ブエルタ・ア・エスパーニャ第20st:激勾配山頂バトルは力と力のぶつかり合い!ヴィンゲガードが一度のアタックで決着!ピドコックもヒンドリーの加速をしのぎ切り総合3位死守

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今大会最後の山頂ゴールは、ブエルタらしい激勾配が残り3㎞からゴールまで続く、クライマーたちにとっても地獄のようなステージとなった。最大勾配20%の石だらけの未放送路のような悪路での総合争いは拮抗、総合リーダーのヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク)から総合4位のジャイ・ヒンドリー(レッドブル・ボーラハンスグロエ)に加え総合8位のセップ・クス(ヴィズマ・リースアバイク)ががっぷり四つで譲らないハイハイペースを刻む。加減速の駆け引きなど一切なくパワーで踏み続けるスタミナ勝負は途中までは、総合2位のジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)がヴィンゲガードを振り落とすべく牽引したが、途中からは総合3位のトム・ピドコック(Q36.5プロサイクリング)を振り落としたいヒンドリーが加速する展開となる。
そんなパワー勝負だったが残り1.4㎞、ヴィンゲガードが猛然と加速していく。何度も後ろを振りけるが、激勾配では誰もそれに追いつく加速をする力はもう残っていない。ただそれでもタイムロスは総合順位に直結する中で誰もが最後まであきらめない。しかしヴィンゲガードの軽やかなペダリングは最後の最後まで衰えなかった。ここ数ステージ体調が芳しくない中でも何とか折り合いをつけた走りを続けた男はゴールラインで珍しく絶叫、よれながらもガッツポーズを決めて勝利をかみしめた。

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その背後では残り数百メートルでマシュー・リッチテロ(イスラエル・プレミアテック)が追い付く展開となるが、最後はこの日誕生日のクスがステージ2位、チームとして最難関山頂でワン・ツーを決めた。ステージ3位にはヒンドリーが入り、ピドコックは最後まで我慢し続けステージ4位、パワー勝負の山岳で踏ん張り切り総合3位を死守して見せた。アルメイダは最後は力尽きステージ5位、しかしこの日もチームワークからゴールまで攻め続ける姿勢を貫いて見せた。リッチテロは6位、これで総合でも順位を上げ総合5位とした。
最後の山岳ステージ、5つの山岳と4000m以上の獲得標高のハードなステージは、スタート前の落車により少し遅れることとなった。緊張感がピークに達したスタートの号砲と共に、フィリッポ・ガンナとイーガン・ベルナルのイネオス・グレナディアスコンビが飛び出していく。するとそこにジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック)、ミケル・ランダ(T-レックス・クイックステップ)と言った脱落した総合系の選手たちが合流、最難関ステージでの勝利を狙いにかかる。
しかしこの第20ステージもUAEチームエミレーツの攻撃スタイルは明確だった。徹底したハイペースでの展開で、ライバルたちを削っていく、駆け引きなしのパワー勝負をこの日も選択した。今大会何度となく見ている光景は、ヴィンゲガードとの駆け引き勝負では分が悪いので、パワーでアシストを脱落させ疲弊させるというものだった。

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・アユソ、マルク・ソレル、フェリックス・グロスシャルトナー(すべてUAEチームエミレーツ)が順番に牽引、ヴィンゲガードにプレッシャーをかけていく。しかしそれは同時に熾烈な3位争いをしているピドコックとヒンドリー、ジュリオ・ペリッツァーリ(レッドブル・ボーラハンスグロエ)のレッドブル・ボーラハンスグロエコンビのバトルにも影響を及ぼすこととなる。

