オールドMTBを楽しむイベントが開催、静岡の御殿場に時代を彩った名車たちが集合!ライドイベントからスワップミートまで、MTBを髄まで楽しむ遊びつくす時代が再来へ
昨今オールドMTBに改めてフォーカスが当たっている。日本のスポーツ自転車は、1980年代に到来したMTBブームに乗り大きく飛躍、大手メーカーに加え、アメリカなどのハンドメイドブランドの台頭、様々なガレージメーカーのカスタムパーツなど、遊び方が豊富で多くの支持を得た。しかしルールを守らない一部の愛好家たちにより、禁止されている林道への侵入、所かまわず野山を駆け抜ける事で貴重な動植物の生息地を荒らした問題などがフォーカスされると、次第にMTB人気は収束して行き、その地位をロードバイクへと奪われていった。
あの時代のMTBはATBとも呼ばれ、オール・テライン・バイクとして、山などオフロードのみならず、どんな道でも走れる自転車として親しまれていた。今見ても「個性」溢れる魅力的なスタイルやカラーリングは、多くのファンを生み出し、一台センセーションを巻き起こした。 日本のミヤタを駆り第一回世界選手権を制したグレッグ・ヘルボルド、第一回MTBトライアル世界チャンピオンとなった柳原康弘などのカリスマが人気を誇り、誰もが自分だけのMTBを求めカスタムパーツでの改造などに明け暮れた。
そしてそんなMTB、ATBは今でも一部の人々を魅了してやまない。かくいう筆者もオールドMTB愛好家でもあるが、その時代を知らないサイクリストたちからは、「そんな古い型遅れな自転車をいつまでも乗り回して」と言われ続けてきた。しかしここ数年は、若い世代のサイクリストなどから「かっこいいですね、どこのブランドですか?」と好奇の眼差しが向けられるようになってきているのを感じている。50年以上のビンテージとはいかないまでも、40年近く前のものまであるオールドMTBの世界は、グラベルバイクの台頭とともに、いま国内外で改めて注目を浴びている。
そんなオールドMTBを楽しむイベントが、11月19日に静岡県御殿場市で行われた。多くの参加者たちが、自慢のバイクで終結、当時の主流だった量産品の名車から、ハンドメイドの王道、ショップオリジナルブランドやレア車まで多くの懐かしい車両が集結した。ライドイベントのみならずスワップミートなども行われ、多くの参加者がのんびりとした時間を最高の景色の中で楽しんだ。
ロード全盛期になり、サイクルジャージを着ることが正装のようになっているが、そもそもMTBはレース志向が薄く、ファッションも極めて自由だったこともあり、今回のイベントでもそれぞれが好きな格好でライドイベントなどを楽しんだ。MTBは当時から日常の足としても多く使われてきており、今でもその多くはアーバンクルーザー的な「カッコよさ」のツールとしても受け継がれている。そんなMTBが今でも愛され続けるのは決してただの懐古主義ではなく、よいものは時代を超えても使われ続けるという事を示している。さらには「古きは新しい」、つまり時代を超えてきたものは一周回って新しい文化となりうるものなのだという事を改めて感じさせてくれる。この「自由さ」全てがMTBの醍醐味でもあり、MTB文化の本質の一つともいえるのだ。
日本では今では下火になってしまったMTBだが、グラベルバイクの台頭とともに、海外ではオールドMTBが再び注目を浴びている。それは最近の海外のグラベルバイクが、フラットバーなどが増え、1980年代のMTBなのではと思えるほどに当時のXCMTB寄りであることが挙げられる。更には多くの動画サイトなどで1980‐90年代のMTBのレストアや最新のコンポでグラベルに改造が行われていたりする。そう、世界で再び脚光を浴びつつある第一次黄金期MTB達は、いつまでたっても色褪せることがないのだ。そしてその時代を知らなかった人たちにもその面白さ、楽しさは今間違いなく波及し始めている。
昔持っていた、懐かしい、そんなことからもう一度オールドMTBの世界へと足を踏み入れてみてはいかがだろう。そしてオールドMTBを知らなかった人は、ぜひともその深みへと足を進めてみて欲しい。
そしてあえて言おう、オールドMTBの世界へようこそ。
H.Moulinette