フレッシュ・ワロンヌ2023ユイの壁を制したのはポガチャル!これでアルデンヌクラシック全制覇、狙うは週末勝利で年間スイープ!ライバルたちも「ポガチャルに次いでの2位は優勝に匹敵」と脱帽
強さというのは、最強のライバルたちにも憧れと尊敬の念を植えつけることができる。勝負の世界では勝利は正義、そしてそこに人格やその勝ち方への哲学が加われば、それはもはや信仰の対象にすらなり得る。それほどまでにタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)という男は24歳にして偉大な存在となっている。先週末アムステルゴールドレースの勝利に続き、週半ば開催のフレッシュ・ワロンヌ、激坂ユイの壁が待ち構えるゴール勝負でも際立ったのはポガチャルの圧倒的な強さだった。ギリギリまで仕掛けず、最後の最後、わずか150mで爆発的な加速を見せ独走、鮮やかにアルデンヌクラシック連勝で今シーズン12勝目、これで通算ですべてのアルデンヌクラシック制覇をしたのみならず、年間での3戦3勝、スイープへの挑戦権を得た。
レース目から注目はポガチャルだった。誰がこの男を止めるのか、これこそが各チーム、そしてすべてんライバルたちに与えられた至上命題だった。そしてポガチャルを擁するUAEチームエミレーツは、そんな中今大会の優勝経験者のマルク・ヒルシ(UAEチームエミレーツ)をアシストに据えるなど準備万端、あとは展開次第という状況を用意していた。
もちろん勝負所はゴールまでの激坂、ユイの壁、ここでの力勝負を避けるには逃げ切りしかない。ただしかし各チーム、ポガチャルが昨日のレースのように長距離を逃げる可能性もあることを踏まえ、疑心暗鬼なままにレースはスタートする。
レースはいつも通り逃げが先行、しかしその逃げが予想以上の奮闘を見せる。ゴールまで3周回するコースに入ると、ソレン・クラー・アンデルセン(アルペシン・ドゥクーニンク)、ゲオルグ・ジマーマン(インターマルシェ・サーカス・ワンティ)の二人が逃げ続けるところに、ルイ・ファルヴァルケ(ソウダル・クイックステップ)とサミュエル・バティスティッラ(アスタナ・カザフスタン)が合流を果たす。
追走のメイン集団は射程圏内でその牙を研ぎ澄ましていたが、集団内で落車が発生したことで、追走のペースは一旦落ち着いてしまう。この落車で難を逃れたのはポガチャル、落車した選手を辛うじてかわし、集団先頭へとポジションを挙げていく。これにより再び追走はペースを取り戻し、UAEチームエミレーツがペースを上げじわじわと逃げを追いつめていく。それにより一人、また一人と逃げ吸収されていくが、地元開催の大会、そして今シーズンのチームのここまでの結果が出ていない現状にもどかしさを感じているファルバルケがここから驚異的な走りを見せる。
たった一人になっても後続のメイン集団から逃げ続けた男も、ヒルシの猛烈なペースアップで迫ってきた集団には成す術がなかった。ユイの壁に突入後の残り900mで集団に飲み込まれてしまう。こうなれば各チームのエースが先頭で進路を確保しながらハイペースで駆け上がっていく。誰もが限界を迎えながらも、それでもお互い譲らず主導権争いをし続けながら厳しい勾配に突入すると、残りわずか150m、一気にポガチャルがスパートをかける。それまで周囲とペースを合わせていたのかと感じるくらい余力を残していと思えるくらい鮮やかに、あっという間にライバルたちを引きちぎり独走へと持ち込む。
そのまま背後の状況を確認しながらガッツポーズを決め勝利、しかしこの日はゴール後今までのような余裕はなく、息上がる中で呼吸を必死に整える姿が印象的だった。激化した2位争いはマティアス・スケルモース(トレック・セガフレド)が制し、3位にはミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)が入った。
「今日は正直しんどかった。勝利はいつでも格別だよ!現役である限り、この快感を追い求め続けたいね。次のレースはフレッシュな脚のエヴァネポエルが出場するから、スイープは皆が思っているほど簡単ではないと思うよ。どちらかと言えば彼向けのコースでもあるからね。」そう語るポガチャルが、週末には果たしてどんなレースを見せてくれるのかが楽しみだ。
2位に入ったスケルモースと3位に入ったランダは口をそろえて、「ポガチャルの後で2位なら優勝に等しい。」とコメント、いかにポガチャルが同じプロ選手間同士でも別格と映っているかが伝わってきた。
フレッシュ・ワロンヌ2023ダイジェスト
フレッシュ・ワロンヌ2023順位
優勝 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 4h27’53”
2位 マティアス・スケルモース(トレック・セガフレド)
3位 ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)
4位 マイケル・ウッズ(イスラエル・プレミアテック) ∔03”
5位 ギウリオ・チッコーネ(トレック・セガフレド)
6位 ヴィクトル・ラフェイ(コフィディス)
7位 ティス・ベノート(ユンボ・ヴィズマ)
8位 マクシム・ファン・ギルス(ロット・デスティニー)
9位 ロメイン・バルデ(チームDSM)
10位 ワーレン・バルギル(アルケア・サムシック)
H.Moulinette