伝説再び:あの名作を世に送り出したロータスが、ホープとタッグを組みイギリス代表用にトラックバイクを製作、実戦投入へ!レギュレーションを最大限に有効に生かした自転車界のリアルF1!

イギリスの自動車メーカー、ロータスといえば、自動車のみならず、自転車界にも大きな軌跡を残してきた。マイク・バロウズがデザインしたモノコック構造の奇抜なデザインは、当初様々な自転車メーカーに持ち込まれたがことごとく拒否された。当時はUCIでもモノコックが禁止されていたことも大きかったが、プロジェクトはしばし眠りにつく。そしてUCIがルール変更をし、モノコックフレームが認可されると、バロウズのデザインを、近所だったロータスの社員が引き継ぎ、スポーツカーメーカーとしてもモータースポーツの最高峰F1でも名の知れた世界的な自動車ブランドが形にしたのだ。

©Lotus
すぐさま行われた風洞実験により素晴らしい効果を立証できたことで、ロータスは製造を決意し、生まれたのが伝説のロータス108だ。そしてクリス・ボードマンがそれを駆りバルセロナ五輪の4000mパシュートで世界記録を樹立し金メダルを獲得した。その後ロードバージョンのロータス110が生み出され、ツール・ド・フランスでも使用されたが、過剰な開発競争にヨーロッパの多くのメーカーが参戦できないというのを理由にUCIがモノコック禁止に転じたため、レースシーンでの使用が出来なくなってしまった。

©Hope/Lotus
そして今年、そのロータスが満を持して新作を送り出してきた。同じくイギリスの自転車コンポーネントブランドで、ディスクブレーキなどで有名なホープとタッグを組み、東京五輪でイギリスチームが使用するバイクを生み出した。その名もHOPE/Lotus HB.T、現在のUCI規制を目いっぱいに解釈して、今まで誰も見たことがない奇抜な形状を形にして見せた。強いて言うならF1のウィング構造が縦になったようなイメージで、空力抵抗を最大限に生かす構造となっている。
なんといっても特徴的なのは、UCIの新ルールを最大限に生かし、フロントタイヤ回り、つまりフロントフォークとリアタイヤ回り、チェーンステーとシートステーを8㎝という幅に広げたことだ。これにより最大限に空力を最適化できるようになったのだ。フレームのメイントライアングル自体は極めてシンプル、既存のフレームとさほど変わりはない。

©Hope/Lotus
またホープはこのプロジェクト用に新構造のディスクホイールを設計、製造した。従来のディスクホイールの弱点であった重量を、強度と合成を犠牲にすることなく大幅に軽減することに成功したのだ。
このデザインが格好いいかと問われれば、人それぞれといったところだろう。あまりにも奇抜な見た目は好き嫌いがはっきり分かれるし、これが次のトレンドになるかと言われれば、ならないと思われる。これはあくまでも勝利するために作られた機材、結果を出すためにストイックなまでにこだわって設計されたマシンであり、一般人が乗りこなせる代物ではないだろう。

©Hope/Lotus
しかしさすがはロータス、自らの伝説をさらに上書きするかのようなマシンを生み出すあたりが流石と言えるだろう。そして東京五輪で結果を残したとき、このHOPE/Lotus HB.Tは真の伝説となるだろう。
Hope HB.T from hopetech on Vimeo.
H.Moulinette