ハンドメイドの世界への誘い:ショップとビルダーがコラボして生み出す新しい町乗りハンドメイドバイク、HOMIE332というストリートクルーザー、競技車両ではないハンドメイド新時代の遊び方
コロナの影響もあったのかはわからないが、カーボン一辺倒だったマーケットが、今変わり始めている。シマノのパーツ供給がリードタイム600日という各メーカーに多大な影響を与えていることも追い風となったか、昨今ハンドメイドのフレームへの関心、注文が増加している。特にハンドメイドのビルダーが多い日本では、長きにわたり競輪という競技が下支えはしてきたが、ハンドメイドビルダー達は一部を除いてどちらかと言えば日陰の存在だった。
数多くのハンドメイドビルダーがいるが、その多くは個人経営であり、受注から製作、経理、配送まですべてを独りで行っていることも多い。製作の時間を要する職人の仕事に置いて、これはかなりのマイナスを意味する。製作だけに集中できないことは、時には大きなストレスともなる。
1980年代、90年代、スポーツサイクルショップが多く存在した時代、各ショップはこぞってオリジナルブランドを立ち上げた。そしてその多くが各地のビルダーに小ロットでの製造を依頼していたのだ。これは多くのビルダーにとって貴重な収入源となったともに、ショップにとっても、そしてマーケット全体にとっても活性化に繋がっていた。
しかし時代は流れ、カーボン製品などの量産工業製品が主流となり、いつの間にかショップオリジナルブランドは絶滅危惧種となり、ハンドメイドビルダーも競輪の認定ビルダー以外はほとんど生き残れない時代へとなっていった。
それでも脈々と受け継がれたジャパンハンドメイド、日本の職人の技は今再び浮上の一途にある。その一つとして、東京のイーストリバーサイクルズと同じく東京のHELAVNA CYCLES(ヘラブナサイクルズ)がタッグを組み、ハンドメイドサイクル展2022でデビューを果たしたのがHOMIE332(ホーミー332)、モデル名Machiba SS(single speed)だ。妥協なきこだわりを詰め込みながらも、フルオーダーよりも手軽に注文できる事で、より多くの人にハンドメイドを体感してもらうための一台は、ヘラブナサイクルが提唱する「究極のアーバングラインダー」の一つの形であり、最強のストリートクルーザーと言えるだろう。
競技思考の流れが強かったサイクルシーンに、グラベルロードという新ジャンルが登場したことで、ランドナーのような旅する自転車から、よりシティースタイルにあった自転車までに注目が集まるようになった。普段のチョイ乗りには過剰な競技車両よりも、頑丈で気軽に楽しめる一台、ファッションやスタイルとしての自転車としての遊びの提案がそこには込められている。
HOMIE332は割り切った仕様になっており、120ミリ幅のトラックエンドを採用、悪路まで走行できることを念頭に700C×40C のタイヤが使え、泥除けやキャリアも付けらえるようになっている。フレームはラグレスで仕上げ、そしてなんといっても珍しいのが、ヘラブナサイクルズがこだわり続けている削り出しのオリジナルブレーキ台座などの小物だ。先出のトラックエンドにも削り出しの台座が取り付けられているなど、手仕事に徹底してこだわっている。
さらにはHOMIE332のためだけにオリジナルのTig溶接で作られた「カモメハンドル」もセットされている。トータルで見ると、カスタムの幅を多分に持たせてあり、自分で自転車をいじりたい人には最高のベースとなるだろう。
長く楽しむことができる、カスタムがしやすい、遊びやすい、そんなスチールフレームへの回帰は、必然だったように思える。しかしHOMIE332は決してスポーツサイクル全盛期だった1980年代への懐古主義ではない、これはスチール新時代の新しい「遊びの形」なのだ。
H.Moulinette