ジロ・デ・イタリア第11st:元ジロ覇者のカラパズが抜け6年ぶりのステージ勝利!デル・トロがその背後でスプリントで2位でボーナスタイムも獲得、総合勢は大きく動かず

第11ステージは、昨日の悪天候の中での個人TTでの影響か、総合勢は積極的な攻撃には出なかった。本来逃げの容認されそうなステージではあったが、だが最終盤でポイント賞ジャージのマッズ・ピーダースン(リドル・トレック)が驚異的なペースで追走集団を率いると、この日逃げ続けた2014ジロ覇者のナイロ・キンターナ(モビスター)のステージ優勝の可能性は夢と化した。そしてそのままジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック)のアシストの役割を完遂してみせた。

©Giro d’Italia
するとゴール前最後の上りで2019ジロ覇者のリチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)が単独アタックを仕掛けた。総合優勝争いには大きな影響がないと判断したUAEチームエミレーツXRGは、総合6位と7位のブランドン・マクナルティとアダム・イェーツの順位には影響が出そうなことを理解しながらもこれを潰しにはいかず、代わりにダブルエース体制となっている総合リーダーのアイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツXRG)と総合2位のホァン・アユソの21歳と22歳の若手コンビ中心の走りに専念した。
カラパズはそのまま先頭でゴール、これが総合優勝を果たした2019年以来の勝利となった。そしてその背後でもあデル・トロがスプリントでライバルを抑え2位でゴール、地味ではあるがここで6秒のボーナスタイムを獲得して見せた。総合バトルは小休止となり、総合順位はそれぞれボーナスタイムを獲得したカラパズとステージ3位のチッコーネが順位を上げたは、僅差の中にひしめき合っており、大きな変動はなかった。

©Giro d’Italia
この日最大の勝者と言えるのはロレンツォ・フォーチュナト(XDSアスタナ)だろう。総獲得標高3800mの186㎞のステージは、逃げが容認されるタイプのステージだった。その為この日はスタート直後から激しいアタックの応酬となるが、ワウト・ポエルス(XDSアスタナ)とフォーチュナトは明確に目的意識をもって飛び出していく。なんとしても集めたいのはフォーチュナトの山岳ポイント、大会後半総合優勝争いが始まると、総合上位勢が山岳ポイントを荒稼ぎするだけに、その前に十分の山岳ポイントを蓄えておく作戦だ。そしてそれがこの日はドンピシャでハマることとなった。
フォーチュナトの動きに合わせるかのようにこの日の逃げはポエルス、キンターナ、ペッロ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス)、ルーク・プラップ(ジェイコ・アルーラ)の5人に絞られることとなった。その背後のメイン集団でも駆け引きは多くあり、手薄なアシストのプリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ)に対して人数がいるUAEチームエミレーツXRGやイネオス・グレナディアスらが揺さぶりをかける。これによりメイン集団も大きく人数を減らし20名ほどにまで絞られてしまう。

©Giro d’Italia
4人と合流を果たし、結局この日58ポイントの山岳ポイントを荒稼ぎしたフォーチュナト、さらにはステージ勝利を狙う逃げ集団は、後続のメイン集団に約3分の差をつけてレース終盤を迎える。だがそんなにすんなりと逃げ切りは容認されなかった。この日の各チームと各選手たちの現段階での調子を確認したリドル・トレックが動く。スプロントステージではエースだったマッズ・ピーダースン(リドル・トレック)が馬力ある走りでペースアップ、逃げ集団との差はあっという間に縮まっていった。残り24㎞では1分半にまで縮まり、さらにそこからカウント団のように逃げ集団とのタイム差は縮まっていく。

©Giro d’Italia
そして残り9㎞、ついに逃げ集団を捉えたが、そのタイミングをカラパズは待っていた。見事なまでのカウンターアタックに、一瞬緩んだメイン集団の選手たちは対応できずにカラパズを行かせてしまう。そのままカラパズはゴールまで独走、見事にステージ勝利を挙げた。その背後ではうごきこそ起きたがUAEチームエミレーツがその動きをシャットアウト、そして最後ゴール前でデル・トロが自らの総合順位を見据えてボーナスタイム獲得を果たして見せた。引き続き総合上位トップ3が21歳、22歳、23歳と新人賞ジャージ争いがそのまま総合争いとなっている。

©Giro d’Italia
リチャード・カラパズ(ステージ1位、総合6位)
「難しいステージだったよ。でも後半の上りで多くの選手が苦しんでいるのを見たので、これはいけると踏んだんだ。あとはどのタイミングで仕掛けるかだけのことだったよ。そしてドンピシャでそれがハマったね。最後まで逃げきれたし山岳個人TTをやっている気分だったよ。僕は攻め続けるよ、最終日の最後の瞬間までね。」
トム・ピドコック(ステージ4位)
「ステージ勝利を狙いたかったけど、カラパズが強かったよね。今日はスタートから皆が全開だったのでハードだったよ。結局逃げ切り容認ではなく、最後まで気の抜けない総合上位勢のにらみ合いになったよね。ステージ勝利は欲しいね。まだ折り返し地点なのでチャンスはあると思うよ。」
マッズ・ペデルセン(ポイント賞ジャージ)
「きちんと仕事を遂行しただけさ。カラパズは強かったね。でもチッコーネがきちんとボーナスタイムを獲得できたので、これでミッションコンプリートだよ。」
ジロ・デ・イタリア第11ステージ順位
1位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) 4h35’20”
2位 アイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツXRG) +10”
3位 ギウリオ・チッコーネ(リドル・トレック)
4位 トム・ピドコック(Q36.5プロサイクリング)
5位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)
6位 アントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス)
7位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツXRG)
8位 アイナー・ルビオ(モビスター)
9位 デレック・ジー(イスラエル・プレミアテック)
10位 ダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ヴィクトリアス)
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 アイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツXRG) 38h47’01”
2位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツXRG) +31”
3位 アントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス) +1’07”
4位 サイモン・イェーツ(ヴィズマ・リースアバイク) +1’09”
5位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +1’24”
6位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) +1’56”
7位 ジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック) +2’09”
8位 ブランドン・マクナルティー(UAEチームエミレーツXRG ) +2’16”
9位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツXRG) +2’33”
10位 サイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアス) +2’33”
H.Moulinette