新機材の革新はどこまで許されるのか、バロワーズ・ベルジャム・ツアーで実戦投入された新型ハンドルバーが物議、レース中の実際の映像を見たUCIが即座に使用選手の失格処分決定
昨今劇的な速さで進む技術革新、それはマーケットやレースシーンに様々な変化をもたらしている。多くのトップ機材はレースの現場で開発が進み、そして販売へとこぎつける。しかしどこまでがレース機材としてフェアでOKなものなのかは、時代時代で解釈が変わり続けてきた。そして今新たな火種となっているハンドルバーがある。トラック競技の選手でもあり、ロードレースにも参加しているBEATサイクリングのヤン・ウィレム・ファン・シップが開発に携わり、昨年度発表され、バロワーズ・ベルジャム・ツアーで初めて実戦投入された特殊形状のドロップバーが、物議をかもしているのだ。
過去にはハンドル幅320㎜といきわめて幅の狭いハンドルバー(公式なチームのスポンサー品ではなく、NITTOのランドナー用ハンドルバー)を実戦で使用したことでも話題になったのがファン・シップだが、今回導入したハンドルバーは、きわめて特殊な使い方ができるようになっている。それはハンドルからブレーキレバーブラケットへと垂直に前に伸びる部分のトップ部分が凹状にへこんでおり、そこに手を乗せることでDHバーのような形でエアロポジションがとりやすいというものだ。説明ではなかなかむつかしいので実際の写真を見てもらうとわかるが、極めて異端な形状をしている。そしてブレーキレバーの取り付けも、昨今増えつつあるフレア型で、ブレーキブラケットがマウンテンドロップバーのように前から見るとハの字型になっている。
バロワーズ・ベルジャム・ツアーで投入されたこのハンドルバー、チーム関係者によると、事前にUCIの現場レース担当者に確認をしたところOKが出ていたとのこと。しかしレース中にそのハンドルバーを実際に使っていることころを見たUCI機材担当者は、それがUCIルールで禁止されている、「TT以外で前腕で体を支える構造は許可されない」に抵触すると判断、失格処分が言い渡されたのだ。
レース後のチームとUCIとのやり取りで、UCIは事前に製造メーカーにこの構造体がUCI規約に抵触することを通達していたことを伝えており、UCI機材担当が更なる調査を行うまで使用を禁止することを伝えていたとしている。またBEATサイクリングからUCIに対して公式な手順を踏んだ事前確認がなかったことも同時に指摘している。
同じレースに出走しているレムコ・エヴァネポエル(ドゥクーニンク・クイックステップ)は、「一人で乗っているなら何を使おうと自由だけど、レースは別物でしょ。まったく異なる形状の機材がいきなり横に来たら、そりゃ驚くし不安に思うよ。あの形状は集団走行内で使うものではないよ。機材革新にも限度がある、本来の自転車のエッセンスを損ねるべきではないよ。」と、今回の機材革新の方向性にくぎを刺した。
今回のハンドルバーは、機材としては面白いものであり、機材の制約が少ないトライアスロンなどでは今後使われそうな雰囲気はあるし、一般ユーザー向けには面白いと思う。ただロードレースでその姿を見ることは、今のところ直ぐにはなさそうだ。
H.Moulinette