ブエルタ・ア・エスパーニャで躍動したエキッポ・ケルン・ファルマ!山岳難関ステージでジャイキリステージ3勝!ステージでトップ10が14度の脅威の確立!エリートではない者たちのがむしゃらな躍進
今年のブエルタでは、あるチームの台頭が際立った。下剋上、自転車レースの世界ではなかなか起こりにくいジャイアントキリング、通称ジャイキリとは、格下のものが格上を倒すことをいう。チームスポーツダル自転車レースでは、個の力のみならず、チーム組織力というものがあるため、なかなかこのようなことは起こりにくいものだ。特にグランツールという世界最候補のレースには、各チームが主力中の主力を送り込んできており、それを上回ることは容易ではない。
だが今年のブエルタ・ア・エスパーニャでは、ワールドツアーチームではない格下の招待チーム、UCIプロチームが躍動、大躍進を遂げた。復活した名門エウスカルテル・エウスカディのオレンジのその姿も今大会を通して目立ち続けたが、それをさらに上回ったのが濃緑の集団、エキッポ・ケルン・ファルマだ。
2020年にプロコンチネンタル登録、そして翌2021年にはUCIプロチームへとステップアップを果たした。一人のオランダ人選手を除き、スペイン選手で構成されており、その全員が20代だ。ただ際立った実績のある選手がいるわけではなく、ワールドツアーチームにして若くして招聘される選手たちの様なエリートでもない。実際に2021年以降では カテゴリー2.1クラスのレースで4勝を挙げたのみでしかない。
それが招待枠で出場を決めた今大会、監督から「名前を売ってこい!」とはっぱをかけられた選手たちは序盤から逃げに乗るなど積極的に活躍を見せた。毎ステージのように逃げに乗るなど積極的な動きを見せ、またステージトップ10に入るも、なかなかステージ優勝は遠かった。しかし風向きが変わったのはチーム創設者の死だ。前日の夜にその訃報を聞いた選手たちは喪章をつけて挑んだステージで、パブロ・カストリーリョ(エキッポ・ケルンファルマ)が体を大きく左右に振りながらも必死の走りで第12ステージの難関山頂ゴールを制して見せた。
そしてこれで勢いづいたチームは更にカストリーリョが第15ステージでも山頂を制する2勝目を挙げると、第18ステージでは今度はウルコ・ベラーデ(エキッポ・ケルンファルマ)が制し、大会3勝目を挙げた。さらに勝負どころの19、20ステージでもこの二人はそのポテンシャルを披露、特にベラーデは総合優勝を果たしたプリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)に対してアタックを敢行するなど積極的な走りを最後まで披露し総合上位勢に交じってステージ5位と驚異の走りを見せた。きれいごとの駆け引きではない泥臭さと貪欲さ、そしてがむしゃらさがチーム全体に相乗効果をもたらし、強敵であろうと臆することなく誰もが特攻していく姿勢が垣間見えた。
今大会を通して、チームはこの3勝を含めて5人の選手でステージトップ10が14回と予想をはるかに超える活躍を見せた。スプリントを中心にポー・ミケル(エキッポ・ケルンファルマ)がトップ10に4回、ベラーデが山岳ステージを中心に4回、カストリーリョが山岳ステージで3回、アントニオ・ヘスス・ソトが2回、ホセ・フェリックス・パラが1回と異なる選手が積み上げたことの価値は極めて大きい。総合を狙うわけではないので、チーム力というよりは、個人の力が大きく、これら選手たちは今後ほかチームからのオファーがあるかもしれない。特にカストリーリョは23才、ベラーデは26才、とまだ若く、もしかしたら来シーズン以降この二人の姿をほかのチームで見かけることになるかもしれない。
H.Moulinette