)
「リスクは勝利にはつきものなんだよ。でも結局そのリスクに飲み込まれたら負けるんだよ。」~Aイェーツ
ツール・ド・フランス第16ステージ
1位 ジュリアン・アラフィリップ(クイックステップ・フロアーズ) 5h13’22”
2位 ゴルカ・イザギーレ(バーレーン・メリダ) +15”
3位 アダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)
4位 バウク・モレンマ(トレック・セガフレド)
5位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(バーレーン・メリダ) +18”
6位 ロベルト・ヘーシンク(ロットNLジャンボ) +37”
7位 ミカエル・ヴァルグレン(アスタナ) +56”
8位 グレゴール・ミューレンベルガー(ボーラ・ハンスグロエ)
9位 マルク・ソレル(モビスター) +1’01”
10位 ピエール・ラトゥール(AG2R) +1’18”
ツール・ド・フランス総合順位
1位 ゲラント・トーマス(チームスカイ) 68h12’01”
2位 クリス・フルーム(チームスカイ) +1’39”
3位 トム・デュムラン(チームサンウェブ) +1’50”
4位 プリモズ・ログリッチ(ロットNLジャンボ) +2’38”
5位 ロメイン・バルデ(AG2R) +3’21”
6位 ミケル・ランダ(モビスター) +3’42”
7位 スティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ) +3’57”
8位 ナイロ・キンターナ(モビスター) +4’23”
9位 ヤコブ・フグルサング(アスタナ) +6’14”
10位 ダニエル・マーティン(UAEチームエミレーツ) +6’54”
H.Moulinette