コラム:EFエデュケーション・ファーストドラパックの選手たちが危険運転の運転手に殴られダニエル・マルチネスが部分的記憶喪失、明日は我が身、トラブルを避ける方法と心がけ

春になり本格的にサイクリストたちが外へと飛び出す季節となった。しかしこれからの季節気を付けなければいけないことが増えるのもまた事実だ。これは自動車同士のケースだが、昨今日本でも煽り運転に抗議した家族が高速道路で亡くなる痛ましい事故が起き、その後も似たような事例が相次いでいる。そしてイタリアではトレーニング中のEFエデュケーション・ファーストドラパックp/bキャノンデールの選手たちが危険運転をしていたドライバーに抗議したところ、暴行される事件があった。今は復帰しているが、これによりダニエル・マルチネスが殴られ、そのことが影響して一時的な記憶障害を発症した。
日本でも頻発するドライバーと自転車のトラブルはよく耳にする。その大半が車が幅寄せしたなどが発端となっているが、それは以前のコラムでも書いた通り、車側がスポーツ自転車の速度を理解していないことで起こる偶発的なケースがほとんどだが、自転車乗りもそのことを理解しておらず、一方的に「車が意図的に幅寄せした」などとSNSに流すことにより、一般的には「自転車乗りはすぐにSNSで文句を言う」というようなイメージを持たれてしまっている節がある。
自転車側にしても車側にしても、当然のことながら運転中は普通の状態でありながら、いざとなると唐突に感情を露にすることで、口論や暴力沙汰などのトラブルに発展するケースもある。そのほとんどのケースで、人は冷静さを欠き、安易に”相手が悪い”という思い込みと押し付けから始まるのだ。
万が一トラブルになった場合、まずは道路脇ではなく安全なところへ移動し、そして何が問題だったのかをお互い冷静に話すことから始めねばならないのだが、昨今極めて”短気”な人が多く、いきなり自分の主張と罵声を浴びせる人が多いのだ。それは車の運転手に限ったことではなく、自転車ユーザー側にも同じことが言える。どちらもが最初から喧嘩腰なのであれば、、それはもうトラブル確定となる。短気は損気とはよく言ったもので、その場合大概のケースでろくな結末を迎えないのが世の常だ。
トラブルを避けるためには、まず自分が冷静でいることだ。そして決して自分の方から罵声を上げないことだ。そしてもう一つはいきなり相手を責め立てないことだ。状況を整理し、理路整然と話をし、「お互い気を付けましょう」と言えば、多くの場合はそれで事は収まるだろう。それでも収まらなければ警察への連絡などの考慮すればいいだろう。
トラブルになっていい結末などない。自分だけのトラブルのつもりでも、事が大事になれば家族や身の回りの人間にも迷惑が掛かってしまう。なのであれば、後味悪い結末を迎えるよりは、どんなに腹が立っても、冷静に対処して片付けるほうが賢明だろう。
ではどんなサイクリストがトラブルを起こしやすいのだろう。昨今は自転車乗り同士でもトラブルが増えている。聞こえてくる中で多いのが高級車、最新機材、ジャージに身を包み隊列を組んで走る自称”本格的”ロード集団によるトラブルだ。普段着や楽な恰好でポタリングなどを楽しんでいるホビーライダーに対して「ちんたら走るな」、「安いパーツ付けてるな」、「素人は邪魔」とか「ダサい格好で走ってんじゃねーよ」という、もはやいじめともいえるような一方的な罵倒がサイクリスト同士のトラブルの中ではよく聞かれるケースだ。そしてこのような人間は自動車の運転手にも同様の罵声などを浴びせているケースがおおい。つまり車とトラブルを起こしやすいのはそのほとんどがこのような人種だ。
どうも自分の趣味に固執してしまうあまり、それが絶対的存在となってしまい、周囲がどう感じるかなど二の次になっている人がいるのが現実だ。自転車を楽しむうえで、一部このような身勝手で横柄なサイクリストがいることが、輪界のイメージを悪くし、その社会的地位を貶めていることに気付いて欲しい。自分だけが楽しければいい、というようなわがままで迷惑をかけるのであれば、もはや趣味とは呼べない。社会にはただの害悪にしかならないことを肝に銘じておいて欲しい。
いつどんな時でも、どんな格好であろうとも、自転車を楽しむのはもっと自由であるはずだ。レースに出場するのであれば別だが、それ以外の場面ではがちがちの最新機材やウェアで身を固めるだけがサイクリングでもなければ自転車という趣味でもない。それすらも理解できないような人間こそ、誰に対してもすぐに感情的になったり、暴言を吐いたり、見下す発言をする傾向にあり、トラブルの種となりやすい。こういった”勘違い人間”と行動を共にするのもリスクが上がるのだと認識しておこう。このような人種は決して多いわけではない。ただ少なくてもそれが話題になってしまうということは「際立って目立ってしまっている」ということであり、ごく少数の言動が、社会による自転車乗り全体のステレオタイプに繋がってしまっているのが現状なのだ。
「自転車を楽しむ人種は気持ちがいい人種なんだ」、と思ってもらえるようになれば、自転車の社会的地位も向上し、自ずとトラブルも減っていくだろう。自転車への理解を求めるのであれば、そこには一人一人のちょっとした心がけが必要なのだということを意識して欲しい。
H.Moulinette