昨シーズンオフ引退の名選手たち:バルベルデが引退、通算133勝の偉大なオールラウンダーは最後のブエルタでも総合13位、歴史上4位にランクで伝説に!デュムランやニーバリのグランツール覇者も引退
長年にわたってロードレース界を牽引してきたアレハンドロ・バルベルデが2022年で遂に引退をした。2年間の出場停止期間を除き実質20年間の選手生活で、コンスタントに勝利を積み重ね続け、5度の年間王者、世界選手権で金メダル1個、銀メダル2個、銅メダル4個の史上最多の7つのメダルを獲得した。さらにはグランツールではブエルタ・ア・エスパーニャでの総合優勝を筆頭に31度の出走で26度の完走、そのうち2位3回、3位5回を含む20度のトップ10フィニッシュを果たした。ブエルタに至っては16回の出場で今年の総合13位が最低の成績だというのだからいかに安定して総合上位争いをし続けいるのかがわかる。
さらには主要なステージレースでは、パリ~ニースで2位と3位各1回、ヴォルタ・ア・カタルーニャで総合優勝3回に2位が1回、ツアー・オブ・バスクカントリーで総合優勝1回、2位1回、ツール・ド・ロマンディで3位1回、クリテリウム・ド・ドーフィネで総合優勝2回を挙げている。またワンデイのクラシックでもリエージュ・バストーニュ・リエージュで優勝4回、2位2回、3位1回、ジロ・デ・ロンバルディアで2位3回、ストラーデ・ビアンケで2位1回、3位2回、アムステルゴールドレースで2位2回、3位1回、ラ・フレッシュ・ワロンヌで優勝5回、2位3回、3位1回、クラシカ・サン・セバスチャンで優勝2回、2位1回、3位3回、ミラノ~トリノで2位1回、3位1回という記録を残している。
ロード戦国時代と言われ、機材の進化が著しいこの20年間を生き抜いただけでなく、通算133勝という他の追随を許さない勝利数を積み重ね続けた。とにかく満遍なく毎年のように結果を残し続ける選手であり、チームとしてはポイントを確実に獲得してくれる有能な選手であり、熱くなることがなく、淡々黙々と走り続ける職人気質な選手であったと言えるだろう。まだまだ結果を残せるだけの実力がありながら、後進にポジションを譲るために引退を決断したが、正直まだまだ現役で走る姿を見たかっったファンも多いだろう。
スプリントでも速く、ヒルクライムも得意、TTも得意でワンデイのクラシックレースから1週間程度のステージレース、3週間のグランツールのどれでも結果を残せるというオールラウンドぶりは、近年稀にみる存在だった。歴代のサイクリストのポイントランキングがあるが、そこでは伝説の名選手エディー・メルクス、ショーン・ケリー、ジーノ・バルタリの3名に次いで歴史上4位にランクされており、さらには同じく伝説のフランチェスコ・モゼールや、ジャック・アンクティルらがそのあとに続くのだから、いかにバルベルデという選手が意外な選手であったかがよくわかる。
そしてもう一人の引退した大物がヴィンチェンツォ・ニーバリだ。17年間の選手生活で、ツール・ド・フランス(2014)、ジロ・デ・イタリア(2013,2016)、ブエルタ・ア・エスパーニャ(2010)の3大ツール全てを制した数少ない選手であり、ステージレースのティレーノ・アドリアティコで2度の総合優勝、クラシックのジロ・デ・ロンバルディア、ミラノ・サンレモも制すなど、バルベルデ同様にオールラウンダーな活躍を見せた。2019年にトレック・セガフレドへ移籍してからは成績が伸び悩みはしたが、シャークの愛称で親しまれた男は最後まで攻撃的な走りで沿道の観衆を沸かせ続けた。
更にグランツール覇者のトム・デュムランも引退した。TTスペシャリストではあったが、グランツールでも頭角を現すと、ブエルタ・ア・エスパーニャでは総合6位、ツール・ド・フラでンスは総合2位と7位、ジロ・デ・イタリアでは総合優勝と2位、さらに主要ステージレースでは6度のトップ10フィニッシュ、さらにはジロを制し絶頂期だった2017年にはストラーデ・ビアンケ5位、クラシカ・サン・セバスチャンで4位とクラシックでも結果を残した。同年はチームTTと個人TTで世界選手権2冠も達成して見せた。しかし絶頂期は長く続かず、次第に勝利から遠ざかると、32歳の若さで引退を決断した。
世界最高峰のグランツールを制した3人は、それぞれ一時代を築いたと言える猛者、そして去り際もまたそれぞれさっぱりと選手生活に見切りをつけるあたり、大物感が漂っている。更には同じくグランツールを制したリッチー・ポート、クラシック覇者のフィリップ・ジルベール、ニキ・テルプストラ、ソニー・コルブレッリらも引退を決断した。健康的な理由から力の衰えまで理由はそれぞれだが、激しく世代交代が進む昨今のロードレースシーン、20代前半の選手たちの台頭は、中堅、ベテランたちに引導を渡すには十分、すがすがしい気分で元王者たちは笑顔で引退を決めた。ニーバリは2023年度、すでに立ち上がったチームで監督を務めており、これからもレースシーンに携わっていくようだ。その他元選手たちもいろいろな形で自転車界に携わっていく予定であり、今度は新たなレジェンドを育てていってくれるだろう。
H.Moulinette