「ポガチャルはもう私を超えている」史上最強と謳われる三冠のメルクスがポガチャル絶賛!もう一人の三冠ロッシュもポガチャルを絶賛!現役もベテランも絶賛する”生ける伝説”は現在進行形
今年の世界選手権は、度肝を抜かれるタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)のオーバー100㎞地点からの攻撃、そしてそこからの50㎞の独走という印象にも歴史にも残る勝利に沸いた。往年の名選手、史上最強と呼ばれるエディ・メルクスとアイルランドの英雄ステファン・ロッシュしか成し得ていなかったジロ・デ・イタリア総合優勝、ツール・ド・フランス総合優勝、そして世界選手権金メダルという三冠(トリプルクラウン)を、圧倒的な強さで成し遂げたインパクトは絶大だ。
そんなポガチャルをメルクスが絶賛、「ポガチャルはもう私を超えているよ」とコメント、その才能を認めた。もともとメルクスはポガチャルを称賛していたが、もう今のポガチャルのレベルはすでに歴史上最強であると語った。
「ポガチャルはもう明確に僕を超えているよ。内心彼がツールで勝利したときにすでにそれは感じていたんだよ。でもそれが今回の世界選手権の勝利で確信に変わったよ。もちろん時代は違うけど、独走が得意だった私でさえ世界選手権で100㎞以上手前から仕掛けようなんて考えたことさえなかった。でもそれを目の当たりにしたとき、それはもはや一般常識で想像できる範囲を超えていたよ。マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・ドゥクーニンク)やレムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)のような強豪選手たちが控えていても、何の躊躇もなかった。彼は間違いなく常人ではないよ。彼は絶対的なチャンピオンだよ。」
メルクスは賞賛の言葉を惜しまなかった。ポガチャルはまだまだ勝利数という意味ではメルクスには遠く及ばない。しかしポガチャルはまだこれから現役のピークを迎えていくだけに、どれだけの勝利を積み重ね、どれだけメルクスが保持している記録を塗り替えていくのかは計り知れない。
すでにポガチャルと並ぶワンデイレースの最高峰モニュメント6勝を挙げているファン・デル・ポエルも、「2020年代はポガチャルの時代」と呼んでおり、多くのレースで直接ライバルとなる同年代を時代のアイコンであると認めている。またエヴァネポエルも「最強の中の最強」とポガチャルを認めている。今年の世界選手権でもこの二人が”無茶、無謀、自殺行為”と称した前代未聞の100㎞オーバーでの仕掛けを、完遂してしまったことで、今までの常識すら覆すポガチャルの強さはもはや誰も疑う余地のない伝説となった。
「僕が現役だったころは、誰も僕の記録のことを書きたてなかったよ。そりゃ全てが初であり比較対象がなかったからだろうけど、でも今ポガチャルは僕と比較され、そして超えていっているんだ。」メルクスのコメントには、最強が誕生し今それを見ることができること喜びと共に、自らの記録が過去のものとなっていくことへの寂しさも感じた。
またもう一人のトリプルクラウイン達成者ステファン・ロッシュもポガチャルを絶賛している。「メルクスとポガチャルのサンドイッチされているのもいいものだね。僕が達成したのが37年前、そしてそれはメルクスの13年後だった。当時でも”新時代”、”新世代”、”二度と不可能”などと言われていたからね。でも記録は破られるためにある。だからこうしてポガチャルが達成してくれたことで、トリプルクラウンが非現実的なことではないことを証明してくれたと思う。今年の走りはただ”驚異的”、という一言に尽きるよ。彼は今シーズン何度となく大逃げを決めてきた。まあでも本心はアタックを見たときには、正直メルクスと僕の記録に並ぶにはまだ早かったかなぁと思ったんだよ。でも彼は自分自身を疑うことなく、本能の赴くがままに自信をもって仕掛けていたね。」
「メルクス、そして僕が達成してから37年、最強と呼ばれた男たちは何人もいた。ミゲーレ・インデュライン、ランス・アームストロング、アルベルト・コンタドール、クリス・フルーム、彼らもトリプルクラウンを達成できる実力は持っていたんだよ。でも彼らは得意分野が山岳やTTに特化していて、それ以外のレースでは勝てないという弱点もあったんだ。だけどポガチャルは平坦でもはや差があるだけではなく、今年の世界選手権が自分向きという”運”も引き寄せたんだよ。まあ次の達成者が出るまでにはまたしばらく時間がかかるだろうね。」
それでもポガチャルは止まらない。これからどれだけの勝利を積み重ねていくか、我々は今それを証人としてそれを見届けることができる”最強の時代”にいる。
H.Moulinette