ツール・ド・フランス2023第1st:ステージを制したのはアダム・イェーツ!双子のサイモンとの一騎打ちを制す!早くも総合に動き、ポガチャルが3位でボーナスタイム獲得(ダイジェストあり)
男には負けられない瞬間がある。たとえそれが血を分けた双子の兄弟であっても・・・今年のツール・ド・フランスは第1ステージから非常に見ごたえのあるステージとなった。オープニングステージを制する者がまず着用できる総合リーダーの証、マイヨ・ジョーヌを目指し誰もが狙ってくるこのステージを制したのはアダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ)、優勝候補の一人タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)の右腕を務める男が、鮮やかに自らの双子の兄サイモン・イェーツ(ジェイコ・アルーラ)との一騎打ちを制してガッツポーズを決めた。
長らく歩みを揃えてきた双子の兄弟は、2021年にアダムがチームを移籍したことで、まったく違う方向性へと進んだ。揃ってトップカテゴリーのレースで勝利を収めてきたが、サイモンがブエルタ・ア・エスパーニャを2018年に制し、またジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャの3大ツールでステージ10勝を挙げていたのに対し、クラシックやステージレースでの活躍はあれどグランツールでの勝利がなかった弟が、ついにグランツール初の勝利を自らの兄を破って成し遂げて見せた。
そして総合争いも早くも激しい火花が散った。先頭の二人をゴールへと猛追したのは13名の小集団、その先頭をとったのはポガチャル、味方のステージ優勝を祝いつつ、自らも最大ライバルのヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)に対しボーナスタイムで差をつけることに成功した。またこの13人にはヴィンゲガードの他、総合上位争いに絡むと思われるジャイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ)、ティボー・ピノー(グルーパマFDJ)、マイケル・ウッズ(イスラエル・プレミアテック)、カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス)らも名を連ねた。
そして初日にして早くも総合上位候補の二人が落車によりそのチャンスを失った。残り23㎞で発生した落車により、リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)とエンリック・マス(モビスター)が負傷、マスは肩を痛めそのままリタイアとなった。カラパズも両膝を痛めており、何とかゴールは果たしたが、そのままリタイアとなった。両チームは初日にして総合リーダーを失うこととなってしまった。
そんなステージはスタート直後に5人の逃げが決まるが、この日は逃げ切りが容認されるはずもなく、集団は常に1分半ほど後方で展開し、その後逃げを吸収してしまう。そしてこの日最後の3級山岳に突入すると、UAEチームエミレーツが一気にペースを上げライバルたちを削っていく。それに対しユンボ・ヴィズマは主導権を奪うと展開を落ち着かせようとする。しかし攻撃が信条のUAEはアダム・イェーツが攻撃、さらにポガチャルが攻めるという展開で、一気にライバルを減らしていく。ヴィンゲガードはこれに対応するが、山頂を超えた時にはポガチャル、ヴィンゲガード、ヴィクトル・ラフェイ(コフィディス)の3名が先頭、それをサイモン・イェーツらが追う形となった。
ゴールへの下りでパラパラと選手が合流する中、サイモン・イェーツがアタックを仕掛けると、それに反応したのはアダム・イェーツだけだった。イェーツ兄弟の一騎打ちの背後では13名にまで増えたメイン集団が駆け引きを始める。先頭ではアダム・イェーツが真っ向勝負でサイモン・イェーツを振り切りステージ優勝を挙げると、ポガチャルも追走集団の先頭でガッツポーズ、攻め続けたUAEの戦略が見事に結果として現れた。
アダム・イェーツ(ステージ1位):「兄弟仲良くて毎日話すんだけど、サイモンが仕掛けた時に行くべきかどうか迷ったんでチームに聞いたら、答えは”行け!”だったんだよ。僕はエースの器じゃないけど、こうして勝てたことは最高にうれしいし、これからもポガチャルのために走るよ。」
サイモン・イェーツ(ステージ2位):「ポガチャルらとゴールまで行ってしまうと勝てないのはわかっていたから仕掛けたんだよ。もっと早く上りで仕掛けたかったんだけど、沿道の観衆が多すぎて無理だった。まあしょうがないね。だから下りで仕掛けたら、弟がついてきたんだよ。結果彼に負けてしまったしね。」
タデイ・ポガチャル(ステージ3位):「僕をサポートしてくれた仲間が勝利するのは格別だね!自分で勝った時よりも感慨深いよ。それに僕らの攻撃スタイルを改めて見せられたね。まあ僕の調子は万全ではない、そのためのサブエースがアダムなんだ。手札は多いほうがいいだろ。」
ヨナス・ヴィンゲガード:「この4秒で勝敗は決まらないよ。」
ツール・ド・フランス第1ステージダイジェスト
ASO 公式ダイジェスト https://youtu.be/tKpvSoai7Gs
ツール・ド・フランス第1ステージ
1位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) 4h22’49”
2位 サイモン・イェーツ(ジェイコ・アルーラ) +04”
3位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +12”
4位 ティボー・ピノー(グルーパマFDJ)
5位 マイケル・ウッズ(イスラエル・プレミアテック)
6位 ヴィクトル・ラフェイ(コフィディス)
7位 ジャイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ)
8位 マティアス・スケルモース(リドル・トレック)
9位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)
10位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) 4h22’39”
2位 サイモン・イェーツ(ジェイコ・アルーラ) +08”
3位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +18”
4位 ティボー・ピノー(グルーパマFDJ) +22”
5位 マイケル・ウッズ(イスラエル・プレミアテック)
6位 ヴィクトル・ラフェイ(コフィディス)
7位 ジャイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ)
8位 マティアス・スケルモース(リドル・トレック)
9位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)
10位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ)
H.Moulinette