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誰がこんな結末を予想しただろう。新天地移籍のプリモズ・ログリッチ（ボーラ・ハンスグロエ）、そして世代最強の一角レムコ・エヴァネポエル（ソウダル・クイックステップ）の2強による総合優勝争いが戦前の予想だったなか、今大会を制したのはログリッチが抜けたヴィズマ・リース・ア・バイクに新加入したマッテオ・ヨルゲンセン（ヴィズマ・リース・ア・バイク）だった。新人賞と総合優勝のダブルで、また新たなエース格が台頭してきた。

©ASO

決してログリッチの穴を埋めることなど到底できない、それでも新加入の24歳はチーム首脳たちの予想と期待を大きく上回り、人生最高のパフォーマンスを一貫して披露し続けた。そして最終第8ステージの山岳で、世代を代表するエヴァネポエルとの直接対決でも臆することない走りで対抗、鮮やかに人生最大の勝利を大金星で上げて見せた。昨年度まで所属したモビスターではツアー・オブ・オマーンで総合優勝を果たし、ツール・ド・ロマンディでも総合2位と躍動したが、そんな才能が開花した事で最強チームに引き抜かれた男は、一発でその価値を証明して見せた。

「正直総合優勝というのは大会前には視野になかったよ。結果を残したいというのはあったけど、監督からはトップ１０で上出来といわれていたんだ。でも自分的には総合表彰台が狙えればと思ってはいたよ。昨晩今日の勝利の可能性が頭をちらついたんだ。そして今日最終日はレース中盤混沌として、エヴァネポエルと協調して、総合リーダーのブランドン・マクナルティ（UAEチームエミレーツ）を振り切って、ゴールまで行けたらレムコがステージ勝利で僕が総合優勝というスキームが出来上がったんだ。レムコのアタックは予想していたし、あまりにも強烈なんでしんどかったけど、3度目のアタックでマクナルティが脱落したんで、あとは最後まで走り切ることに専念できたよ。」

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ヨルゲンセンは最終日の大逆転に関して、レムコと協調体制を結んだことを明かした。若手選手が現在最強の一角、元世界チャンピオンのエヴァネポエルに協調を求めることもすごいが、それをエヴァネポエルがのんだという事は、それほどまでにヨルゲンセンの走りが良かったという事だ。

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「ヨルゲンセンは全く振り切れなかったよ。彼はこの勝利に値するだけの選手だという事だよ。」レムコは敗北を認めヨルゲンセンを讃えた。

ヨルゲンセンの勝因は最終日前日の第7ステージにある。勝負どころの最終山岳で、このステージまでの総合リーダーはマクナルティ、そこにプリモズ・ログリッチとアレクサンダー・ヴラソフのボーラ・ハンスグロエ2枚看板らが続いた。エヴァネポエルの度重なるアタックに対しマクナルティが脱落、しかし自分だけが脚を使うことを嫌ったエヴァネポエルが足を止めたタイミングでヴラソフがアタックしステージ勝利を挙げた。しかしこのすべてが最終日への布石となった。

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ログリッチは自らが動かずアシストを先に行かせ、チームはステージ勝利こそ上げたが、ライバルたちに対して戦略がはっきりとしていないことが露呈してしまう。エヴァネポエルは脚を使ったわりにはヨルゲンセンやログリッチを振り切れずにステージ2位、そしてこのステージでトップクラスの選手たちと対等に渡り合えたことで、ヨルゲンセンは完全に自分の走りに自信と確信を持つこととなった。

若い選手というのはきっかけさえあれば大化けするのだが、ヨルゲンセンに関しては今シーズンの移籍が完全に良い方向に出たと言えるだろう。移籍をして鳴かず飛ばずになる選手も多い中で、移籍早々に結果を残せたというのは、大きな自信につながるとともに、今シーズン更に大きな飛躍が期待できそうだ。

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「本当に今回の移籍は成功だったと思う。最高の環境に今自分がいると感じているよ。このチームは一人一人が役割をこなすだけではなく、常にベストを尽くすチームなんだ。だからこそ常に自分自身ストイックに練習を積み重ね、いつでも万全の準備ができているようにすれば、必ずチャンスがもらえるんだ。もちろんそれらはどのチームにいても当たり前の事ではあるんだけど、その一つ一つ、栄養管理からスケジュール管理、巣民に至るまですべてがしっかりと整えられ、常にベストを尽くすことに専念できる環境がここにはあるんだ。」

ヨルゲンセンと入れ替わりチームを去ったログリッチだが、なかなか本領発揮とはいかなかった。代わりにアシスト兼セカンドエースのヴラソフの方が好調で、最終的に総合5位と結果を残した。ログリッチは総合10位と最終的に大きく順位を落として今大会を終えた。

また今大会では総合1位と3位がアメリカの選手となった。昨年度ブエルタ・ア・エスパーニャを制したセップ・クス（ヴィズマ・リース・ア・バイク）もアメリカ出身、グレッグ・レモンやクリス・ホーナーら名選手に続くアメリカの台頭が来ているのかもしれない。

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また今大会で気になった選手は総合6位で大会を終えたルーカス・プラップ（ジェイコ・アルーラ）だろう。トラック競技出身だが、第4ステージでは一時総合リーダーに躍り出ただけではなく、新人賞ジャージも複数ステージキープするなど、前半から中盤にかけて存在感を示した。まだ23歳の若手は山岳でもそれなりに走れることを示して見せた。

パリ～ニース2024総合順位（全8ステージ）
優勝　マッテオ・ヨルゲンセン（ヴィズマ・リース・ア・バイク）　　　27h50’23”
2位　レムコ・エヴァネポエル（ソウダル・クイックステップ）　　　+30”
3位　ブランドン・マクナルティ（UAEチームエミレーツ）　　　+1’47”
4位　マティアス・スケルモース（リドル・トレック）　　　+2’22”
5位　アレクサンダー・ヴラソフ（ボーラ・ハンスグロエ）　　　+2’57”
6位　ルーカス・プラップ（ジェイコ・アルーラ）　　　+3’08”
7位　イーガン・ベルナル（イネオス・グレナディアス）　　　+4’03”
8位　ウィルコ・ケルデルマン（ヴィズマ・リース・ア・バイク）　　　+4’04”
9位　フェリックス・ガル（デカスロンAG2Rモンディアル）　　　+4’35”
10位　プリモズ・ログリッチ（ボーラ・ハンスグロエ）　　　+5’33”

H.Moulinette