初めてのオーダーフレームをオーダーしてみよう!オーダー編:ハードルはそんなに高くない!ビルダーと話をして、どんなフレームが欲しいのかを伝えジオメトリー、パイプ、カラーを決定しよう!
初めてのフレームのオーダー、それは限りなくハードルが高いように思えるものだ。しかし幸いなことに日本は競輪という競技があったことで、世界でもまれに見るビルダー大国でもあるのだ。しかし実情は国内のユーザーは西洋物のブランド(量産品)崇拝があまりにも強く、そんなにビルダーがいる事さえ知らないのが実情だ。しかし海外から見れば日本はハンドメイドフレーム大国であり、憧れの地でもある。ならばしっかりと自分たちの国が誇るそんなハンドメイドビルダーのフレームを体験しなければ損というもの、まずは一本注文してみよう!
ずっと憧れていたあのフレームビルダーに作ってもらおう!それも一つの選択肢だが、まず分からなければ地元にビルダーがいるか調べてみるのがいいだろう。国内にはビルダーが点在しており地域から選ぶというのは王道と言えるだろう。フレームの価格は総じて大陸性のカーボンフレームより安いことが多く、10万前後から20万前後がほとんどだ。ハンドメイドなのになぜ?という思いを強く持つこともあるが、そこはビルダーが職人肌な方が多く、ストイックなまでにネームバリュー価格を上乗せすることを嫌うからだ。要する時間と手間を考えれば、その価格で大丈夫なの?と思うことも多々ある。しかしだからと言ってクオリティーが低いなどということは一切ない。ハンドメイドのメイド・イン・ジャパンのフレームがリーズナブルな価格で手に入るというのはとてもラッキーなことなのだ!
気に入ったビルダーが見つかったら、まずは電話やメールで訪れても可能な日を確認しよう。突然訪れても歓迎してくれるビルダーも多いが、仕事中に急な来客で手を休めなければならないのはあなたも嫌ではないだろうか。できる限り事前連絡をすることが大人のマナーであり、職人の仕事に対する敬意でもある。そうして予約を入れて、まずはビルダーの仕事を見せてもらい、自分が望むフレームを託したいかを考えてみよう。しっかりと時間をかけるもよし、また己の直感を信じるもよし、まずは自分のフィーリングにあったビルダーを見つけることをお勧めする。よく会話をしてくれるビルダーもいれば、寡黙でストイックな人もいる。ビルダー探しもまた楽しみの一つなのだ。
今回オーダーを受けてくれるのは大阪で昨年工房をオープンしたMIZUSHIMAだ。元競輪選手として第一線級で活躍したのち、元選手だからこそわかる勝負できるフレームづくりを信条にスタートした工房だ。今回作ってもらうのは、レース用の敏捷性を持ちながら、より軽量で、貧脚な筆者でも早くなったような気になれるフレームだ。MIZUSHIMAのクリテリウムなどの競技用車種であるKeirin Proをベースに、今まで乗ってきているフレームのジオメトリーと用途を伝え、普段どのようなギア設定で走っているか、またライディングフォームなどを見てもらった。それによってビルダーが適切なパイプ、アングルなどを決めていくのだ。もちろんこちらからパイプを指定することもできる。その場合、使用パイプに合わせてジオメトリーを微調整してくれるので心配はない。またパイプによってはアップチャージとなることも覚えておこう。
普段既存のストックフレームにしか乗ったことのない人の場合は、ビルダーによってはそのライディングフォームやパーツの構成によって大きくジオメトリーが変化することが在るが、大丈夫、余計な心配は無用だ。プロはプロ、きちんとその人に合わせたジオメトリーを提案してくれる。もちろんそのビルダーごとに若干の傾向はあるので、ビルダーによっては別のビルダーとは異なるジオメトリーを提案してくることもあるだろう。それでもストックジオメトリ―にパーツ構成で無理やり体の方を合わせて乗るよりは遥かに体と乗り方の適したジオメトリーを提案してくれるだろう。
一番肝心なのはビルダーとの信頼関係、きちんと対話をして、普段走るコースの話であったり、様々な情報をビルダーに与えてあげることで、ジオメトリーはより完成されたものへとなっていく。
フレームやジオメトリーが決まったら、次はカラーリングだ。これは事前に決めてしまうケースもあれば、フレームが仕上がってから決めることもある。フレームが組みあがるまで猶予がある場合が多いので、じっくりとイメージを作っていくのもまた楽しみの一つだろう。
通常単色塗り以外の塗装は、オプションでのアップチャージとなる。個性あるデザインももちろん可能なので、ビルダーと相談するといいだろう。大多数のビルダーは、塗装を専門の会社に依頼しており、色などは例えばRALカラーコードなどで指定する方が、より正確に予想通りの色で仕上がってくるだろう。また工房によっては、塗装まで一貫して行う工房もあり、その場合はより綿密な対応も可能だ。
今回はクロモリらしいラグフレームで発注、なるべく軽量にするためにパイプはタンゲのアルティメイトとなった。0.65/0.35/0.65ミリのダブルバテッド管であり、最薄部0.35ミリという超軽量チューブであり、焼き入れ処理が施されている。そしてカラーはフレームが作られているうちに相談した。通常文字色は決まっていることが多いので、基本はフレームのベースカラーを選択し、差し色などがある場合はその差し色などを指定する形となる。今回はあまり見かけない色にしたかったので、濃いめのマットゴールドをベースカラーに指定してみた。その最終的な仕上がりは実際に注文が完成した姿で紹介しようと思う。
ここまでが注文の第一段階だ。話し合いからジオメトリーやパイプの選択が決まり、そして色を決める。これが一つの形となり、自分だけのフレームが出来上がるのだ。他の人とは違う自分だけのフレーム、これこそ日本のモノづくりを手にすることができるという究極の贅沢だ。これもサイクリングの醍醐味だ!
H.Moulinette