新UCI体制がメカニカルドーピング根絶へX線撮影機を導入へ!磁気測定器など様々な機材を次々導入予定でメカニカルドーピング撲滅へ本腰
かなりの期待を集め新会長となり、その公約として掲げていたメカニカルドーピング検査強化がいよいよ見えてきた。不評だった今までの検査を見直し、指摘されていたさらに強固な検査体制を準備、ドーピングで腐敗したUCI体制が薬物ドーピング汚染蔓延を許した苦い過去と同じ轍を踏むまいとして、本格的な”蔓延”を事前に食い止めるための一手としてX線検査を導入することを発表した。
なかなかに巧妙化された手口のため、ようやく前UCI体制下で本格的に発覚、そして検査が始まったのがメカニカルドーピングだった。モーターや磁石などをフレーム内に仕込むという違反行為だったが、UCIが用意した検査体制は不評を極め、フランスのテレビ局が実際にレース中に撮影した赤外線での映像をドキュメンタリーで流し、その検査が”ざる”であることを指摘した。そして各チームや選手会などがさらに厳しい検査を要求していたのだ。
今回ラパルシャン新会長は、「信頼回復」という言葉を掲げ本格的な検査体制の見直しを行い、「絶対にメカニカルドーピングの横行を許さない」という強いメッセージを込めて新たな検査体制を公表した。「自転車は素晴らしいスポーツだ。そして見る側に、それが”人間の力”で行われているのだということがはっきりとしなければならない。技術革新は当然負の側面もある。しかしメカニカルドーピングは薬物ドーピングに比べ対応がしやすいのだ。昨今SNSなどで疑問を呈すような投稿をされることが増えてきた。それもこれもきちんとした検査体制がなかったことによるものだ。我々は自転車ファンに疑うことなくレースを見れる環境を整えなければならない。その為にはUCIが力を発揮せねばならないのだ。我々にはその責任があり、その責任を果たすつもりだ。」
飽くなき不正とのいたちごっこ、自らの公約を果たすためにラパルシャンは当選と同時に元選手であったジャン・クリストフ・ペローをUCI機材担当に任命、そしてX線装置の開発と導入を決定したのだ。更にはアメリカ自転車連盟のメンバーもUCIマネージメント委員に任命され、メカニカルドーピング根絶を力強く叫んでいる。「蔓延して自転車レース界の信頼が傷つけられる前に、絶対に防がねばならないんだよ。今回の検査体制はかなり厳しいものとなっている。我々は自信を持っているんだ。やれるもんならやってみろ、受けてたという心構えだよ。」
今までの経緯から、過去にUCIが腐敗し薬物ドーピングに加担していた事実があることから、UCIに任せること自体に不安があるとの声もあることから、全開のタブレット検査機のように独自に開発するのではなく、航空産業や軍事産業での経験のあるローザンヌのVJテクノロジーに外注をして、X線検査機付きの検査車両を開発した。またその精度は中立の第三者機関によって保障されているとしている。これによりロードでは年間のUCIワールドツアーのおよそ半数のレースでの検査が可能となり、またシクロクロスやトラック競技などでも検査が強化される予定だ。
しかしそれだけでは不十分と、UCIは原子力産業にも携わっているCEAテックにも依頼、磁気測定器を試作している。こちらはまだ開発段階とはいえ、磁力によるメカニカルドーピングが「空想の産物」ではなく実際に起きている自称としてとらえているからの対応とのことであり、メカニカルドーピングがいかに最先端技術を駆使して行われているのかという実状がわかる。また使用されている機材に直接取り付けるタイプのマーカーのシステムも検討されているようだ。
テクニカルな検査体制ばかりに注目が集まってはいるが、実は罰則も強化されるのだ。その中で特徴的なのが、今までであれば、本人が認識していたかどうかにかかわらず、罰則は一律であったが、これからは本人が知らずにチーム側などが機材をすり替えていた場合などは、本人が認識していた場合(意図的と判断された場合)に比べて出走禁止期間も罰金も短期間、少額となる。
まだこれでも十分とは言えないが、しかし会長に選任されてからのこの期間で、今まで体制をここまで変えた来たその手腕には一定の評価ができるだろう。果たしてこれで撲滅できるか、違反をしても勝ちたいという人間の欲望と、最先端技術という最悪のタッグをUCIはどこまで追いやることができるのだろう。
スポーツはいったい誰のためのものなのか、スポンサースポーツという特殊な状況だからこそ起きている事象が多いことを考えれば、以前から話に出ている放映権の分配など、各チームがゆとりをもって不正をすることなくレースに専念できる環境づくりも急務だろう。
H.Moulinette