ジロ・デ・イタリア第9ステージ:総合明暗くっきり、個人TTを制したのはログリッチ!圧倒的な走りでただ一人51分台!アワーレコード記録保持者のカンペナールツは2位もあきらめの表情

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©Bettini Photo

総合系の選手たちにとっては大きな分岐点となるだろうと思われたサンマリノ公国での第9ステージ個人TT、大方の予想通りと言えば予想通りだが、プリモズ・ログリッチ(ジャンボ・ヴィズマ)が悪天候など何のその、会心の走りでただ一人51分台をたたき出しステージ勝利、さらには総合でも一気に2位へと上り詰めた。

この日長時間暫定トップタイムの選手が座る座席に座り続けたのはアワーレコードで世界最速記録を塗り替えたヴィクトル・カンペナールツ(ロット・ソウダル)、天候が幾分かましだった前半に走り。途中バイク交換もしながら52分03秒をたたき出した。

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その後何度となくコースは土砂降りに見舞われ、選手たちは神経質になりながらの走行が続く。総合系選手たちが順番にコースに飛び出ていくころには、天候は悪化、誰もが苦戦を強いられる形となる。カンペーナールツの記録した中間計測タイムに誰も近づくことさえできない。総合系の中でもTTを比較的得意とするのはヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)、この日も快調なペースで飛ばしていく。ニーバリはバイク交換なく一気にゴールまで駆け上がっていく。素晴らしいタイムをたたき出すが、それでも53分台を辛うじて切るタイム、カンペーナールツとは1分近いタイム差でのゴールとなった。それに対してTTを強化してきたサイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)だったは、この日の天候に泣かされることとなる。前半こそ踏ん張ったが後半は大きく失速、このステージだけでログリッチに3分以上を失う結果となった。

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そのログリッチは第1ステージのTT同様に淡々と走り続ける。雨などお構いなしといった感じで自らのペースを守り続ける走りに徹する。第2中間計測ではカンペーナールツに対して1分近く遅れていたが、ここからがこの男の本領発揮だった。誰もが失速したゴールへの上りセクション、サンマリノ公国最高標高地点への上りで、ログリッチだけは一切失速せず上り続ける。その結果ゴールではなんとカンペナールツを11秒逆転、ただ一人51分台という別次元の走りでライバルたちに強烈な印象を残した。総合リーダージャージは昨日までの総合リーダー、ヴァレリオ・コンティ(UAEチームエミレーツ)が辛うじてキープ、ログリッチはそれに次ぐ総合2位までジャンプアップを果たした。

総合トップ10には昨日までの逃げのアドバンテージがいまだ残ったメンバーが顔を揃えるが、総合上位を狙う選手たちは大きく変動、総合を狙える選手の中では昨日ステージ優勝を上げミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ)の為に走ると宣言したペッロ・ビルバオ(アスタナ)が1分42秒差と一番ログリッチに近い。肝心のロペスは大きく遅れ、4分30秒のタイム差となってしまっている。このままではエースの配置転換もありそうだ。さらにはニーバリがログリッチとは1分44秒差、バウク・モレンマ(トレック・セガフレド)とは1分55秒差、ボブ・ユンゲルス(ドゥクーニンク・クイックステップ)が2分18秒差、ラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ)が2分53秒差となっている。

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ステージ優勝したカンペーナールツは、バイク交換の際はチェーントラブルでバイク交換となったが、タイミング的にはばっちりで上りをノーマルバイクで駆け抜けるはずだった。しかしバイク交換したノーマルバイクのギアがアウターに入っているというミス、平坦ステージであればそれでもよかったかもしれないが、7%の勾配でいきなりアウターでの再スタートに苦戦、沿道の観衆らに押してもらってようやく再スタートが切れたのだ。これさえなければ間違いなくこのステージも勝利出来ていただけに、ログリッチがタイム更新をした直後、手を広げガッカリした表情を浮かべた。

「完璧だったよ。いいTTが出来たね。カンペナールツの走った時に比べてはるかにウェットコンディションで走りにくかったし、リスクが取れなかったんだけど、それでもいいタイムが叩き出せたね。とにかくコーナーではスローに、上りでは爆発的にだったね。のぼりでは悪天候は走りに全く影響なかったよ。総合で優位に立てたかだって?まだまだこれからがジロ本番だよ。もちろんライバルたちに対してタイムを稼ぎ出せたのはよかったけどね。」
~プリモズ・ログリッチ ステージ1位 総合2位

「今日のTTは僕向きではないと言ったじゃん。でもねTTスペシャリストとしては一旦コースに出たら勝利を目指すものなんだよ。今日は前半スローで、後半でペースアップという作戦だったんだ。バイク交換は可能性を議論していたんだよ。だからそれ自体は問題じゃない。ただ残り1.5kmでバイク交換になった理由(メカトラ)と、その後のギアがアウターに入っているという初歩的ミスは本当に腹立たしいよ。」
~ヴィクトル・カンペナールツ ステージ2位

「まだまだ僕とログリッチの一騎打ちというのは早すぎるね。まだランダやイェーツ、ロペスらだってここから巻き返してくるだろうからね。間違いなくタイムを奪い返すために山で仕掛けてくるだろうからね。」
~ヴィンチェンツォ・ニーバリ ステージ4位

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「ダメな一日だったよ。フラットセクションではよかったんだけど、上りになったら一気に動けなくなったよ。体が冷えたのもあるね。それで全く上れなかったんだ。でももう結果が出てしまった以上は仕方がない、これから先のステージでどんな仕掛けができるのかを見直していくよ。」
~サイモン・イェーツ

ジロ・デ・イタリア第9ステージ
1位 プリモズ・ログリッチ(ジャンボ・ヴィズマ)   51’52”
2位 ヴィクトル・カンペナールツ(ロット・ソウダル)   +11”
3位 バウク・モレンマ(トレック・セガフレド)   +1’00”
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)   +1’05”
5位 タネル・カンゲルト(EFエデュケーション・ファースト・ドラパック)   +1’10”
6位 チャド・ハガ(チームサンウェブ)   +1’14”
7位 ボブ・ユンゲルス(ドゥクーニンク・クイックステップ)   +1’16”
8位 ヒュー・カーシー(EFエデュケーション・ファースト・ドラパック)   +1’30”
9位 ペッロ・ビルバオ(アスタナ)   +1’43”
10位 マッティア・カッタネオ(アンドローニ・ジョカットリ・シデルメック)   +1’52”

ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 ヴァレリオ・コンティ(UAEチームエミレーツ)   36h08’32”
2位 プリモズ・ログリッチ(ジャンボ・ヴィズマ)   +1’50”
3位 ナンス・ピータース(AG2R)   +2’21”
4位 ホセ・ロハス(モビスター)   +2’33”
5位 ファウスト・マスナダ(アンドローニ・ジョカットリ・シデルメック)   +2’36”
6位 アンドレイ・アマドール(モビスター)   +2’39”
7位 アマロ・アントゥーネス(CCC)   +3’05”
8位 ヴァレンティン・マドゥアス(グルーパマFDJ)   +3’27”
9位 ジョバンニ・カルボーニ(バルディアーニCSF)   +3’30”
10位 ペッロ・ビルバオ(アスタナ)   +3’32”

H.Moulinette