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運命の分かれ道になるだろうと思われた37kmの個人TT、戦前より個人TT世界チャンピオンのトム・デュムラン（チームサンウェブ）の優位が語りつくされてきた。その為ここまでにどれだけのタイム差をデュムランにつけておくかこそが唯一の攻略法と言われていた。そして休息日前までに何とかタイム差を2分11秒にまで広げたマリア・ローザのサイモン・イェーツ（ミッチェルトン・スコット）にとっても、このステージ鬼門となるかに思われた。

©Tim D.Waele/Getty Images

しかし春先から苦手の個人TT克服へ向け強化を行ってきたイェーツの走りは、想像を超えるものだった。マリア・ローザマジック、総合リーダージャージを着たもののみがその恩恵にあずかることができる120％の力を出せると言われるその効果もあってか、何とデュムランへのタイムロスを1分15秒に抑え、ステージ20位でゴール、マリア・ローザをがっちりキープするとともに、デュムランと約1分差を保つことに成功した。これで総合優勝争いはこの二人に確実に絞られることになりそうだ。

「嬉しいよ！前半は脚がよく回っていたんだ。そしていい感じで走れていたんだよ。タイムもあまり失っていなかったし、いけると思ったね。でも最後の10kmは死ねたね。もう限界超えてタイムさえ分からなくなるほどに頭の中真っ白だったよ。でも思ったよりもタイムロスが抑えられたみたいで嬉しかったよ。これで残りのステージの戦略は変わってくると思うよ。ここからは今まで見たいに”攻撃は最大の防御なり”、とはいかないかな。盛り上がりに欠けるかもしれないけど、ここからは防御中心で戦うことになると思うよ。とにかく1分弱にデュムランがいるわけだから、まずはそこマークだよね。」イェーツは早くも今後のステージを見据えていた。

©Tim D.Waele/Getty Images

対するデュムランは、やはり疲れからはその走りに切れ味が感じられない。それでも最後までスペシャリストらしい走りを見せたが、結局ステージ3位に沈んだ。このステージでは一度はトップ10から脱落したローハン・デニス（BMC）が渾身の走りを披露、元世界チャンピオンのトニー・マルティン（カチューシャ・アルペシン）を抑えステージ優勝を上げるとともに、一気に総合でもトップ10返り咲きを果たした。これで総合6位となり、まだ総合表彰台へ向けわずかだがチャンスが残っている。

©Tim D.Waele/Getty Images

「何とかステージ勝利が欲しかったんだ。イスラエルで勝つつもりだったんだけど、でもここで勝ててよかったよ。これでトップ10返り咲き、ようやくチームに恩返しができたよ。あとはこの順位をどこまでキープできるかだよ。残りの山岳ステージは潰しあい必至だからね。なんとか最後までこのトップ10圏内をキープしたいね。」デニスは笑顔で語った。」

©Tim D.Waele/Getty Images

第14ステージで勝利しながら、第15ステージで完全にペースダウンをしたクリス・フルーム（チームスカイ）だが、何とか得意の個人TTで盛り返しステージ5位、これで総合でも4位へとジャンプアップし、総合3位のドメニコ・ポッツォヴィーヴォ（バーレーン・メリダ）に僅か39秒差と表彰台が見えてきた。

このステージでは多くの選手がドラフティングでペナルティーをもらった。確かにきつい個人TTだが、161人中6人もがタイム加算を受けた。その中には大会前には優勝候補にも挙がっていたファビオ・アルー（UAEチームエミレーツ）も含まれており、極めて残念な印象を与えてしまった。

ジロ・デ・イタリア第16ステージ
1位　ローハン・デニス（BMC)　　　40’00”
2位　トニー・マルティン（カチューシャ・アルペシン）　　　＋14”
3位　トム・デュムラン（チームサンウェブ）　　　＋22”
4位　ホス・ファン・エムデン（ロットNLジャンボ）　　　＋27”
5位　クリス・フルーム（チームスカイ）　　　＋35”
6位　アレックス・ダウセット（カチューシャ・アルペシン）　　　＋40”
7位　チャド・ハガ（チームサンウェブ）　　　＋47”
8位　ファビオ・アルー（UAEチームエミレーツ）　　　＋57”（＋20sP）
9位　ダビ・デ・ラ・クルズ（チームスカイ）　　　＋1’01”
10位　ヴァシル・キリエンカ（チームスカイ）　　　＋1’04”

ジロ・デ・イタリア総合順位
1位　サイモン・イェーツ（ミッチェルトン・スコット）　　　66h39’14”
2位　トム・デュムラン（チームサンウェブ）　　　＋56”
3位　ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ（バーレーン・メリダ）　　＋3’11”
4位　クリス・フルーム（チームスカイ）　　　　＋3’50”
5位　ティボー・ピノー（グルーパマFDJ）　　＋4’19”
6位　ローハン・デニス（BMC)　　　＋5’04”
7位　ミゲル・アンヘル・ロペス（アスタナ）　　＋5’37”
8位　ペッロ・ビルバオ（アスタナ）　　　＋6’02”
9位　リチャード・カラパズ（モビスター）　　　＋6’07”
10位　ジョージ・ベネット（ロットNLジャンボ）　　　　＋7’01”
H.Moulinette