ドーピンググレーのウィギンスがイベントでランス・アームストロングを”完璧なツール勝者”と称賛、UCI会長とツール覇者のG.トーマスがそれを“ふさわしくない発言”と批判、さらにはトラマドールの使用禁止を明言
TUE(治療目的例外措置)の悪用疑惑ですっかりグレーなイメージが定着したサー・ブラッドリー・ウィギンスだが、またしても物議をかもすコメントをし、UCIラパルシャン会長がそれを「ふさわしくない発言」とばっさりと切り捨てた。
ウィギンスは自らの新刊の出版イベントで、インタビューに対して自転車界の薬物汚染の中心人物となり、過去の戦歴が抹消、永久追放されたランス・アームストロングを「完璧なツール覇者」として称賛したのだ。それは、アームストロングがクラシックライダーから癌克服後にグランツールライダーになったことや、王者としての風格や振る舞いが、ツール覇者として「自分に影響を与えた格段の存在感」があるものだからだ、としている。また「別にアームストロングをかばうつもりはないよ。彼は間違えたことをしたし、それを本人も自覚している。でもそれも人生であり、その上で前へ進まねばならないんだ。でもその間違いを自転車にも乗っていない奴がどうこう言うのが腹立つんだ。僕は自分自身自転車レース界に身を置いたからこそ、自分の思ったことを信じるんだよ。」ともしており、薬物汚染をしたことを除外した部分での人物像として、アームストロングは「自転車界の英雄的象徴」であるとしたのだ。
確かに「自分が自転車のなるために影響を与えた存在」という部分に関しては理解できるが、それはあくまでも個人的なレベルにとどめておくべきことであり、その後自転車界の信頼を失墜させた王者を今更ながらにアイコニックとするのは問題があるだろう。
これに対してUCIのラパルシャン会長は即座に反応、「信じられない発言だ。とても許容できるものではない。自転車界の信頼を失墜させ、薬物汚染まみれの中心人物でもあり永久追放されたような男を賞賛するなど言語道断、ツール覇者でありオリンピック金メダリストでもある人物にあるまじき発言だ。」と怒りをにじませた。
さらには今年度のツール覇者であり、来シーズンの連覇を視野に入れるゲラント・トーマス(チームスカイ)は、元チームメイトのアームストロング擁護に対して「自分の本を売るための姑息な手段」とばっさりと切り捨てた。「自分がもう現役じゃないから好き勝手言えるんだよ。その結果として僕らがどういう目で見られるのかというのを考えていない。」
伯爵の称号まで授与されたサー・ブラッドリー・ウィギンス、自らの現役時代のTUE(治療目的例外措置)の悪用での潔白をいまだに晴らそうとしない元王者の”らしくない振る舞い”はレース界にとっては百害あって一利なし、これからのレース界の為に「害悪」にしかならない行動は慎んでほしいものだ。
H.Moulinette