コラム:難しい選択が迫られるスポーツ界、スポンサースポーツのロードレースもスポンサーの減収で撤退加速の可能性も、選手はペイカット受け入れも、今こそ真価が問われるASO
今回の新型コロナウイルスは大きな影響をスポーツ界にも与えている。東京五輪が延期となり、その代替スケジュールが来年のツール・ド・フランスと重なるため、早くもフランスなどヨーロッパでは批判の声も上がっているが、今はそれ以上に切迫した状況が立ちはだかっている。来年どころか今年の問題が山積みなのだ。
命を優先すべきは当たり前のことだが、スポーツはスポンサーや企業あってのものである。それが母体となる企業やスポンサーの大幅な減収で岐路に立たされている。毎年ギリギリの運営を続けているチームは多く、減収は即チーム解体の危機となるのだ。そんな中各チーム生き残りをかけて様々な形での模索を続けている。ヨーロッパのサッカークラブなどでは、高給取りの選手が自らの給与を削減して、チームスタッフの給料に充てるように要望するなどの動きが加速している。それでもそのような選手を抱えていないチームにとっては存続の危機となっている。
自転車ではサッカーのような高給取りの選手がほぼいないために、各チームの自助努力が求められている状況だ。すでにロット・ソウダル、CCC、アスタナ、バーレーン・マクラーレン、ミッチェルトン・スコット では選手やスタッフの年俸をカットすることで合意したチームもある。「今シーズン中のレース再開は難しいと思う。しっかりと収まるまで待ってからの再開にしなければ、また感染拡大してしまうというリスクは負いたくない。」としている。来シーズンへ向け各選手たちが最低限の生活を維持できる給与のみの支払いで耐えてくれ、と言うのが現実となっている。スポンサーも長期契約を結んではいるが、一転撤退を示唆する動きもすでに見え始めている。本来プロモーションとしてスポンサーをしているわけで、余剰金を寄付しているわけではない。そうなれば企業も規模縮小は経費削減で、まずはスポンサードのカットを断行する可能性は否定できない。そうなればチームは必然的に解体へと向かってしまう。ドゥクーニンク・クイックステップのメインスポンサーであるドゥクーニンク社ですら、予算の縮小を検討しているのだ。
ロードレースでは放映権を独占している主催者が、各チームへと分担金を払うべきという議論は長年にわたり行われてきた。しかしそれが行われていない以上、各チームはスポンサー頼み、自助努力による経費削減しか生き延びるすべがないのが実情だ。毎年多額の収入を得ているツール・ド・フランスなど多くのビッグレースの主催者ASOはこのような時ほどレース界の救済に乗り出してほしいと思う。それこそが今レース界を救済できる一つの可能性だ。今年のツール・ド・フランスをいつ、どのように開催すべきかで議論を続けるのも結構だが、しかしそれは各チームと選手たちあってのものであることをASOには今一度考えてもらいたい。ASOにとってドル箱のツール・ド・フランスを失いたくない気持ちがあり、開催することでスポンサー離れを食い止めることができるかもしれないが、まだまだ現状がどう変わっていくかわからない段階でのその皮算用はすべきではないだろう。それよりも各チームと選手たちは今この瞬間も未来が見通せない状況にあるのだ。まずはレース開催よりも先に、選手たちやチームを守る「形」を至急構築してほしい。
一日も早い終息とレースの再開を世界は待っている。
H.Moulinette