2025年シーズンのUCIのルールチェンジは変化をもたらすか?イエロカードシステムに一酸化炭素吸引も禁止に、スプリントと補給もルール変更、女子とU-23、ジュニアのレース距離延長

遂に開幕したUCIの2025年シーズン、UCIは今シーズンもいろいろとレギュレーションの変更を行った。新たに導入されるイエロカードシステムや検査目的で使われていた一酸化炭素吸引禁止など、果たしてそれらはどのようにレースシーンを変えていくのだろう。
まずは今まで不明瞭だったレース中やスプリントの際のレギュレーション違反がわかりやすくなる。今までは罰金や降格、失格などの詳細がレース後に公表されていたが、これからはレギュレーション違反はサッカーなどと同じようにイエローカードとなる。これにより各選手の違反の蓄積が明確に示されることとなり、違反が多い選手やチームがわかりやすくなる。例えばチームカーから補給を受ける際のスティッキーボトル、集団復帰する際のチームカーを利用した空力軽減のドラフティング、走行中の車両からのメカニカルサポートなどがその対象となる。試験的に2024年シーズンもワールドツアーカテゴリーでは試されていたが、正式にワールドツアーシリーズ、プロシリーズ、コンチネンタルシリーズ、世界選手権、オリンピックでも採用されていくこととなる。
同一レースシリーズ期間中に2度のイエローカードで失格処分と7日間の出場停止、30日間で3枚のイエローカードで14日間の出場停止、1年(52週以内)に6枚のイエロカードで翌シーズン30日間の出場停止となる。また違反をした選手を特定することもチームに求められ、特定できない場合チーム監督に2000スイスフラン(およそ35万円)の罰金が課されることとなる。
次に検査目的での一酸化炭素吸引が禁止となる。一酸化炭素を吸引してそのデータを記録するために行われているが、高山トレーニングと似た効果により、出力アップに繋がっているという懸念があった。新たなドーピングではないかと言われたが、それ以上に健康リスクの問題がないのかというところが大きな論点となった。強豪チームのUAEチームエミレーツ、ヴィズマ・リースアバイク、イスラエル・プレミアテックらが活用していることを表明していたが、今後は検査目的でも使わないとしている。
そしてスプリントにも変更が加わった。試験的に導入されていたが、今年から正式にスプリントステージではゴール前3㎞までの救済措置区間が5㎞まで延ばされる。また通常ステージでは先行者から1秒以内の選手に同タイムが与えられるが、それが3秒以内の選手が同タイム扱いとなる。しかしスプリントステージで逃げ切りが決まった場合にはその限りにあらず、通常のステージ同様の1秒以内に同タイムが適応される。
そしてそのスプリントの際によく見られた、後方のチームメイトがハンドルから手を放してのガッツポーズも禁止となる。危険行為とみなされ、500スイスフラン(およそ7万7千円)の罰金と集団最後方への降格処分、もしくはイエロカード対象となる。またそれと同時にスプリントへのアシストを終えてのスローダウン時の進路妨害やチーム無線での会話とハンドルからの手放し行為も禁止となる。これも違反した場合は獲得ポイントもしくは所有ポイントの25%カット、または降格処分とイエローカード対象となる。
そしてもう一つ補給に関しても変更がある。補給エリアがより明確化され、主催者は30~40㎞ごとに補給エリアを設定しなければならない。つまりそれ以外のエリアでの道路脇からの補給はすべて禁止となる。これはエリア外での補給による危険を避けるためだ。
また世界選手権などでの女子及びU-23、ジュニア のレース距離が伸びることとなる。今までよりもそれぞれ20~30㎞延長され、よりスリリングなレースが展開されそうだ。またU-23のレースにはワールドツアーとプロチーム所属の選手たちは出場できないことも新たに決定された。つまりはコンチネンタル、もしくはアマチュアチーム所属の選手に限定されることとなった。
最後の変更点は、間違いなく昨今の選手たちのフィジカルの向上からきているものであり、今後ポガチャルのようなモンスターが次々と育ってくる可能性すら秘めているのかもしれない。だがそれ以外の変更点は間違いなく今シーズンのレースの戦略を立てる上では大きなウェイトを占める可能性があり、昨年とは異なる戦術などが見られるかもしれない。年始と共に開幕し、冬を迎えるまで終わらない長いシーズンがいよいよ動き出した。
H.Moulinette