ブエルタ・ア・エスパーニャ2023第10st:個人TTを制したのはガンナ!エヴァネポエル激走で2位もクスとソレルも快心の走りで総合1,2位をキープ、ヴィンゲガードは後退(ダイジェストあり)
個人TTというのは一撃で、総合順位を大きくひっくり返す程のダメージと衝撃が起きうるステージだ。ステージレースやグランツールではTTが得意でなければ総合上位は狙えないほどの重要な意味を持つだけに、今大会もこの住ステージこそが運命の別れ道になる可能性があった。そして先日の世界選手権で個人TTで世界チャンピオンとなったばかりのレムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)は揺るぎない自信をもってこのステージに挑んできた。総合リーダーのセップ・クス(ユンボ・ヴィズマ)がクライマーとしては有能だが過去のTTでの結果があまり芳しくないことからも「彼はアウトサイダーで、本当のライバルはプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)、ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)、ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ)らだ。」と口にしていたが、結果的には想像とは大きく異なる結果が待ち構えていた。
トップタイムをたたき出したのはフィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアス)、エヴァネポエルに奪われた個人TT世界チャンピオンの雪辱を果たすべく、全ての通貨ポイントでトップタイムをたたき出し、暫定1位の選手が据わるホットシートで総合上位勢の結果を見守る。
そして総合10位のジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)、が素晴らしい走りでガンナに50秒遅れのステージ4位に入ると、それを上回るタイムをたたき出したのはそのあとにスタートしたログリッチだった。しかしエヴァネポエルが後半に伸びを見せ、ガンナに16秒差のステージ2位でゴールを果たすと、残すは昨日までの総合トップ3がどのような走りを見せるかだった。
総合3位のレニー・マルチネス(グルーパマFDJ)は体重50kg代前半の小兵選手、パワー勝負の25.8㎞の個人TTは過酷だった。それでも何とかガンナから2分29秒遅れのステージ30位でゴールを果たし、総合5位に踏みとどまった。
そしてこの後走った総合2位のマルク・ソレル(UAEチームエミレーツ)と総合リーダーのクスが素晴らしい走りを見せることとなる。2人ともTTが得意というわけではないが、チャンスというモチベーションは、二人の走りに大きくプラス効果をもたらした。まずはソレルがガンナから1分12秒遅れのステージ8位に入ると、クスもガンナから1分29秒遅れのステージ13位、2人ともエヴァネポエルに逆転を許さなかったどころか、総合でソレルが43秒、クスが1分9秒のタイムアドバンテージを保って、それぞれ総合1位と2位を死守して見せた。
思ったより伸びなかったのがヴィンゲガード、ステージ10位は決して悪いものではなかったが、エヴァネポエルには1分2秒の差をつけられてしまった。
このステージの結果、総合で3分差以内に11人がひしめき合う形となり、その中にユンボ・ヴィズマとUAEチームエミレーツが3人ずつを残す形となった。ユンボ・ヴィズマは総合リーダー、UAEチームエミレーツは総合2位という順位を守るだけではなく、それぞれ攻撃のカードが3枚ずつあるという圧倒的有利な状況で、大会連覇を狙うエヴァネポエルと対峙することができる優位な状況となっている。逆にエヴァネポエルからすれば、この6人の誰が動いても自分が反応せざるを得ない状況になり兼ねないだけに、この2チームが潰しあいをすることを願いそれに便乗する作戦が現実的なものとなってきた。
フィリッポ・ガンナ(ステージ1位):「ジロ・デ・イタリアのあとはブエルタに出るのが一つの目標だったんだよ。でもチームとして出場させてもらえるかが微妙だったんだけど、完璧に準備は整えていたんだ。チームとして総合争いに絡むことはできていないのは残念だけど、こうして結果を残せたことには満足しているよ。」
セップ・クス(総合1位):「自分自身を信じないとね。この総合リーダージャージを最後まで守り抜いてブエルタを制したいね。緊張せずに自分の本能の赴くがままに貫くよ。そして何よりも総合上位にログリッチとヴィンゲガードがいることがとても重要なんだよ。正直あまり緊張はないよ。でもそれよりもチームのモチベーションが高いし、全力だサポートしてもらえているのがわかるんだ。それが何よりも大事なことだよ。」
レムコ・エヴァネポエル(ステージ2位、総合3位):「これでユンボが3人エース体制で来ることがはっきりとわかったね。クスにタイムロスを抑えてベストな走りをするよう指示が出ていたんだと思う。でもそれ以上に彼がこのタイムで走れたことには脱帽だよ。この走りは想像していなかったよ。まあ僕自身も悪くはなかったと思う。ログリッチとヴィンゲガードに差をつけられたからね。でもベストではなかったかな。これからレースは面白くなると思うよ。」
ブエルタ・ア・エスパーニャ第10ステージダイジェスト
https://youtu.be/u9mkw7oQl04?si=ci8_e0mT9LJF3pT7
ブエルタ・ア・エスパーニャ第10ステージ順位
1位 フィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアス) 27’39”
2位 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ) +16”
3位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +36”
4位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +50”
5位 アレクサンダー・ヴラソフ(ボーラ・ハンスグロエ) +52”
6位 マッティア・カッタネオ(ソウダル・クイックステップ) +1’09”
7位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ) +1’11”
8位 マルク・ソレル(UAEチームエミレーツ) +1’12”
9位 ネルソン・オリベイラ(モビスター)
10位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) +1’16”
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ) 35h52’38”
2位 マルク・ソレル(UAEチームエミレーツ) +26”
3位 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ) +1’09”
4位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +1’36”
5位 レニー・マルティネス(グルーパマFDJ) +2’02”
6位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +2’16”
7位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) +2’22”
8位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ) +2’25”
9位 エンリック・マス(モビスター) +2’50”
10位 アレクサンダー・ヴラソフ(ボーラ・ハンスグロエ) +3’14”
H.Moulinette