ジロ・デイタリアで見えた総合系新勢力の台頭:ロペスとカラパズの新人賞争いの南米コンビが大躍進、オーストラリアとオランダにも期待の星が!新世代が見せたこれからの可能性

今大会の総合トップ10には、戦前の予想にはなかった名前が名を連ねた。その中でも新世代の台頭を印象付けてくれたのは新人賞争いと表彰台の一角を最後まで争ったミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ)とリチャード・カラパズ(モビスター)だろう。さらには途中でリタイアはしてしまったがベン・オ・コナー(ディメンションデータ)も非凡な才能を発揮、今後が楽しみな存在だ。さらにはトム・デュムラン(チームサンウェブ)のアシストを務めたサム・オーメン(チームサンウェブ)もまだ22歳、総合9位と予想をはるかに超える結果を残した。

©Tim D.Waele/Getty Images
一大勢力となったコロンビア、その一角を担うロペスは、前半で落車でタイムを失ったが、それでも最終的には総合3位、ティボー・ピノー(グルーパマFDJ)の脱落あっての棚ぼたな部分もあるが、間違いなくこれからの時代を担う選手となりそうだ。ロペスはまだ24歳、しかし早くもプロ3年目だ。昨年度のブエルタで本格的にチームのエースとしてその役割を担うと、ステージ2勝を挙げ、さらには新人賞と総合8位と結果を残した。アスタナ自体はエースだったファビオ・アルー(UAEチームエミレーツ)を失い、そのことでスポンサーのご機嫌を損ねチーム存続の危機にさらされていたが、皮肉にもそのアルーは全くいいところなくレースをリタイア、たいして変わりにファーストエースに昇格したロペスが総合表彰台となった。

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もう一人そのロペスと激戦を繰り広げたのがカラパズだ。ロペスと同じく昨年度のブエルタに初出場、36位に終わったが、今回のジロで一気に大躍進、エクアドル人選手としていくつもの”初”を達成して見せた。モビスターは多くのクライマーがチームにいる中で、今大会でもエースと言う立ち位置ではなかったが、結果途中から完全にエースとなり見事にその役割を果たした。ロペスとの激闘は迫力あり、積極的な攻めの走りで大会を沸かせた。

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第18ステージの下りで落車し骨折、残念ながらリタイアとなったが、オーストラリアの新鋭オ・コナーも今後が楽しみな一人だ。まったくのノーマーク、誰も注目さえしていない選手ではあったが、気が付けば総合トップ10争いを繰り広げていた。オーストラリアと言えばカデル・エヴァンスという総合系の絶対的レジェンドがいるが、その後釜を担える総号系は現れてはいなかった。ここへきて思わぬ台頭をし、今後が楽しみな存在となった。

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もう一人誰も躍進を予想すらできなかったのはオーメンだろう。こちらもロペスとカラパズ同様に昨年度のブエルタがグランツールデビューだったが、二人が結果を残したのに対し途中リタイアとなり、結果が残せなかった。今大会でもデュムラン連覇の為のアシストの一人でしかなく、誰も総合での結果など期待はしていなかった。しかしフタを開けてみればアシストをしながらも総合トップ10入りの総合9位、最後はデュムランにアシストされその順位を守り切った。総合系の選手が少ないチームサンウェブにおいて、デュムラン以外にももう一枚カードが増えたのは大きな価値となりそうだ。
この4人の新人賞世代以外にも、総合6位のペッロ・ビルバオ(アスタナ)は28歳、総合7位のパトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグロエ)もまだ26歳と若手が多く活躍した大会だった。しかも内容的にもかなりのハイレベルバトル、間違いなくここで紹介した選手たちはこれからその名を覚えておく価値のある選手だろう。果たしてこれからどのような成長カーブを描くのか。今後が楽しみだ。
H.Moulinette