ジロ・デ・イタリア第19ステージ:なんと山岳で80kmを独走!フルームがまさかの大逃げ敢行でステージ優勝とマリア・ローザ、山岳賞も獲得!”いついくの?今でしょ!”と言い聞かせてアタック!


©Tim D.Waele/Getty Images
第19ステージ、総合優勝目指す最終局面での山岳バトルにはまさかのドラマが待っていた。昨日までの総合リーダー、サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)はここまで快進撃を見せていたものの、このステージでついにその難しさを痛いほど思い知るステージとなった。一気にトップ10からも陥落、今大会のダークホースが消えたそんなステージを制したのは、なんと中盤から単独の大逃げを敢行したクリス・フルーム(チームスカイ)だった。80km以上も山岳のアップダウンを独走し続けた上に、ライバルたちを突き放しステージ優勝を達成するとともに、大逆転で総合トップに躍り出るとともに、山岳賞も逆転で獲得、まさにフルームの為の一日となった。

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残り87kmで今大会最高標高到達地点のチマコッピはイェーツにとっては忘れられない場所になってしまった。チームスカイはフルームの前に4人のアシストが揃い、一気にペースを上げていく。するとイェーツが脱落、チームスカイはさらにペースを上げる。先行するのはルイス・レオン・サンチェス(アスタナ)だったが、それも間もなく吸収、ここまで活躍の機会がなかったチームスカイの最強アシストがこの日遂に炸裂した。チームスカイのペースアップで各チームアシストが削られ、そのままエースがむき出しとなってしまう。

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今大会のチマコッピ、フィネストレ峠への8kmの未舗装路へ突入すると、ケニー・エリソンデ(チームスカイ)が鬼引きでさらにペースを上げる。これで残っていた総合勢も崩壊、総合3位のドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(バーレーン・メリダ)も脱落していく。そしてエリソンデがアシストを終えると、残り80kmでなんとフルームが単独アタックをする。まだこの後下りと3級山岳、さらに下って1級山岳があるにもかかわらず躊躇ない攻めをする。

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頂上まで4kmを切り、追走はトム・デュムラン(チームサンウェブ)、ティボー・ピノ(グルーパマFDJ)、リチャード・カラパズ(モビスター)の3名、少し離れてミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ)という状況となる。さらに遅れてポッツォヴィーヴォらの集団が追う。

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残り72.7km頂上を超えフルームに対して4人が追走するが、下りでもフルームのペースは落ちるどころか、さらに加速していく。デュムランとピノーが積極的に追走をするが、新人賞争いを繰り広げているロペスとカラパズはお互いを意識し、積極的な追走に加担しない。その背後ではポッツォヴィーヴォに加え総合トップ10のペット・ビルバオ(アスタナ)やジョージ・ベネット(ロットNLジャンボ)らが追走を続ける。その下りでトップ10圏内が見えていたベン・オコナー(ディメンション・データ)が激しく落車、リタイアとなってしまう。

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追走のデュムランらにピノーのアシスト、セバスチャン・レイエンバッハ(グルーパマFDJ)が合流するが、一向にペースが上がらない。その間にもフルームとの差はじわじわと広がっていき、ついにはバーチャルでフルームが総合リーダーに踊りでる。
3級山岳もそのまま通過、そして残り10kmゴールの1級山頂の上りへ入ってもフルームのペースは衰えることがなかった。デュムランは追走の疲れか、なかなかペースが上がらず、まったくフルームとの差は縮まらない。ピノーもタイム差で近いアンヘル・ロペスを意識した動きとなり、デュムランにとってはフルーム追走の為には自力で動かざるを得ない状況となる。

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最後まで手を緩めなかったフルームは渾身のガッツポーズでゴール、今大会ここまで苦しい走りが続いていたが、終盤になり調子を上げると、一発で大逆転、これでチームにとって初のジロ制覇、イギリス人にとって初のジロ制覇、そして自身昨年度のツール、ブエルタに続く3連続グランツール制覇が見えてきた。
「あんなに距離を残して、アタックを仕掛け手独走態勢になったのは人生初だよ。でもこれはすべてチームがお膳立てしてくれたからだよ。今日は何とかサイモンを脱落させて、そのあとでデュムランとポッツォヴィーヴォを振り切る予定だったんだ。正直今日は最後の頂上ゴールまで仕掛けるのを待つつもりはなかったんだ。それでは逆転の可能性がないからね。だからあえてフィネストレ峠、チマ・コッピで仕掛けることにしたんだよ。”いついくの?今でしょ!”って自分に言い聞かせながら仕掛けたんだよ。」フルームは喜びを爆発させながら語った。
2位争いは冷静なカラパズが最後の最後で加速、2位獲得と共にボーナスタイムもキッチリゲットした。デュムランはピノー、ロペスに次いでステージ5位、昨日イェーツに28秒差に迫った総合2位は、今度はフルームに40秒差で変わらず総合2位、連覇に向けて黄色信号が灯った。
「今日のぼくの調子も悪くはなかったんだよ。フルームにフィネストレ峠でアタックされてもそんなにタイム差は広がらなかったからね。でもそこからの下りで、レイエンバッハを待つ選択をしたのが失敗だった。僕一人だったらフルームと同じペースで下れたからね。今日は僕はベストだったけど、フルームがスーパーだったんだよ。フルームは悔しさをにじませた。
この日は優勝候補の一角だったファビオ・アルー(UAEチームエミレーツ)もリタイアとなるなど、サバイバルとなった。結局イェーツは38分51秒遅れでゴール、総合でも一気にトップ10圏外へと消え、グランツール総合優勝は残り2日を残し夢と消えた。

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ジロ・デ・イタリア第19ステージ
1位 クリス・フルーム(チームスカイ) 5h12’26”
2位 リチャード・カラパズ(モビスター) +3’00”
3位 ティボー・ピノー(グルーパマFDJ) +3’07”
4位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +3’12”
5位 トム・デュムラン(チームサンウェブ) +3’23”
6位 セバスチャン・レイエンバッハ(グルーパマFDJ) +6’13”
7位 ダビデ・フォルモロ(ボーラ・ハンスグロエ) +8’22”
8位 サム・オーメン(チームサンウェブ) +8’23”
9位 パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグロエ)
10位 ペッロ・ビルバオ(アスタナ)
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 クリス・フルーム(チームスカイ) 80h21’59”
2位 トム・デュムラン(チームサンウェブ) +40”
3位 ティボー・ピノー(グルーパマFDJ) +4’17”
4位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +4’57”
5位 リチャード・カラパズ(モビスター) +5’44”
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(バーレーン・メリダ) +8’03”
7位 ペッロ・ビルバオ(アスタナ) +11’08”
8位 パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグロエ) +12’19”
9位 ジョージ・ベネット(ロットNLジャンボ) +12’35”
10位 サム・オーメン(チームサンウェブ) +14’18”
H.Moulinette