ツール・ド・フランス2026総括2:諦めない男たちのプロとしての意識の高さ、カラパズとピドコックが見せた怒涛のアタックと大逃げ、繰り返しスプリントを挑んだフィリップセン、山岳でもスプリントポイントを稼いだピーダースン

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今大会で印象的だったのは、諦めない男たちの姿勢だ。特に総合8位に入り山岳賞も獲得したリチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)と総合9位に入ったトム・ピドコック(ピナレロQ36.5 プロサイクリング)、そしてスプリント賞を競い合ったヤスパー・フィリップセン(アルペシン・プレミアテック)とポイント賞を獲得したマッズ・ピーダースン(リドル・トレック)の走りは痛烈に印象に残った。

©ASO

カラパズは手術明けということもあり、本来総合のエースでありながら今大会は山岳賞を狙いたいと事前にコメントしていた。大会前半はなかなか思ったような走りができずにタイムも失っていたが、本格的な山岳ステージが始まると水を得た魚のごとくアタックを繰り返し逃げに乗った。第10ステージと第14ステージでは勝利を逃したが、その勇気ある走りにポガチャルが「カラパズの日は来る」と発言していた。そして迎えた第18ステージ、ついに逃げからの逃げ切りでステージ勝利を掴むと、翌日の第19ステージも逃げ続ける。ここでは勝利こそできなかったがしっかりと山岳ポイントを量産して見せた。そして迎えた今大会最後の山岳ステージで、カラパズは3日連続の大逃げに乗る。メイン集団よりもあきらかにに脚を使い消耗が激しい逃げに3日連続で乗ることさえも大変なのに、このステージでも見事勝利を挙げるとともに、自力で山岳ポイントを稼ぎまくり、ついにポガチャルから山岳賞ジャージを奪って見せたのだ。まさに鉄人の走り、山岳賞を狙って勝ち取るあたりが流石と言わざるを得ない。

そしてもう一人素晴らしい走りを披露したのがピーダースンだ。ステージ勝利は第4ステージのみに留まったが、その後第7ステージで9位、第9ステージで6位、第12ステージで9位、第17ステージで8位とそこそこ安定した走りを見せた。だがポイント賞ジャージと言えばスプリンターたちにとって最高の称号、僅か1勝にもかかわらず、ましてやゴールではそれ以外4度のトップ10内でポイント賞が確保できるほどツール・ド・フランスは甘くない。ではどうしてポイント賞ジャージを確保することができたのか、それは中間スプリントにあった。特にポイント差が急激に縮まった後の、第18、19、20の難関山岳3連戦での逃げに乗っての中間スプリント確保は素晴らしいの一言に尽きる。ゴール勝負での勝利だけがポイント賞獲得に必要なのではなく、勝利とは関係ないがコース上に設置された中間スプリントポイントの積み重ねが、最終的に大きくものをいう、つまり結果だけではなくレースの途中過程にも、ポイント賞を獲得するカギがあるのだということをピーダースンは示してくれた。

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また実はこの逃げはさらにもう一つの役割もあった。総合順位を狙うチームのエース、マティアス・スケルモースとホァン・アユソ(共にリドル・トレック)が総合争いをするうえでのアシストとなることだ。この理由があったからこそチームとしては自由にピーダースンを躊躇なく動かせたし、ポイント賞とアシストの一石二鳥だったのだ。しかしそれでも求められるのは中間スプリントまで逃げに残り、そして先頭通過することだ。クライマーではないピーダースンにとっては、本格的なクライマーの為のステージ、そしてクライマーたちが形成する逃げに乗って耐え続けるのは容易ではなかったはずだ。しかしそれで粘りの走りで喰らい付いていくと、状況を察している他の選手たちはあえて中間スプリントポイントを奪うような非紳士的行動はせず、堪え続けたピーダースンへの敬意を払って中間スプリントを先頭通過させたのだ。山岳でほとんどのスプリンターが完走するだけで精一杯なのを理解してのあえての中間スプリントを攻めるという選択肢は、今後のグランツールでも一つの形となるかもしれない。

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またもう一人目立った走りを続けたのがピドコックだ。MTBとシクロクロスの世界の頂点に立ち、さらにロードでもクラシックも勝利を挙げており、同じような経歴のクラシックの帝王マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・プレミアテック)と遜色ない世代最強の一角だ。クラシックスペシャリストでありながら、そこそこ山岳もこなせることから、グランツールでの総合は狙わないのかということを何度となく問われており、本人も「今の世界には頂点にやばい奴らがいる」としながらも、その挑戦をしている。昨年度のブエルタ・ア・エスパーニャでは総合表彰台にも上っており、総合優勝の可能性は0ではないことは明白だ。だが本人も口にしているが、「クラシックとグランツールでは準備のためのトレーニングなど全てが異なる。」と口にしており、調整の難しさを指摘している。しかしそれでも今年のツール・ド・フランスでは序盤にタイムロスがありながらも、後半戦に入ると第13、14、15ステージの3連続で逃げに乗るなど、隙あらばという大逆転というスタンスを見せ続けた。結果的にこの挑戦が功を奏してのトップ10入り、結果に繋がった。総合優勝は相当条件が整わなければきついが、それでもこの男の攻める気持ちは見ているものを熱くさせる何かがある。

H.Moulinette