ツール・ド・フランス2023第17st:難関山岳でガルが逃げ切り勝利!総合ほぼ決着か、ヴィンゲガードがポガチャルを完全粉砕!ポガチャル前半落車など精彩欠く(ダイジェストあり)
人のメンタルの状況は、そのパフォーマンスに大きく影響を与えるものだ。そして昨日の個人TTで完璧な走りをしながらも、完敗に等しい差をつけられたタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)のレース後の放心状態とも見て取れるその表情が、この日の山岳の走りに大きく影響を及ぼした可能性はある。
勝負どころの難関ステージ、総合勢のバトルがどのような展開を迎えるかによって流動的となる逃げ切りの容認とステージ勝利の行方、それでも各選手たちは己の勝利の為、チームの勝利の為に積極的な動きを見せ続けた。そんな展開の中で、総合順位のジャンプアップを狙った総合10位のフェリックス・ガル(AG2Rシトロエン)が逃げに乗ると、チームメイトの献身的なアシストから飛び出し見事単独でステージ勝利を挙げた。25歳のオーストリア人選手はこれで総合でもジャンプアップを果たし、総合8位となった。
そして総合優勝争いでは、ユンボ・ヴィズマが積極的なペースを作り続けると、残り14㎞でポガチャルがズルズルと後退していく。それでもペースを緩めないヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)はセップ・クス(ユンボ・ヴィズマ)、さらには逃げに乗っていたアシストたちが順次合流してアシストを繰り返し、ポガチャルにこのステージだけで5分45秒の大差をつけてゴール、総合での雌雄がほぼ決した形となった。これで総合では2位のポガチャルに7分35秒差、ステージ後うなだれるポガチャルに対し、満面の笑みでインタビューを受けた。
ステージは序盤からアタックの応酬となった。逃げに乗りたい面々が仕掛ける中、中心となったのは山岳賞ジャージのギウリオ・チッコーネ(リドル・トレック)とその奪還を狙うニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)だった。そこに総合7位のペッロ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス)、総合8位のサイモン・イェーツ(ジェイコ・アルーラ)、更にはガルと総合トップ10が3人も入った34名の大所帯の逃げに対し、メイン集団はなかなか大きなリードを許すことはなかった。
そんな中メイン集団ではポガチャルが落車、大きな怪我はないものの膝などを擦りむき、出血しながらの走行となる。そしてそのメイン集団は、イネオス・グレナディアスがカルロス・ロドリゲスの表彰台再奪取を狙いペースを上げていく。更にはユンボ・ヴィズマもペースを上げたことで、総合勢中心のはずのメイン集団は大幅に人数を減らし、逃げの人数の方が多い状況となっていく。
そしてゴール前の超級山岳に差し掛かると、大幅に数を減らしていた先頭集団からガルが飛び出していく。勢いよく飛び出したというよりは、ペースを上げたような緩いアタックだが、それに誰も付いていくことができない。そのままがるはゴールまで独走で逃げ切りステージ勝利、最難関ともいえるこのステージで大金星を挙げた。
その背後では残り15㎞を切りポガチャルが突然脱落していく。アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ)はそれでもヴィンゲガードを追走、総合3位の順位死守を目指す。ヴィンゲガードはそれを確認しても大幅にペースを上げるというよりは、きっちりとペースを刻んでいく。クスのアシストに加え、逃げに乗っていたティス・ベノート、さらにはウィルコ・ケルデルマンとチームメイトが合流しどんどんとポガチャルとのタイム差が広がっていく。ポガチャルはジャージの前全開で顔は下を向いたまま必死でのペダリングが続く。
最後はヴィンゲガードが残り8㎞から単独で加速、もう少しでステージ3位でボーナスタイム獲得を逃すも、ステージ4位で一気にポガチャルとの差を大きく広げ、総合優勝争いをほぼ決着させた。
フェリックス・ガル(ステージ1位、総合8位):「つかまりやしないかとハラハラしていたよ。正直今日は逃げ切りが許されないのではと思っていたからね。ずっと調子が良く走っていたんだけど、仕掛けようと思った激坂区間に近づいたらだんだんと調子が良いとは思えなくなっていったからね。でももうそこはもう仕掛けるしかなかったよ。1年半前は、まさか自分が今のこのポジションにいるとは想像もつかなかったよ。」
ヨナス・ヴィンゲガード(ステージ4位、総合1位):「正直ほっとしているよ。7分差は大きいからね。でもまだポガチャルは仕掛けてくると思うから、油断はしないよ。ポガチャルが後ろからはすられて落車したときは真後ろにいたんだけど、彼が復帰するまでは待ったんだ。勝負以外でアドバンテージを得たくなかったからね。あのせいで今日の走りが良くなかったのかまではわからないなぁ。」
タデイ・ポガチャル(総合2位):「僕は終わったね。本当にがっかりしているよ。これが僕が望んだ結果ではないからね。脚は回らないし、3時間半でガス欠になったよ。でもこれでもチームメイトのおかげで表彰台を守れたよ。それがなければ表彰台圏内さえ守れたかわからないよ。あとは第20ステージまでに体調を戻して、ステージ勝利とアダムと二人で表彰台に上るのが目標だよ。」
ツール・ド・フランス第17ステージダイジェスト
ASO 公式ダイジェスト https://youtu.be/tHlli0pP5d0
ツール・ド・フランス第17ステージ
1位 フェリックス・ガル(AG2Rシトロエン) 4h49’08”
2位 サイモン・イェーツ(ジェイコ・アルーラ) +34”
3位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス) +1’38”
4位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) +1’52”
5位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +2’09”
6位 トビアス・ヨハンセン(UNO-Xプロサイクリング) +2’39”
7位 クリス・ハーパー(ジェイコ・アルーラ) +2’50”
8位 ラファル・マイカ(UAEチームエミレーツ) +3’43”
9位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) +3’31”
10位 ウィルコ・ケルデルマン(ユンボ・ヴィズマ) +3’49”
ツール・ド・フランス総合順位
1位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) 67h57’51”
2位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +7’35”
3位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) +10’45”
4位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +12’01”
5位 サイモン・イェーツ(ジェイコ・アルーラ) +12’19”
6位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス) +12’50”
7位 ジャイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ) +13’50”
8位 フェリックス・ガル(AG2Rシトロエン) +16’11”
9位 セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ) +16’49”
10位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +17’57”
H.Moulinette