ジロで好調なフルーム、迷走するサルブタモール数値オーバーに関する問題はいったいどうなっている?UCIは主催者RCSにタイトル剥奪はないと確約もUCIにその権限無し

ジロ序盤戦では苦しんだクリス・フルーム(チームスカイ)だったが、大会前から話題になっていたのは昨年度のブエルタでのサルブタモール異常数値の問題による一件が解決していない中での出場をすべきではない、という話題だった。厳しい批判がある中でもフルームは出場を宣言、出場選手の中でも賛否両論ある中でスタートした大会だったが、いったいフルーム問題はどうなっているのかの続報が出ないままに、気になっていた方は多いはずだ。
結論から言えば、出場の自粛を求めたUCIに対して、主催団体のRCSは出場停止でないのであれば出場を歓迎するとしてきた。そしてRCSは判断が下っていない以上、その対応の遅さが問題であり、出場した場合にその後の判断(出場停止など)に関わらず、結果の抹消をしないことをUCIに要求したのだ。そしてUCIもそれを了承したのだが、だがUCIに実質的にその権限はなく、結局調査結果と最終判断が下されれば、結果剥奪という可能性がまだ残るというのが現状だ。

©Tim D.Waele/Getty Images
UCIは頭の痛いところで、現状の調査状況のペースではツール・ド・フランスまでに問題が解決する可能性が少なくなってきたのだ。UCIは結果が出るまではツールへの出場を見送るようにチームスカイとクリス・フルームに対して要求しているが、これに一切に強制力はない。またツール主催者のASOは開催までに決着しなければ、フルームの出場拒否をする構えも見せており、問題は長引きそうな雰囲気を見せている。ランス・アームストロング問題の時もそうだったが、長引けば長引くほど問題はややこしくなるのだ。過去の例ではそのほとんどで遡って記録抹消となっているために、繰り上げ優勝ではなく優勝者不在というケースなどもあり、そういうことが自転車への信頼を失墜させた一因となっている。
今回も異常数値も、問題が発覚しながら公表されたのがあまりにも遅かったことが全てであり、ラパルシャン新会長就任直後とはいえ、早急な対応を取れなかったUCIの姿勢と体質が問題だろう。
果たして今後フルームに対してどのような判断が下されるのかは今の段階ではわからない。無罪放免となる可能性と、出場停止処分の両方の可能性が今でもまだ5分5分の状況なのだ。多くの現役選手に質問を投げかけたところ、帰ってきた回答は、「グレーな選手が乗り続けることはロードレースの信頼回復に繋がらないので、正直な気持ち結果が出るまで自粛して欲しい。」というのが大多数の声だ。「後からタイトル剥奪とかはもう勘弁してほしい、もう何度もそれでロードレースへの信頼が失墜してきたはずだ。」
今回のフルームの活躍は見応え十分だが、まだまだその背後に解決されなければいけない問題があることも事実だ。いち早い解決はフルーム自身も望んでいることであり、選手たちのためにもUCIは同じようなことが起きないための対策と対応を徹底してもらいたい。でなければツール・ド・フランス前にまたこの話題が選手たちと世間を賑わすことになってしまいそうだ。
H.Moulinette