日本のレースシーンが変わる、現状のJプロツアーで海外で通用する選手が育たないという状況からの脱却を目指す為に新シリーズが2021年からスタート、さらにはeSports的シリーズも

果たして日本のレース界は変われるのか?そのような問いは投げ続けられてきた。現状のシステムのままでは「生ぬるく」世界に通用する人材は育たないということがわかっていながらも、なかなかそれを変える一歩を歩めなかったのが日本のレース界だ。Jプロツアーを走る選手たちを「プロ」とはいうものの、走るためだけに給与が払われる本当のプロは少なく、実業団やハイエンドアマチュアというのが現実だった。概念で言えば実業団もプロではなくアマチュアなのである。そして同時期に世界を目指したオーストラリアにも大きく水をあけられ、悔しい思いをしてきたが、古き体制と体質を変えられない国内レース界に対して、誰も強く意見をしたりメスを入れることが出来なかった。
しかしやはり時間がたち危機感が募り、必要に迫られた変化が一つ形となった。UCIが改革を進めたように、日本のレース界にもようやくの改革の波が訪れることなった。まずはレースのシステムが大幅な変更となる。サッカーのJ リーグのようにリーグ制となり、1部から3部までがプロフェッショナルカテゴリーとなる。各チームは本拠地となるホームタウンと一体化したクラブづくりを目指すこととなる。その下には4部から8部のエリートカテゴリーとなり、ここは個人の成績に応じてカテゴリーが昇降格することとなる。さらにその下にホビーレーサーの為のオープンカテゴリーとなる。
プレスリリースより
●プロフェッショナルカテゴリー(現在のJプロツアーに相当)
・1部リーグから3部リーグまでを「プロフェッショナルカテゴリー」と呼びます。
・クラブライセンス制度を採用し、経営状況や保有選手人数、契約形態によって所属リーグを決定します。
・シーズンの結果により、クラブの昇降格が決定します。
・映像配信、有料観戦シートの設置などを行い、注目度の高いレースを展開します。
●エリートカテゴリー(現在のJエリートツアー/Jフェミニンツアー/Jユースツアーに相当)
・4部リーグから8部リーグまでを「エリートカテゴリー」と呼びます。
・JBCFへの加盟登録を必須とし、個人ランクを設定します。
・前期/後期の2期制を採用し、レース順位に応じて付与する累積ポイントによって、各期末に個人ランクが決定します。
・決定した個人ランクに応じて、クラブではなく選手個人が昇降格します。
●オープンカテゴリー(現在のJチャレンジシリーズに相当)
・エンジョイサイクリストが参加可能なレース群を「オープンカテゴリー」と呼びます。
・JBCFへの加盟登録は不要で、個人ランクも設定しません。
この中で気になるのはプロフェッショナルカテゴリーに登録する各チームに問われるチーム基盤だろう。UCIがそうであるように、選手数や銀行などの補償、チーム運営費の補償、選手への給与の補償など様々な制約が予想され、それによりカテゴリーが振り分けられることになるが、果たして何チームがその条件をクリアできるかは不透明だ。日本ではスポンサースポーツが一般的ではなく、ましてやレース放送が限定的で広告宣伝効果の薄い日本の自転車レースでは、スポンサー費用に見合った対価は期待できないのが現実だ。そうなれば地域とのタイアップや、助成金、地元企業の善意に頼るしかない可能性が高い。宇都宮ブリッツェンのように成功した例もあるが、地域密着型のスポーツはどのジャンルのスポーツでも経営難が多いだけに、マイナーなスポーツである自転車レースでどこまでできるのかはかなりイバラの道のりであり未知数だろう。また条件を満たすことができないからとハードルを下げれば、結局カテゴリー形式が変わっただけに終わってしまうことからも、組織運営側のルール作りなどではかなりの難航が予想される。
この問題点の解決策の一つとされるのがインターネットでのライブ中継だ。これは今シーズンから実証実験として行われる。これにより投資価値がある、つまりスポンサーする価値があるという印象づくりを進めていくこととなる。またもう一つの柱となるのがeSportsだ。日本でも海外に遅れながらようやくeSportsが一つの競技、ビジネスとして定着していきそうな方向性にあり、ここに自転車レースも参入することで収益とプロモーションが図れるのだ。
プレスリリースより
●オンラインサイクリングアプリ「Zwift」とのコラボ
「JBCF eRacing Cycling Road Series」の開催
インターネットを通じて、複数のサイクリストがレース形式で同時にトレーニングを行うことができるオンラインサイクリングアプリ「Zwift」と共同で、「JBCF eRacing Cycling Road Series」を開催します。本開催ではオンラインイベントとオフラインイベントのそれぞれを予定しており、オンラインイベントではご自宅の端末を通して、誰でも気軽に同じレースに参加することができます。またオフラインイベントでは、片山右京理事長や今中大介副理事長をはじめとしたJBCF理事やJプロツアーのトップ選手、その他ゲストも皆様と一緒にバーチャルレースに参戦予定です。
(1)目的:自転車ロードレースのファン拡大、Zwiftをきっかけにした競技者の裾野拡大
(2)名称:JBCF eRacing Cycling Road Series
(3)その他:実施日程および詳細は今後、決定次第ご案内します。
またそれ以外にも各大学のミスキャンパスと連動した「GOGOペダルプロジェクト」なるものも行われるが、これに関しては自転車マニアの男性向きに感じる節もあり、疑問に感じるところもある。海外では女性のレースがメジャー化するなど、女性ファンの獲得が自転車業界にとっては必要な部分ではあるが、まだまだ日本の自転車界が男性中心の業界だということが感じられる。
プレスリリースより
●大学生プロジェクトチーム「キャンパスラボ」とのコラボ企画「Go! Go! ペダルラボ」
さまざまな大学のミスキャンパスで構成され、主体的に社会課題に取り組む大学生プロジェクトチーム「キャンパスラボ」と共同で、新たなファン獲得や、自転車ロードレースの魅力を伝えることを目的とした「Go! Go! ペダルラボ」を立ち上げます。2年後の新リーグを見据え、特にこれまで自転車ロードレースに触れたことのない人たちに向けて、その魅力をこれまでにない視点から発掘・発信していきます。
(1)目的:非自転車競技者(自転車ロードレースに参加したことがない人)を中心とした新規ファンの獲得
(2)内容:Jプロツアーレース会場での視察、改善提案/新規ファン獲得に向けた企画立案/ソーシャルメディアを中心としたコミュニケーション戦略の策定、実行/レース会場でのステージイベントへの出演および各種表彰時のプレゼンター
果たしてこの改革が吉と出るか凶と出るか、こればかりはやってみないとわからない。だからこそ改革は必要なのである。
H.Moulinette