リエージュ・バストーニュ・リエージュ2023:ポガチャルまさかの落車骨折で手術へ、制したのはこのレースを明確に狙ってきたエヴァネポエル、独走で大会連覇!ピドコックがスプリントを制し2位
ラ・ドワイエンヌ、アルデンヌクラシック最後のモニュメントの絶対的優勝候補者は、3連勝でのアルデンヌ・クラシックスイープを狙うタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)と、レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)の二人だった。しかしその2人の戦いは、、思わぬ形で終焉を迎えてしまった。雨の下りでポガチャルが落車、そのままリタイアとなってしまった。病院へ直行しての診断結果は左手手首の舟状骨と月状骨の骨折、早期の復帰のために即手術を行うこととなった。手術は無事終わり早い復帰が期待される。
エースを失ったUAEチームエミレーツは今シーズンここまで見せていた圧倒的な組織力を発揮できぬままになってしまう。代わりに今シーズンここまで結果も残せなかったソウダル・クイックステップの最強”ウルフパック”集団が完璧に機能することとなった。そして昨年度の大会に次いで今年もそのエースのエヴァネポエルが単独での仕掛けから独走、圧倒的な強さで見事にモニュメント2連覇を果たした。この大会連覇の為に高地トレーニングを積んで、さらには事前のレースをスキップしてき手間で狙い続けたタイトルを見事に掴み取って見せた。
258.5㎞の長丁場は、序盤から11名の逃げが決まる。先日のフレッシュ・ワロンヌでも逃げたゲオルグ・ジマーマン(インターマルシェ・サーカス・ワンティ)らが飛び出していく中、メイン集団をコントロールしたのはエースのトム・ピドコックで勝利を狙うイネオス・グレナディアスだった。更には新たにクラシックのエース格として台頭してきたベン・ヒーリー要するEFエデュケーション・イージーポストもこれに続く。
しかしそん中ポガチャルがミケル・ホノレ(EFエデュケーション・イージーポスト)と共にダウンヒルで落車してしまう。これがソウダル・クイックステップの動きに変化をもたらすこととなる。UAEチームエミレーツのプレッシャーから解放されたウルフパックは、ここから一気に集団の支配権を奪いに行く。本来であればエースであってもおかしくないジュリアン・アラフィリップ(ソウダル・クイックステップ)までもがアシストとして一気に逃げとの差を詰めていく。
ヤン・トラトニック(ユンボ・ヴィズマ)が追走集団から飛び出し先頭に躍り出るシーンもあったが、結局ウルフパックの強烈な攻撃態勢と集団コントロールの前では引き立て役に終わってしまう。フレッシュ・ワロンヌでエースの座を与えられながら輝けなかったルイ・ファルバルケ(ソウダル・クイックステップ)が渾身の引きを見せると、昨年度よりも早い残り33㎞のコート・デ・ラ・ルドゥートの上りでアタック、早くも抜け出してしまう。これに辛うじて反応できたのはピドコック、さらにギウリオ・チッコーネとマティアス・スケルモースのトレック・セガフレド2枚看板がそれを追う。
ピドコックはその後丘の頂上からの下りでエヴァネポエルに追いつくが、その次のカテゴリーのない僅かな上りでエヴァネポエルについていけない。これを確認したエヴァネポエルが29.9㎞で加速、昨年同様の独走態勢へと持ち込んでいった。追走ではピドコックと合流を果たしたトレック・セガフレド勢も、濡れた路面でのリスクを取り切れず個人TT状態のエヴァネポエルとの差を詰めることができない。
エヴァネポエルはそのまま最後まで慎重な走りながらも攻め続け、ゴール前では沿道の観衆を煽り、大会連覇を余裕のガッツポーズで果たした。追走は一度は大きな集団となったが、そこから抜け出したピドコック、ヒーリー、サンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス)の3つ巴の勝負となる。最後はスプリント力を見せたピドコックが制し、自身初のモニュメント表彰台を獲得した。今回の表彰台はエヴァネポエルが171㎝、ピドコックが170㎝、ブイトラゴが174㎝と選手としては小柄な3人が表彰台を独占した。
「2度挑戦して2度制することができたのは嬉しいね。さらに世界チャンピオンとして地元ベルギーの最高峰のレースを制することができたのは最高の気分だよ。これこそが今年狙っていた目標の一つだったからね。正直雨で路面が濡れて難しかったんだ、勝負所は去年と同じで把握していたしピドコックを振り落としたところも、マップ上ではカテゴリーがないからこそ仕掛けどころだと思っていたんだよ。」エヴァネポエルはきっちりと計画を遂行し、目標を達成した。これでUAEツアー、ヴォルタ・ア・カタルーニャのステージレース総合優勝に続くクラシックでの勝利、ポガチャル同様にクラシック、ステージレース、グランツール全てでの優勝を狙えるもう一人の男も絶好調だ。
リエージュ・バストーニュ・リエージュ2023ダイジェスト
リエージュ・バストーニュ・リエージュ2023順位
優勝 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ) 6h15’49”
2位 トム・ピドコック(イネオス・グレナディアス) +1’06”
3位 サンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス)
4位 ベン・ヒーリー(EFエデュケーションイージーポスト) +1’08”
5位 ヴァレンティン・マデュアス(グルーパマFDJ) +1’24”
6位 ギヨーム・マルタン(コフィディス) +1’25”
7位 ティス・ベノート(ユンボ・ヴィズマ) +1’37”
8位 パトリック・コンラッド
(ボーラ・ハンスグロエ) +1’48”
9位 マティアス・スケルモース(トレック・セガフレド)
10位 マーク・ヒルシ(UAEチームエミレーツ)
H.Moulinette