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そんな中最後の上りのボラ・デル・ムンドの山頂への入り口、残り20㎞で、またしても抗議活動による妨害が発生する。逃げから飛び出したランダ、チッコーネら5人が何とかすり抜けるが、その背後1分に迫ったメイン集団を通過させるために警察とスタッフによる排除作業が行われる。メイン集団はうまく抗議活動を避けて通過することに成功し、レースはそのまま続行となる。
チームカーはその後もしばらくその場所で停止させられる羽目となったが、その後抗議側との折り合いをつけ通過していくこととなった。
そしてこの日最後の山頂バトルを迎える。山頂1㎞のはげ山部分には環境に配慮し一般観衆の立ち入りが禁止されているが、その最後も勾配が17%を超えており、最後の最後まで息つく間もないバトルがここからスタートする。先行しているチッコーネ、ベルナル・ランダらは分裂、ランダが先行、ベルナルとチッコーネが追走、残りは脱落していく。更にベルナルが脱落、ランダとチッコーネは何とかゴールを狙うが、ハイペースのメイン集団は人数を大幅に減らしながらも背後40秒にまで迫っていた。
最後まで牽引をした山岳賞ジャージのジェイ・ヴァイン(UAEチームエミレーツ)が牽引をする頃には、ハイペースの影響でメイン集団から総合5位のペリッツァーリ、総合7位のフェリックス・ガル(デカスロンAG2Rラモンディアル)が脱落していく。特に新人賞ジャージのペリッツァーリは第17ステージで勝利し、総合でも3位のピドコックを狙っていたが、ここへきてハイペースに引きずり回されたことで疲弊し、脱落してしまう。これで新人賞ジャージを争っていたリッチテロにも先行され、最終的にこの日新人賞ジャージを失うこととなった。
先行していたチッコーネとランダもあっさり捉まりパスされると、バトルは一気に過酷さを増し、メイン集団に残るのはアルメイダ、ヴィンゲガード、クス、ヒンドリー、ピドコックだけとなる。それをわずかな差でマイペースでリッチテロが追い、さらに台頭してきたジュニオール・ルセレフ(T-レックス・クイックステップ)、そして今大会で総合リーダージャージも着用した総合9位のトースタイン・トレーエン(バーレーン・ヴィクトリアス)が続く。

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ピドコックは何度となく話されそうになりながらも歯を食いしばって踏ん張る。それを見てヒンドリーはアルメイダの前に出てペースを上げていく。だがそれでも食らいつくピドコック、総合表彰台を巡るバトルが延々と繰り返される中、アルメイダも限界が近づいているのを察したヴィンゲガードが遂に動いた。軽やかに加速するとあっという間に距離を広げていく。だが限界が近かったのはヴィンゲガードも同じく、ここからは背後を確認しながら我慢の走りで距離を保ち、そして歓喜のゴール、今大会3勝目を挙げた。総合上位勢の直接対決は、最後の最後まで駆け引きなしの純粋なパワー勝負、見応えのあるものとなった。

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ヨナス・ヴィンゲガード(ステージ1位、総合1位)
「ブエルタで総合優勝したいと思っていたんだ。もちろん明日もまだあるけど、まずはこの山頂でゴールを制することができて良かったよ。体調がここ2週間すぐれなかったけど、それは声を大にして言う事じゃないからね。でもしんどかったのは確かだよ。ヒンドリーがペースを上げたときもまだ余裕があったので、いけると思ったんだ。でも残り数百メートルも勾配がきつすぎて、よれてしまってコースわきのバリアに突っ込みそうになったよ。まずはマドリッドで表彰台にマイヨ・ロホを着て上がって、次はジロを狙いたいね。」

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トム・ピドコック(ステージ4位、総合3位)
「自分自身を誇りに思うよ。人生最高の走りができたよ。今はただ山頂まで走り切れてほっとしているよ。とにかく限界を超えて脱落していかないように、ぎりぎりの線で走り続けたよ。ここにははトップ10を狙ってきたけど、トップ5に入れたら最高だなと思っていて、そうしたら表彰台が確定的となったことで、僕もいつかはグランツールを制することができるという確信に変わったよ。」
ブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージ順位
1位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) 3h56’23”
2位 セップ・クス(ヴィズマ・リースアバイク) +11”
3位 ジャイ・ヒンドリー(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +13”
4位 トム・ピドコック(Q36.5プロサイクリング ) +18”
5位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +22”
6位 マシュー・リッチテロ(イスラエル・プレミアテック) +24”
7位 ジェイ・ヴァイン(UAEチームエミレーツ) +47”
8位 ジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック) +1’11”
9位 ジュニオール・ルセレフ(T-レックス・クイックステップ) +1’22”
10位 ハヴィエル・ピッカーリング(バーレーン・ヴィクトリアス) +1’30”
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) 72h53’57”
2位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ +1’16”
3位 トム・ピドコック(Q36.5プロサイクリング ) +3’11”
4位 ジャイ・ヒンドリー(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +3’41”
5位 マシュー・リッチテロ(イスラエル・プレミアテック) +5’55”
6位 ジュリオ・ペリッツァーリ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +7’23”
7位 セップ・クス(ヴィズマ・リースアバイク) +7’45”
8位 フェリックス・ガル(デカスロンAG2Rラモンディアル) +7’50”
9位 トースタイン・トレーエン(バーレーン・ヴィクトリアス) +9’48”
10位 マッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク) +12’16”
H.Moulinette












