Tweet

Pocket

©ASO

逃げ切りというのは容易ではない。ましてや逃げた人数が少数、メイン集団が大人数であれば、そう簡単に決まるものではない。そんな悪条件が整った状態で、逃げに加わったTTスペシャリストとそれに協調した残りの逃げメンバーが、渾身の走りを披露、壮絶な追いかけっこの末に逃げ切って見せた。

©ASO

紙一重だった。メイン集団の波はあわや先行した逃げを飲み込もうとしたが、タッチの差でそれが届くことはなかった。ステージを制したのはキャスパー・アスグリーン（ソウダル・クイックステップ）、総合リーダーのヨナス・ヴィンゲガード（ユンボ・ヴィズマ）と同じデンマーク人であり、マッズ・ペデルセン（リドル・トレック）と合わせて今大会3人目のデンマーク人ステージ勝者となった。メイン集団はスプリントをした逃げ3人と同タイムでゴールするほど背後に迫っていたが、計算が狂いあと一歩のところで勝負のチャンスを逃した。

©ASO

この日の185㎞のステージでの逃げはもともと3人だった。アスグリーンに加え、ヴィクトル・カンペナールツ（ロット・デスティニー）、更にはヨナス・アブラハムセン（UNO-Xプロサイクリング）が逃げを構成した。この日はスプリント勝負が見込まれていたこともあり、この二蛾が大きなアドバンテージを得ることはなく、タイム差は1分半ほどで推移し続ける。

そしてこのタイム差が、その後の展開に大きく影響を与えることとなる。大きなタイム差が広がらないこともあり、レース中盤の山岳ポイントでパスカル・エンクホーン（ロット・デスティニー）が山岳賞ジャージのギウリオ・チッコーネ（リドル・トレック）らとともに飛び出していく。このアタックは成功しなかったが、これで手ごたえを感じたエンクホーンは、逃げとメイン集団の差が30秒にまで縮んだ残り65㎞でさらにアタックを仕掛けると、ついにメイン集団から抜け出していく。

©ASO

更には逃げのカンペーナールツがペースを落としエンクホーンに合流、そしてそのまま一気に逃げ集団まで合流を果たす。カンペーナールツのこのファインプレイがこの後の展開を大きく左右することとなった。

この日は時速15㎞ほどの向かい風があり、そのことが逃げ切りの妨げになるかに思われたが、TTスペシャリストとして馬力のあるカンペナールツの破城が大きくものを言う。またエンクホーンが合流したことで、ロット・デスティニーは明確にアシストがカンペナールツ、スプリントエースがエンクホーンというすみ分けができたことで、逃げのローテーションが綺麗にまとまり他二人との協調体制が維持された。

©ASO

残り30㎞で45秒、残り17㎞で35秒、　残り5㎞で10秒とタイムは縮まり、これはもういつ吸収されてもおかしくない状況となるが、バーレーン・ヴィクトリアス、アスタナ・カザフスタンらが牽引してきた追走が、協調できなくなる。捕まえたことの状況を想定してあまり人数を割きたくない各チームが躊躇をしたのだ。これに業を煮やしたアルペシン・ドゥクーニンクが残り1㎞で再び先頭に躍り出て猛追をするが、このタイミングが遅すぎた。

カンペナールツ個人の力での牽引で残り300mまで引っ張ると、そこからスプリント勝負となる。猛追してくる追走の波を確認しながらスプリントを開始したのはアスグリーン、そのままエンクホーンを抑えて歓喜のステージ優勝を飾った。

©ASO

キャスパー・アスグリーン（ステージ1位）：「去年の夏からずっと色々あってまともに走れてなかったから、この勝利はとても特別だよ。チームにもそして引退するデヴェニエンスにも感謝しかないよ。」

ヴィクトル・カンペナールツ（敢闘賞）：「最後もう一歩先まで牽引してリードアウトしたかったんだけど、足がつったよ。」

タデイ・ポガチャル（総合2位）：「結果から見れば、僕の今年のコンディションは最高だったわけではないという事だよ。」

ツール・ド・フランス第18ステージダイジェスト
ASO 公式ダイジェスト　https://youtu.be/mKDC8jGF1BI

ツール・ド・フランス第18ステージ
1位　キャスパー・アスグリーン（ソウダル・クイックステップ）　　4h06’48”
2位　パスカル・エンクホーン（ロット・デスティニー）
3位　ヨナス・アブラハムセン（UNO-Xプロサイクリング）
4位　ヤスパー・フィリップセン（アルペシン・ドゥクーニンク）
5位　マッズ・ペデルセン（リドル・トレック）
6位　ケース・ボル（アスタナ・カザフスタン）
7位　ヨルディ・ミーウス（ボーラ・ハンスグロエ）
8位　マッテオ・トレンティン（UAEチームエミレーツ）
9位　クリストフ・ラポルト（ユンボ・ヴィズマ）
10位　ルーカ・モッツァート（アルケア・サムシック）

ツール・ド・フランス総合順位
1位　ヨナス・ヴィンゲガード（ユンボ・ヴィズマ）　　72h04’39”
2位　タデイ・ポガチャル（UAEチームエミレーツ）　　　+7’35”
3位　アダム・イェーツ（UAEチームエミレーツ）　　+10’45”
4位　カルロス・ロドリゲス（イネオス・グレナディアス）　　　+12’01”
5位　サイモン・イェーツ（ジェイコ・アルーラ）　　　+12’19”
6位　ペッロ・ビルバオ（バーレーン・ヴィクトリアス）　　　+12’50”
7位　ジャイ・ヒンドリー（ボーラ・ハンスグロエ）　　　+13’50”
8位　フェリックス・ガル（AG2Rシトロエン）　　+16’11”
9位　セップ・クス（ユンボ・ヴィズマ）　　　+16’49”
10位　ダビ・ガウドゥ（グルーパマFDJ）　　　+17’57”

H.Moulinette