2人の名選手の突然の死、ロードを引退したばかりの最強おやじ51歳のレベリンがひき逃げで事故死、逃げも得意としたウエストラが40歳で突然死、18歳有力新人女子選手が事故死
年末年始、残念なニュースが続いた。レースシーンを盛り上げてきた元トップ選手たちの突然の死に多くのファンが涙した。そして先日はこれからだった若い才能もその機会を永遠に失ってしまった。
まずは10月に現役を引退したばかりの51歳の戦うおやじ、ダビデ・レベリンが引退直後のトレーニング中に、大型トラックによるひき逃げにあい命を落とした。ロードは引退したが、ロード引退を発表した10月にはグラベルの世界選手権に出場、今後はグラベル選手として現役を続ける意向を示していた。事故現場はイタリアだったが、ドイツのナンバープレートを付けたボルボのトラックがレベリンを撥ね現場から立ち去るのが目撃されており、犯人はその後逮捕された。容疑者は過去に飲酒運転や複数回人身事故を起こしており、今回も現場から逃げており、悪質極まりない。これからまだ更なる活躍を我々に見せてくれると思われた中年の星の命は、あまりにも儚く奪われてしまった。
レベリンは50代を超えても10代や20代の選手たちを山で、スプリントで撃破し続け、その衰えぬ闘争心は若手のお手本だった。1992年にプロロード選手となると2022年まで、なんと驚きの30年間にわたり現役を続けた。ワンデイレースやクラシックを得意としており、UCIワールドツアーとUCIプロツアーでは50回以上のトップ10フィニッシュとフレッシュ・ワロンヌ、アムステル・ゴールドレース、リエージュ・バストーニュ・リエージュなどで通算12勝を挙げた。更にはステージレースでもティレーノ・アドリアティコとパリ~ニースで総合優勝を挙げている。2009年にドーピングで出場停止と一部成績抹消処分となったが、その後2011年に現場復帰をすると、ワールドツアーチームには加入できなかったが、プロコンチネンタル、コンチネンタルチームを渡り歩きながら結果を積み重ねていった。そして50歳になった2021年になってもツアー・オブ・ルーマニアで総合7位などステージレースで3度の総合10入りを果たすなど、衰えを感じさせなった。
そして先月、リウーブ・ウエストラが40歳で亡くなった。34歳で現役を引退したが、力強い走りで何度となく逃げに乗るアタッカーは、ヴァカンソレイユとアスタナ所属時に強烈なインパクトを残した。26歳でプロ入りの遅咲きながら、8年間の現役で13勝と結果を残した。パリ~ニース、クリテリウム・ド・ドーフィネ、ヴォルタ・ア・カタルーニャといった主要ステージレースの山頂勝利、独走勝利を挙げるなど、記憶の残る勝利を挙げてきた。更にはヴィンチェンツォ・ニーバリのアシストとして献身的な走るを披露するなど、言葉少ない寡黙な男はどこまでもロードレースという競技に対してストイックであり続けた。その反動か、引退後はうつ病に苦しむなどしたが、実業家としてその歩みを進めていた。
さらに先日、今シーズントップカテゴリーで決まっていた有力女子選手のエステラ・ドミンゲスがトレーニング中にひき逃げにあい命を落とした。現役の大学生でありながら、23歳以下のシクロクロスとロードの両方で結果を残しており、今シーズンからトップカテゴリーへの昇格を果たし、参戦間近での悲運となった。父親はジロ・デ・イタリアでのステージ優勝経験もある元トップ選手でもあり、期待されていただけにスペインレース界は悲しみにくれている。
記憶に残る選手たち、ロードレース界に語り継がれるレジェンドたちの記憶はいつまでも色褪せないだろう。そしてストーリーを紡ぐことなく失われた可能性の芽の早すぎる死は、ただただ残念でならない。
H.Moulinette