ジロ・デ・イタリア2023第16ステージ(ダイジェスト動画あり):難関山岳ステージで総合バトルついに勃発!アルメイダがステージ優勝で総合2位へ、トーマスはステージ2位でマリア・ローザ返り咲き!
休息日明けの山岳ステージは必ず何かがおきる。そしてそれが難関ステージであればそれはなおのこと顕著に駆け引きが繰り返される。今大会初めて総合勢による直接総合バトルとなったが、頂上ゴールまでの上りで仕掛けたジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)に対し、一歩遅れて反応したゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス)のふたりが、優勝候補筆頭だったプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)を引き離し、それぞれステージ優勝とマリア・ローザ返り咲きと結果を残した。最年長優勝を狙うトーマスと新人賞ジャージを纏う期待の若手が見事に連動し、最大ライバルを撃破することに成功した。
ログリッチはそれに遅れながらも何とかタイムロスを最低限にとどめ、総合3位となった。そして総合トップ10はこのステージで大シャッフルがかかり、総合トップ3が未だ1分以内にひしめき合っている状況が続いている。
総獲得標高5300mの難関山岳ステージのスタートラインには、わずか129名の姿。すでに47名がリタイアし、有力勢もかなりリタイアしたことで、各選手の思惑を軸に、序盤から激しいアタックの応酬が繰り返された。逃げ切りと同時に、大きくタイムを稼ぎ出しての総合順位アップを狙う戦略に、ペースは上がり、採取の1時間の平均時速は53㎞と息つく間もない展開となる。レナード・カムナ(ボーラ・ハンスグロエ)やティボー・ピノー(グルーパマFDJ)と言ったところが逃げを形成するが、これは危険と判断したメイン集団はこれを許さず、早々と吸収してしまう。
しかし35㎞を過ぎ、総合13位のオーレリアン・パレ・パントレ(AG2Rシトロエン)が動くと、これがこの日の逃げ集団へと形成されていく。そして山岳賞ジャージ奪取を狙うベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト)、今大会何度も逃げているデレック・ジー(イスラエル・プレミアテック)らもそれに加わり、ようやくこの日の逃げが確定する。 そしてここからの山岳でヒーリーは狙い通り山岳ポイントを荒稼ぎし、この日終了時点で山岳賞ジャージ奪取に成功する。
しかしこの日はメイン集団は逃げ切り勝利を許さなかった。残り50㎞の山頂を超える移転で先行していた逃げは僅か12名にまで減り、ユンボ・ヴィズマの牽引で追走のメイン集団はどんどんとライバルを削って40名ほどまでにその数を減らしていた。そのままメイン集団はさらにペースアップを果たして最後の山頂ゴールへの上りに差し掛かると、先行の逃げはさらに人数を減らし、メイン集団も20名にまで絞られた。
しかしユンボ・ヴィズマは手札を使い切ってしまい、ログリッチの右腕であるセップ・クス(ユンボ・ヴィズマ)を残すのみとなる。すると今大会のダークホースとしても名が挙がっていたジェイ・ヴァイン(UAEチームエミレーツ)がメイン集団の先頭で加速をすると、一気にレースは勝利を目指す激しさを増していく。残り10㎞でマリア・ローザのブルーノ・アルミレイル(グルーパマFDJ)が脱落すると、残り8.5㎞で初にすべての逃げが吸収されてしまう。
さらに人数を減らし総合バトルのにおいが色濃くなっていくと、残り5.8㎞で一気にアルメイダが加速、これについていけたのはトーマス、ログリッチ、クス、エドワード・ダンバー(ジェイコ・アルーラ)だった。更にアルメイダが僅かな差を後続に付けて先行しているとここでトーマスが一気にそれに追いついてくる。これにログリッチは反応できず、クス、ダンバーと共に何とかタイムロスを抑えるべく必死の走りを見せる。
しかし勝負は冷徹、アルメイダとトーマスが協調したことで、ログリッチは完全にこの日の敗者となった。先行したアルメイダとトーマスはスプリント勝負へと持ち込み、アルメイダがステージ勝利を挙げた。トーマスは2位で終わったものの、総合ではマリア・ローザを再奪取、二人はボーナスタイムも獲得したことで、ログリッチにタイム差をつけて総合ワン・ツーとなった。ログリッチは25秒遅れのステージ3位でゴール、アルメイダに順位の逆転を許した。
ゲラント・トーマス:「誰もが仕掛けたいものなんだよ。でもそれはいかに時と場所を選び、無駄なエネルギーロスをしないかなんだよ。ログリッチがクスにゆだねている感じが本調子ではないんだろう、と感じたのでそのまま様子見で加速したんだ。そうしたら案の城で、あとはアルメイダとアイコンタクトで何をすべきかをお互い理解したんだ。今のそれぞれの立ち位置とコンディションがこれではっきりしたね。」
ジョアオ・アルメイダ:「夢のようだよ!4年間挑んできて、いつもギリギリで勝利を逃してきたんだ!これがグランツール初勝利だからね!」
プロモズ・ログリッチ:「今大会2回も落車しているから、まだそこから100%リカバーできていないからね。レースは一人でやるものじゃないだろ、ここからまだ僕ももう一段階上げていくよ。」
また総合上位勢にも変動があった。ダンバーが大きく順位を上げ総合5位までジャンプアップを果たした。ダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ヴィクトリアス)、レナード・カムナ(ボーラ・ハンスグロエ)、アンドレアス・レクネサンド(チームDSM)の3名は順位こそシャッフルしただけだが、およそ1分を失い、総合でのタイム差が開く形となった。
ジロ・デ・イタリア第16ステージダイジェスト
ジロ・デ・イタリア第16ステージ順位
1位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) 5h53’27”
2位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス)
3位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +25”
4位 エドワード・ダンバー(ジェイコ・アルーラ)
5位 セップ・クス (ユンボ・ヴィズマ) +1’03”
6位 イラン・ファン・ワイルダー(ソウダル・クイックステップ) +1’16”
7位 ダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ヴィクトリアス)
8位 エイナー・ルビオ(モビスター)
9位 ローレンス・デ・プラス(イネオス・グレナディアス)
10位 サイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアス)
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス) 67h32’35”
2位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +18”
3位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +29”
4位 ダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ヴィクトリアス) +2’50”
5位 エドワード・ダンバー(ジェイコ・アルーラ) +3’03”
6位 レナード・カムナ(ボーラ・ハンスグロエ) +3’20”
7位 ブルーノ・アルミレイル(グルーパマFDJ) +3’22”
8位 アンドレアス・レクネサンド(チームDSM) +3’30”
9位 サイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアス) +4’09”
10位 ローレンス・デ・プラス(イネオス・グレナディアス) +4’32”
H.Moulinette