なぜツール・ド・フランスは人々に愛されるのか?キャラバンカーに経済効果、様々な思惑はすべてが盛り上がりへの為の序章に

もうすぐツール・ド・フランスの季節がやってくる。選手たちにとってはチーム内の出場枠を巡る最後のバトルが繰り広げられる中、一方で観戦する側からすればただひたすらに心待ちにカウントダウンをする、子供のころのクリスマスのようなものだ。
日本でツール・ド・フランスは自転車の最高峰の競技として愛されている。しかし開催地のフランスでは、これは歴史ある”お祭り”なのだ。自転車競技としての100年以上にわたる歴史もさることながら、コース沿道の自治体にとっては大勢の人が訪れる”お祭り騒ぎ”であり稼ぎ時でもある。さらには多くの人がヘリコプターからの映像で目にするパフォーマンスも見どころの一つであり、地元のアピールに一役買っている。レースそっちのけでヘリコプターにアピールする人々にとっても、これはれっきとした”お祭り”なのだ。
ひとたびレースになれば選手たちが通る前には数百台のキャラバン隊が通る。大会のスポンサー企業達は、この時ばかりは大盤振る舞いで大量の試供品や応援グッズ、さらには実際の販売商品までを沿道の観客に投げるのだ。ただ一瞬で通り過ぎてしまう選手たちを待つ間には、数時間にわたりこんな”イベント”が繰り広げられるのだ。
しかしもちろんこれらだけではない。プロ選手の中でも最高峰の選手たちがこの大会を目指し、世代最強の豪華メンバーが集うのがこの大会なのだ。野球で言えばオールスター戦といったところなのだ。憧れの選手たちを間近に見れる大会であり、また夏休みであることも手伝い、多くの人たちがレースをキャンピングカーなどでついて回ることで知られている。英雄と評される選手たちを間近で見れる、まるでアイドルの追っかけのようなものでもあるのだ。
そしてこのレースが世界中に配信されるということもお祭り騒ぎには拍車をかけている。地元が世界的に映る、名前が流れることは大きな意味を持つ。実際に訪れる観客による経済効果に加え、さらにはPRも出来てしまうという一石二鳥となれば、なんとしてでも地元は盛り上がろうとするのだ。ましてやそれが由緒ある大会、さらには国技ともいえる競技であることで、全ては純粋に盛り上がるために準備されているのだ。その為道路や様々なところが自転車優先となるのもまたツール開催国ならではだ。
そしてそれらが積み重なった先にあるのが、開催国であるフランスとしての誇りだ。ツール・ド・フランスは誰もが愛する国家的事業でもあり、最優先文化になっているのだ。
日本からすれば羨ましい側面も多いが、やはりそれは歴史がなせる業でもある。同じことをこの国度求めるのは無理だろう。ならばまずはツールを楽しもうではないか。世界最高峰の選手達が競演するツール・ド・フランス、今年ももうすぐそのお祭り騒ぎの季節がやってくる。
H.Moulinette