ジロ・デ・イタリア第9st:ストラーデ・ビアンケの未舗装路バトルで総合大シャッフル!ステージを制したのはファン・アールト!2位のデル・トロが総合リーダーに!ログリッチ痛恨の落車からの遅れ

激坂バトルの翌日に選手たちを迎えたのは”白い悪魔”の未舗装路が波乱の展開を読んだ。白い土ぼこりが選手たちを迎えるストラーデ・ビアンケのコースが選手たちの運命を大きく左右することになった。滑りやすい粉砂のコースで落車が連発、総合上位勢も巻き込まれたが、その中でも最大の敗者となったのがプリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ)だった。もとより落車に巻き込まれることが多いが、このステージでも終盤の低速コーナーで落車すると、そのまま先行していたアイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツXRG)らに差をつけられてしまう。結局この差はボディブローのようにじわじわと広がっていき、結果的に総合上位のライバル相手に逆転され、さらにはタイム差をつけられる結果となってしまった。

©Giro d’Italia
ステージを制したのは今シーズンも、ここまでのジロ・デ・イタリアでもいいところなく結果が残し切れていなかったワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)、ついに念願の今シーズン最大の勝利を手にした。最後はファン・アールトに激坂からのスプリントに僅差で屈したが、ステージ2位に入ったデル・トロが総合リーダーに躍り出た。21歳のメキシコ人は次期グランツールのエースとしてアユソと共に期待されているが、早くもその頭角を現している。UAEチームエミレーツXRGでは、現段階ではアユソをエースとしているが、チームにとっては好調なデル・トロをどのようにしていくのか、嬉しいが悩ましい問題となりそうだ。

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このステージを終えUAEチームエミレーツXRGは総合10位まで順位を下げたログリッチの前、総合トップ9位以内にデル・トロ、ホァン・アユソ(総合2位)、ブランドン・マクナルティ(総合8位)、アダム・イェーツ(総合9位)の4人を送り込む圧倒的優位な状況を作ることとなった。この日のステージで総合上位勢はシャッフルとなり、レッドブルボーラハンスグロエにとっては今大会を左右しかねない非常に重いステージとなった。
この日のステージはまさにクラシックのストラーデ・ビアンケのコースを駆け抜けるクラシックのようなハードなステージ、未舗装路区間をいかにトラブルなくクリアするかはクラシックでの勝利には必要不可欠だが、それはこのステージでも同様で、状況次第では大きく今後の展開に影響を与えかねないステージだった。そんなステージは6人に逃げが序盤に決まる。ファン・アールトは総合争いのアシストからこの日は解放され、自らの勝利への自由を与えられていた為逃げに乗ろうとしたが、この段階ではそれは実らず、改めてそのチャンスを伺うこととなる。
しかしそのステージの特性から、メイン集団もハイペースを維持、逃げとのタイム差を射程圏内にとどめ続ける。そして残り68㎞で迎えた最初の8㎞の未舗装路区間に突入すると、ファン・アールトがまたしてもその存在感を見せる。更にクラシックシーズンから絶好調で、今ジロでもさらに絶好調でマリア・ローザを二度獲得したマッズ・ピーダースン(リドル・トレック)がペースを上げていく。躊躇なく滑りやすい路面の下りでもノーブレーキでクリアしていく走りに、総合勢も躊躇しながらも食らいつく。このハイペースにあっという間にほとんどの逃げは捉まり、そしてメイン集団も30名ほどに絞られ、更には昨日マリア・ローザを獲得したディエゴ・ウリッシ(XDSアスタナ)も後方集団に置き去りとなった。

