コラム:世界選手権は大丈夫?ブエルタで抗議デモへの対応を見誤ったUCIと主催者、イスラエルプレミアテックを除外しなかったことで、デモに大義名分を与える結果に、だがUCIも苦境に
ブエルタ・ア・エスパーニャはとても後味の悪い終わり方となってしまった。第5ステージのチームTTでイスラエル・プレミアテックの出場に対しての抗議があり、それに対してスペイン外務省などは出場除外すべきという意見もしたが、結果的にUCIと大会主催者はそれにたいして特段の対応を行うことはなかった。ロシアのウクライナ侵攻ではロシア国籍の選手とロシアを拠点としたチームの出場をUCIは禁止した。だがイスラエルがガザに侵攻をしても、UCIはそれに対してはどこ吹く風、そしてこうして抗議活動が起きても動くことはなかった。
そしてそれにより毎ステージのように抗議活動は続いていき、徐々にエスカレート、そしてついに最終ステージではマドリッド市街のゴール地点付近をはじめとするエリアで10万人規模の大規模な抗議デモがコースへと流れ込んでしまい、ステージがキャンセルとなってしまった。結果的にイスラエル・プレミアテックの出場継続を認めたことで、抗議デモへ大義名分を与えてしまう結果となった。
たらればはないが、もし大会除外となっていれば、その後抗議活動が起きれば非難されるべきは約束を守らない抗議活動となったはずが、結局そうはならなかったどころか、抗議活動をエスカレートさせてしまう、火に油を注ぐ形となってしまった。この責任の所在や言い分などは、競技統括団体としてははっきりとしてほしいものだ。

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だがここでUCIも実は苦境に立たされていたという側面も考えなければならない。
そもそもイスラエルとガザに関しては、女性や子供たち、民間人に対しても攻撃を行っているイスラエルの攻撃を大虐殺としてフランスをはじめとする多くの国がイスラエルを非難し、大虐殺に歯止めをかけるべくガザを国歌として承認するという流れになっている。それに対しイスラエルは自国を非難する国家や団体に対して”反ユダヤ”と宗教を持ち出し声を荒げ、それにアメリカが同調するという流れができている。
UCIとしてはこの”反ユダヤ”と言うレッテル貼りをされることを嫌っている可能性は高い。自国の正当化を掲げるイスラエルは中立国でもパレスチナ要人の殺害を実行するなど、もはや歯止めが利かない暴走に近い状況にある。だからこそ、そんな国から敵対視されたくないという思いは理解できないわけではない。実際にUCIがイスラエル・プレミアテックを除外していれば、おそらくイスラエル政府及びネタニヤフ首相はUCIに対して敵意をむき出しにしていた可能性は高い。
そしてそれらを踏まえたうえで、UCIとしてはイスラエル・プレミアテックが自主的に撤退を決めてくれるのを望んでいたのかもしれない。でもそうならなかったことで、今後起こりうる可能性としては、2026年度のワールドツアーライセンス発行に際して何らかの対処を取る可能性だ。レースシーズン全体に影響を及ぼしかねない、リスクとなりうるイスラエル・プレミアテックをどこまでレース界が許容できるのかという事になりそうだ。
今イスラエルという国家の暴走がスポーツ界全体に大きな影を落としている。いったいこれはいつまで続くのか、そして果たして国別の世界選手権ではこのような抗議活動は起きないのか?この政治の波の影響は当面収まりそうにない。今はただ世界選手権でまでもが途中でキャンセルになるようなことがないことを願いたい。
H.Moulinette












