ブエルタ・ア・エスパーニャ2022St.18:激戦山岳ステージ!総合上位勢がアタック乱れうちの潰しあいも、最後は圧倒的力量差で総合リーダーのエヴァネポエルがステージ勝利!(ダイジェスト動画あり)
残す山岳ステージも僅か、総合勢にとっては「攻撃せねばならない」ステージ、総合上位勢が一つでも順位を上げるべくアタックの応酬となった。しかしその中でも圧倒的な爆発力を見せたのが総合リーダーのレムコ・エヴァネポエル(クイックステップ・アルファヴァイニル)、総合2位のエンリック・マス(モビスター)のアタックにも動じることなく逆襲に出た。何度も自らペースアップとアタックを繰り返し、逃げ切りを目論んだ選手たちをあっという間に吸収すると、最後まで粘っていたロベルト・ヘーシンク(ユンボ・ヴィズマ)も残り500mで捉え、最後はマスとの一騎打ちとなった。そこでも圧倒的な加速力で、ゴール前だけで2秒差をつけてのゴールでステージ優勝を果たした。「マイヨ・ロホを着てのステージ勝利は最高にクールだね。」と若き王者候補は、ゴール後の荒い呼吸の中でも強気の表情を見せた。
そして山岳賞ジャージのジェイ・ヴァイン(チームDSM)はスタート直後にに落車を喫し左手首付近を痛め大量の出血、残念ながらそのままリタイアとなってしまった。山岳賞獲得に片手をかけていた状況だけに、悔やまれる結果となった。同じ落車で総合4位のカルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス)も痛手を被ったが、満身創痍でこのステージを走りぬいてポジションをキープしている。さらにはポイント賞ジャージのマッズ・ペデルセン(トレック・セガフレド)もこの落車に巻き込まれたが、何とか時間内にゴールを果たした。
各チームが勝負どころであると認識していたこのステージ、しかも一定勾配で上り続ける上りは、一定ペースで上ることを得意とするエヴァネポエル向きのコースだけに、各チームリスクを冒してでも仕掛けるしかないという意気込みが感じられた。スタート直後の第落車もあったが、この日は38名の大所帯の逃げが飛び出していく。ヴァインのリタイアにより実質的に山岳賞リーダーになったリチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス)はモチベーション高く逃げに乗り、この日は山岳ポイントをしっかりと積み重ねた。
そんなステージは逃げが集団に対して8分差まで広げるが、そこからUAEチームエミレーツが追走の主導権を握り動き出す。ホァン・アユソとジョアオ・アルメイダの2枚看板が総合3位と6位にいることは有効な手札であり、連なる最後の山岳の一つ目の上りでアルメイダが飛び出していく。エヴァネポエルはそれは完全に無視、徹底してマスマークに徹する。先頭集団は大きくばらけ、次々と脱落していくが、カラパズやヘーシンクらベテラン勢を中心にペースを作る。
頂上をカラパズが先頭で通過、ここから大きく下るくだりで、エヴァネポエルのいる追走集団は今シーズン限りで引退するヴィンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ・カザフスタン)が得意の下りでテクニックを披露、チームのエースミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ・カザフスタン)のアシストとしてアルメイダの集団との差を一気に詰めていく。
一つでも総合順位を上げたい各選手とチームの思惑が、結果的にエヴァネポエルにとっては自らのアシストがいない状況下でもプラスに働く。そして残り7.5㎞でエヴァネポエルが驚異のアタックを見せる。マスを振り切り加速すると、あっという間に脱落してくる選手たちを追い抜き、さらにはアルメイダを捉えあっさりと追い抜いていく。この圧倒的パフォーマンスは各チームと選手たちに大きなインパクトを与える。エヴァネポエルを振り切るのが難しい以上、各選手自らの総合順位とステージ優勝狙いに専念せざるを得ない状況となる。マスも必死の表情で追いついてくるが、その表情に明らかに余裕はなかった。
先行する先頭では、ヘーシンクが単独となり、今大会ログリッチのリタイアで結果を何も得られていないユンボ・ヴィズマが必死の走りを見せる。しかしその背後ではエヴァネポエルが徐々にライバルたちを振るい落としていく。そしてマスとエヴァネポエルの二人はそのままヘーシンクを追いつめると、残り500mでもがくヘーシンクを捉え、そしてそのままゴール勝負の上りスプリントとなる。ここでもエヴァネポエルは低い重心での爆走を見せ圧勝、総合優勝へと大きく一歩近づいた。
マスは2位でゴール、ヘーシンクは3位に終わり、その背後でジロ覇者のジェイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ)、アユソ、サイメン・アレンスマン(チームDSM)、ベン・オ・コナー(AG2Rシトロエン)、ロペスら総合勢が入った。激しいバトルを繰り広げたが総合トップ10は怪我を負いながら走り続けたロドリゲスとロペスの順位が入れ替わっただけに終わった。
ブエルタ・ア・エスパーニャ第18ステージダイジェスト
ブエルタ・ア・エスパーニャ第18ステージ順位
1位 レムコ・エヴァネポエル(クイックステップ・アルファヴァイニル) 4h45’17”
2位 エンリック・マス(モビスター) ∔02”
3位 ロベルト・ヘーシンク(ユンボ・ヴィズマ)
4位 ジェイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ) ∔13”
5位 サイメン・アレンスマン(チームDSM)
6位 ティボー・ピノー(グルーパマFDJ)
7位 ベン・オ・コナー(AG2Rシトロエン)
8位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ)
9位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ・カザフスタン)
10位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 レムコ・エヴァネポエル(クイックステップ・アルファヴァイニル) 69h59’12”
2位 エンリック・マス(モビスター) +2’07”
3位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ) +5’14”
4位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ・カザフスタン) +5’56”
5位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +6’49”
6位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +7’14”
7位 サイメン・アレンスマン(チームDSM) +8’09”
8位 ベン・オ・コナー(AG2Rシトロエン) +9’34”
9位 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーション・イージーポスト) +9’56”
10位 ジェイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ) +12’03”
H.Moulinette