ツール・ド・フランス第9ステージ:デゲンコルブが復活の勝利に男泣き!総合勢に波乱続出!落車頻発で大荒れの石畳バトル、総合勢は生き残りに必死!ポートリタイア、ウラン脱落など
「ステージ勝利よりも、ただひたすらに無事ゴールできることを願った。」選手たちが総口々に語った石畳バトルはあまりにも壮絶なサバイバルバトルとなった。総合勢に波乱続出、リッチー・ポート(BMC)はリタイア、さらには多くの総合勢が落車やメカトラの餌食になり、目標が「ステージ完走」になるような生き残りをかけたバトルとなった。そんなステージはマイヨ・ジョーヌのグレッグ・ヴァン・アーヴェルマート(BMC)、ベルギーチャンピオンのイブ・ランパート(クイックステップ・フロアーズ)、そして復活をかけたジョン・デゲンコルブ(トレック・セガフレド)の巴スプリントになったが、最後に勝利に男泣きをしたのはデゲンコルブだった。
156.6km中21.7kmが石畳と言うタフなステージはパリ~ルーベそのものと言っても過言ではないほどのサバイバルバトルとなった。まずは石畳区間に入るまでの序盤から落車が頻発、まずその犠牲になったのが優勝候補の一角ポートだった。苦痛に顔をゆがめるポートはこの落車で鎖骨を骨折、これで2年連続第9ステージでリタイアとなってしまった。
さらにはロメイン・バルデ(AG2R)は怒涛のようなパンクラッシュに見舞われ、チームメイトのホイールを受け取ったり、またはバイク交換をしたり最大1分以上にまで広がったタイム差を詰めるため、せわしなく追走だけを続ける一日となった。昨日までステージ連勝のディラン・グローネウェーゲン(ロットNLジャンボ)もこの日は運が味方に付かず落車、さらにはチームスカイの次世代エース、イーガン・バーナル、石畳大得意のニキ・テルプストラ(クイックステップ・フロアーズ)などが次から次へと落車する。
さらにはステージ中盤では落車で集団の分断も発生、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)やアダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)らが必死の追走を余儀なくされた。
さらにレースがセクター8の石畳に入ると、今度はチームスカイのダブルエース、クリス・フルームとゲラント・トーマスの二人が折り重なるようにして落車、難は逃れたものの、この後ミカル・クウィアトコウスキー(チームスカイ)も派手に落車してしまう。残り32kmでは、この日順調にノートラブルで来たモビスターにも落車が発生、トリプルエースの一角ミケル・ランダ(モビスター)も落車してしまう。さらには総合上位候補のリゴベルト・ウラン(EFエデュケーション・ファーストドラパック)も途中落車し、大幅にタイムを失いながらの追走となる。
トム・デュムラン(チームサンウェブ)は何度となく加速を試み揺さぶりをかけるが、集団全体の雰囲気として仕掛けてのリスクを取りたくないという重い空気が足かせとなる。ライバルの落車でついたタイム差を広げるための加速がリスキーすぎると二の足を踏む選手とチームが続出、とりあえずはトラブルなくゴールしたいという思いの強さのほうがレースを支配する。
すると残り17km、最後の石畳区間でデゲンコルブ、ヴァン・アーヴェルマート、ランパートの3人がするりと抜け出していく。土煙の中を飛び出した3人に対し、世界チャンピオンのピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)は動くかと思われたが沈黙、そのまま3人はゴールまで逃げ切ってしまった。
3人でのスプリント勝負となれば、馬力の差は歴然、デゲンコルブがジャイアント・サンウェブ時代以来、久しぶりの勝利をツール・ド・フランスと言う大舞台でやってのけた。レース後のインタビューでは大粒の涙を流して号泣、男泣きでその復活の勝利を噛みしめた。
「純粋に嬉しいよ。これでようやく肩の荷が下りたよ。この勝利のためにどれだけ苦悩してきたか。今日はチーム戦略として、とにかくトラブルに巻き込まれないこと、と言うのが一番だったんだよ。それが見事にうまくいったね。とにかくこの勝利までが長かった。この勝利は今年の冬に無くなった親友に捧げるよ。とにかくあの指を失いかけた大事故の後調子が上がらなかったことで、”もう終わった”と囁かれてたけど、僕の中では”まだやれる”っていう確信があったんだよ。これ以上ドラマチックにはならないだろ、本当に最高の勝利だよ!」デゲンコルブは涙ながらに語った。
総合ではこの日何度も落車に見舞われたティージェイ・ヴァン・ガーデレン(BMC)、ウラン、ポートらがトップ10から消え、代わりにフルーム、Aイェーツ、ランダがトップ10入りした。
「ポートの総合のためにチームは動いてきたんだけど残念だよ。でも僕自身は今日もいい走りができてこの第一週には大満足だよ。」~ヴァン・アーヴェルマート
「本当にクレイジーだったよ。特に石畳までの50km、あまりの荒れ模様に怖くて自転車レースが嫌いになりそうだったよ。本当は今日は勝利とライバルへタイム差をつけることを目標としていただけに不満だね。」~デュムラン
「昨日の今日だから、もうゆっくりとのんびり走ることに徹して、攻めないことにしていたんだよ。」~Dマーティン
「このステージが終わってホッとしてるよ。途中こけたけど大きなトラブルなく終われてよかったよ。」~フルーム
「今日の勝因は集中力だね。ランダが落車したけどそれもリカバーできたし、チームとしては勝利に等しいよ。」~キンターナ
「ドリンク飲んでたら溝にはまったんだよ。でも復帰できてよかった、チームのおかげだよ」~ランダ
ツール・ド・フランス第9ステージ
1位 ジョン・デゲンコルブ(トレック・セガフレド) 3h24’26”
2位 グレッグ・ヴァン・アーヴェルマート(BMC)
3位 イブ・ランパート(クイックステップ・フロアーズ)
4位 フィリップ・ジルベール(クイックステップ・フロアーズ) +19”
5位 ピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)
6位 ジャスパー・ストゥーヴェン(トレック・セガフレド)
7位 ボブ・ユンゲルス(クイックステップ・フロアーズ)
8位 アンドレ・グライペル(ロット・ソウダル) +27”
9位 エドヴァルド・ボアッソン・ハーゲン(ディメンション・データ)
10位 ティモシー・デュポン(ワンティ・グループゴベール)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 グレッグ・ヴァン・アーヴェルマート(BMC) 36h07’17”
2位 ゲラント・トーマス(チームスカイ) +43”
3位 フィリップ・ジルベール(クイックステップ・フロアーズ) +44”
4位 ボブ・ユンゲルス(クイックステップ・フロアーズ) +50”
5位 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター) +1’31”
6位 ラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ) +1’32”
7位 ヤコブ・フグルサング(アスタナ) +1’33”
8位 クリス・フルーム(チームスカイ) +1’42”
9位 アダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)
10位 ミケル・ランダ(モビスター)
H.Moulinette