世界的に広がる女子レース拡大の行方:UCIが規模拡大を宣言、ヨーロッパなどで広がる競技の輪拡大の流れ、その流れと問題、そして日本から海外目指す日本女子チーム発足も

日本ではまだまだ自転車レースというスポーツは男性のものだというイメージが強い。確かに與那嶺恵理(アレ・チッポリーニ)と萩原麻由子(エネイクサイクリング)の二人が世界で活躍しているが、国内の女子レースを見れば、選手数は僅か、正直20人も選手が集まらないレースさえ多数あるのが実情だ。

©HighAmbition2020
そんな中、世界は女子レースの本格的に力を入れている。まずはUCI(世界自転車競技連盟)が積極的に女子レースを後押ししたことで、各地でレースがより本格化、男子レースを打ち切っても女子レースに絞る主催者も出始めたほどだ。女子チームの設立も増えており、間違いなく女子レースというものが一つの流れとなっている。また実際海外女子レースのレベルは高く、男子レース顔負けのド迫力スプリント、クライマーバトルなどが展開される。
では問題点はないのだろうか?スポンサースポーツであるロードレースにとって長年の問題である放映権の問題が女子レースでも問題となっている。いくらUCIが力を入れているとはいえ、やはり男子レースに比べて視聴率は低い。そのことで放映をしないというケースも当然あるわけで、そうなれば主催者としても何の旨味もないわけである。当然そうなれば女子レースの打ち切りを決める主催者もいる。

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女子レースは海外で確実にその輪を広げているものの、男子と同じというわけにはいかない。まずは問題点として生理的なものがある。男子選手がよく道路わきでトイレタイムをしているのを見かけることがあるが、女子ではそうはいかない。そのことからもレース距離は短めに設定されている。しかしやはり状況によってはやはりどうしても我慢できない場合がある。海外のレースでは、人気の少ないところを選んでというケースが稀に見かけられる。ただしどんどん人気が出て放映が一般的になれば、そこへの配慮というものが間違いなく必要となってくるのだ。
日本ではどうだろう。若手女子選手の中でも梶原悠未(筑波大学)がアジア選手権などで活躍するなど一見若手の育成がうまくいっているように見える。ただし実情は、選手層が薄い中でたまたま抜きんでて強い選手がいる、というのが実情だ。先にも述べた通り、ハイレベルな女子レースも少なく、そして女子選手層の薄さは顕著で、男子以上にテコ入れが必要なのだが、現状は與那嶺恵理が過去に代表監督などの対応に関して苦言を述べただけでなく、今現在日本代表の選考基準に関してスポーツ仲裁裁判所(CAS)に訴えを起こして様に、てこ入れ以前に解決しなければならない問題が多い。訴えの内容は今回ここでは触れないが、女子選手の扱いがまだまだ男子と平等ではないというのは様々なシーンで感ずることがあり、この辺りの改善も今後間違いなく求められることとなるだろう。

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そんな中でいま日本国内で初のUCI女子プロチームを立ち上げようという動きがある。日本登録ですでに海外でも実績のある男子のインタープロサイクリングアカデミーとも連携しており、日本を拠点としながら海外で日本人選手に実績を積ませる為、東京五輪の日本女子枠をもう一つ獲得するためのチームとして、High Ambition 2020jp(ハイ・アンビション2020jp)が動き出した。今シーズンはまだ試験的要素も含んではいるが、すでに2014年に男子ワールドツアーチームのMTNキュベカ(現ディメンション・データ)監督も務めたマネル・ラカンブラ氏が就任、日本国内の女子チームライブガーデンビチステンレとも提携するとともに、スポット加入という形でイタリアのUCIチーム、ユーロターゲットビアンキに所属するジョバンニ・フィダンツァとアナ・コヴリックがチームメンバーとして参戦し、すでに新チームとしてUCIレースでも結果を出している。このプロジェクトがうまくいけば伸び悩む日本男子よりも早く世界で活躍する日本女子選手を輩出することになる可能性は高い。
他のスポーツでは多くの日本人選手が活躍しているだけに、世界で活躍する日本人選手をもっと見たいし応援したいと思う。サイクリングタイムはスポンサーしているインタープロサイクリングアカデミー同様に、ハイ・アンビション2020jpを応援していきたいと思う。
H.Moulinette