UCIは4月3日までのレースをすべて停止、春のクラシックは軒並み開催の危機、ヨーロッパではすでに5月のレースまでキャンセル決定も、選手らは「感染リスクを避けるための中止は賢明な判断」

世界中で猛威を振るっているコロナウイルスの影響はいまだに拡大の一途をたどっており、感染地域の広がりとともに感染者と死者数が増え、スポーツ界にも大きなダメージをもたらしている。屋内やスタジアム競技ではないロードレースではあるが、沿道の慣習やゴール前には多くの人が集まることから、レースの中止や延期が相次いできた。そしてここへきてUCIが4月3日までのレース全てのキャンセルを決定、また主催者判断での中止判断も拡大しており、5月に行われるレースも続々とキャンセル、延期が発表されている。延期というのもスケジュール的、興行的にも難しいこともあり、「延期は現実的にはキャンセルに等しい」と関係者は一様にうなだれた。
UCIの判断よりも早く各主催者と各チームが積極的に4月一杯の中止や出場辞退を決定しており、UCIとしてもレースを開催する意味をすでに失っている。UCIが後手に回った感はあるが、それでも世界各国に対して4月3日までのレースをまずは暫定的に中止要請をしたことは賢明な判断と言えるだろう。
グレッグ・ヴァン・アーヴェルマート(CCC)も「今はレースよりも一般の人の健康が優先されるべき。」とコメントするなど、選手たちもレース中止に対して「賢明な判断であり仕方がないこと」と受け止めているようだ。
新たに延期・中止が決まったのは4月20日から24日までのツアー・オブ・アルプス、4月28日から5月3日のツール・ド・ロマンディだ。多くのチームが不参加を表明したことで、レースが成立しないと判断、早々と決断をした形となっている。またスペインも緊急事態宣言をしたことにより、政府により主要レースが延期となっている。4月6日から11日まで行われる予定だったバスク一周レースも、「延期」とはしているが、今後の予定に関しては全くの未定としている。
「残念だが現状のパンデミックの状況は看過できない段階にきている。一般人の健康と安全が最優先されるべきであり、レースを開催することを議論する状況ではない。一日も早いレース再開の為にも、最善を尽くして感染を避ける対策に専念すべきだ。レース再開は状況が安全と確認されたその後にUCIと検討をしていく。」バスク一周の主催者はそうコメントを出した。
ツール・ド・ロマンディに関しては「現段階から来シーズンのレースに向けて準備をしていく」とコメントを出した。今年通過予定だったコースや街をそのまま来シーズンへスライドする。」としている。
またパリ~ルーベやフランダースクラシックも開催は難しいとの見解をUCIと主催者のASOは示唆している。「ほかのスポーツ同様に自転車レースも開催は困難だろう。現状を見渡して、4月に状況が好転するとは考えにくい。これは至極当たり前の見解であり、残念ながら春先のクラシックは行えないだろう。」非公式ながらもASOのプルドム会長は語った。
またUCIはIOC(国際オリンピック連盟)に対して、まだ多くの代表選考レースまたは該当レースが各国で行われていないMTB、BMX、パラサイクリングに関して、その決定までの期間の延長を申し入れている。「現段階で入国規制もあり、選手たちが選考レースに出場できていない状況だ。この状況での選手選考は不可能だ。」としており、安全が確認されるまで代表決定ができないことを訴えている。
選手たちにとっての生業でもあるレースが行えない事への葛藤がある中でも、その選手たちが「一般の人たちが感染しないことが最優先されるべき」と口にしてくれていることに対して敬意を表したいと思う。
H.Moulinette