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そして迎えた運命の9.3㎞、第2未舗装路区間が選手たちの明暗をくっきりと分けた。まず最初に落車を喫したのは総合8位のマイケル・ストーラー(チュードル・プロサイクリング)だった。残り54㎞でチームメイトの落車に巻き込まれ落車、しかしダメージ少なく立ち上がってすぐに追走を開始する。そしてその直後、残り51㎞で今度はログリッチ、マクナルティ、トム・ピドコック(Q36.5プロサイクリング)、クリス・ハミルトン(イネオス・グレナディアス)の4名が低速コーナーで落車を喫する。これを回避したイーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)は、チームメイトのサイメン・アレンスマンとブランドン・リヴェラ(共にイネオス・グレナディアス)、更にはデル・トロらとファン・アールトと共にペースを上げていく。この5人は逃げの生き残り2名を吸収し、先頭7人の集団を形成する。
そして追走にはアユソを中心とした集団が集結する。しかしこの追走にいたログリッチは、未舗装路セクター終了直前にバイク交換を余儀なくされ、集団から置いていかれることとなる。そして迎えた9.3㎞の第3未舗装路区間に突入すると、アユソの集団とログリッチの集団との差は20秒ほどとなる。

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先頭ではベルナル、リヴェラ、デル・トロ、ファン・アールト)の4名に絞られるなか、後方ではログリッチ、ピドコック、ストーラー、デレク・ジー(イスラエル・プレミアテック)らが第2追走集団を形成する。そしてここからこの先頭集団とアユソ集団、そしてログリッチ集団とのそれぞれのタイム差がじわじわと広がっていくことになる。先頭ではリヴェラがベルナルの為に限界までペースアップ、デル・トロとファン・アールトはそれに便乗する形となるが、その後はデル・トロとファン・アールトも積極的な協調性でペースを上げていく。そんな中第2追走のログリッチはジーと共に第1追走を目指すがこれも徒労に終わる。
残り20㎞ではデル・トロがアタックを仕掛けるなど、先頭手段はそのペースを上げていく。するとこの段階でアユソ集団との差は1分にまで広がり、ログリッチはさらにその1分後方と、完全にこのステージでのタイムロスが決定的となる。その後逃げのベルナルは徐々にファン・アルトとデル・トロについていけなくなり脱落、アユソの第1追走はアダム・イェーツ(UAEチームエミレーツXRG)がペースを維持し、後続との差を広げつつ、脱落してきたベルナルを残り6㎞で吸収した。

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ファン・アールトとデル・トロはゴール前の激坂でもお互い譲らず、しかし最後は試合巧者のファン・アールトが前に出ると、そのままゴールまで逃げきった。しかし本人は勝利しながらも終盤数キロデル・トロの牽引に身を委ねて脚を貯めたことに関して「申し訳なかった」とし、真っ向勝負をするだけのコンディションではなかったことも垣間見えた。
そして遅れること約1分、ジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック))、リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)が入ると、1分を超えたあたりでアユソら主力メンバーが次々とゴールを果たした。そしてさらに1分以上遅れてログリッチらがゴール、これで総合順位は大きく入れ替わることとなった。
ワウト・ファン・アールト(ステージ1位)
「デル・トロは素晴らしかったよ。正直終盤は彼にひかせ続けたことを申し訳なく思うよ。総合狙うチームメイトのライバルだから仕方がないんだけどね。でも紙一重だったよ。僕の限界の走りでも、あれだけの僅差の勝負になったんだよ。あとはコースを知っていたことが有利に働いたね。」
プリモズ・ログリッチ(総合10位)
「この結果が何を意味するのかはいずれ分かるよ。今日は僕がタイムを失った、でもそれは誰にでも起こりうること。まだまだレースはこれから、まずは怪我の確認をしてそれから今後の戦略を考え直すよ。」
ジロ・デ・イタリア第9ステージ
1位 ワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク) 4h15’08”
2位 アイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツ)
3位 ジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック) +58”
4位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)
5位 サイモン・イェーツ(ジェイコ・アルーラ) +1’00”
6位 アントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス)
7位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツXRG) +1’07”
8位 サイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアス)) +1’10”
9位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)
10位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツXRG)
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 アイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツXRG) 33h36’45”
2位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツXRG) +1’13”
3位 アントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス) +1’30”
4位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) +1’40”
5位 ジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック) +1’41”
6位 サイモン・イェーツ(ジェイコ・アルーラ) +1’42”
7位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) +1’57”
8位 ブランドン・マクナルティー(UAEチームエミレーツXRG ) +1’59”
9位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツXRG) +2’01”
10位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +2’25”
H.Moulinette