ブエルタ・ア・エスパーニャ2022St.9:超激坂頂上バトルを制したのは逃げ続けたツール・ド・フランス総合7位のメインチェス!エヴァネポエルはまたしても攻めの一手でライバル撃破(ダイジェスト動画あり)

見ごたえがあるステージ、総合バトルが派手に勃発するステージ、その頂点はクイーンステージと呼ばれるが、それとは別に最難関ステージに与えられる名前があれば、間違いなくそれはこのステージのものだろう。ゴールまでの勾配が3.9㎞で平均勾配12.9%、最大24%というモンスター激坂が、選手たちを大いに苦しめた。

©La Vuelta
今年のツール・ド・フランス総合7位、過去にツールでさらに2度のトップ10、ブエルタ・ア・エスパーニャでもトップ10入りをしている総合の強豪ながら、ワールドツアー未勝利、グランツールステージ優勝なしの小柄な南アフリカ出身の30歳、ルイ・メインチェス(インターマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオー)が見事な走りで大きな仕事をやってのけた。爆発的な走りは一切なく、地味に思えるほど淡々と上る、切れ味が全くない走法ながら、このステージでは総合優勝争いをしている面々と変わらぬ速度で激坂をこなし、自身初の表彰台中央に上がった。「引退するまでに一度はワールドツアー、グランツールで表彰台に上がりたかったんだよね。」ニヒルに笑いながらメインチェスは語った。「正直この数日で、総合上位勢の速さにはついていけなかったんだ。だったら先に仕掛けて逃げておく、しか作戦はなかったよ。」勝利の為にどん欲に動いた男の勝利の女神は微笑んだ。

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そして総合争いではまたしてもレムコ・エヴァネポエル(クイックステップ・アルファヴァイニル)がライバル全員を千切っていく。ライバルとの駆け引き一切なし、自らのペースアップでライバルたちからタイムを奪う豪快な走りで、総合2位のエンリック・マス(モビスター)とのタイム差を早くも1分にまで広げて見せた。未知数と言われ続けたクイックステップ・アルファヴァイニルの総合、山岳アシストは見事に機能、欲を言えばもう一枚山岳のスペシャリストが欲しいところだが、それでもエヴァネポエルの余りある爆発力で、ジロのシミュレーションとはもう呼べないほどの結果を残している。
171.4㎞のこの日のステージは、逃げが決まるまでに40㎞ほどを要したが、最初は10名の逃げが抜けだしたが、総合11位のサイメン・アレンスマン(チームDSM)は逃げの他のメンバーに諭され集団からメイン集団へと戻り、最終的には総合に関係のない9名が容認された。メイン集団はこの日もクイックステップ・アルファヴァイニルが支配、ペースをコントロールし続ける。

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レースはそのまま最後の激坂を目指し、逃げとメイン集団の差が3分ほどのまま推移する。逃げ集団では、ゴール勝負ではクライマーのメインチェスが有利なこともあり、早々とアタックの応酬が始まる。メインチェスはそれを追走はしたものの、数名が先行する状態で激坂へと突入していく。じわりじわりと一人ずつかわして順位を上げていくメインチェスは、残り2㎞で先頭に躍り出ると、そこからはマイペースでゴールまで淡々と走り続けた。
その背後では世界チャンピオンのジュリアン・アラフィリップ(クイックステップ・アルファヴァイニル)がの猛烈なペースアップで、激坂突入時にはすでに総合勢は大きくばらけ、そのままエヴァネポエルがライバルたちに有無を言わさずさらにペースアップを続ける。これに反応できたのは総合6位の19歳のホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ)、総合2位のマスと、総合3位のプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)だけだった。総合トップ10に2人を送り込んでいたイネオス・グレナディアスは、総合5位のタオ・ゲイガンハートが激坂前に落車し脱落、しかしもう一人の21歳、総合4位のカルロス・ロドリゲスはエヴァネポエルらからは一旦遅れたものの、ここから粘りの走りを見せた。

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先頭のメインチェスはエヴァネポエルとそん色ないハイペースながら、まったく速さを感じさせない。先頭に躍り出てからタイム差はほぼ縮まることなく、最後は笑顔でガッツポーズを決めながら静かにゴールラインを超えた。

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後方では残り3㎞のバナーを通過するとエヴァネポエルが早くも独走態勢となる。まずアユソとログリッチがだ脱落、マスは最後まで踏ん張るも徐々にその差が広がっていく。こうなればエヴァネポエルはもう手を緩めずどんどんとその差を広げ続けていった。その背後ではロドリゲスが追い付き、マス、アユソとともにスペイン人3名での激しいバトルを繰り広げる。最後はアユソが抜けだし、エヴァネポエルに40秒遅れでゴールした。それに続いてマス、ロドリゲス、ログリッチがゴールラインを超えた。
「正直激坂に入った時点でもうぐったりだったよ(笑)。でも何度か振り返ったら皆どんどん離れていったから、そこからは踏み続けたよ。今大会では僕が最強のクライマーに今のところなっているけど、それはタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)とヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)の最強クライマー二人がいないからだよ。まあでもいい形で今週乗り切れたので、来週も気を引き締めていくよ。来週は暑い地域だし、どっと疲れも来るだろうし、まだまだコロナも蔓延しているので、気を付けていくよ。」発言が何度となく物議を呼んできているエヴァネポエルだが、総合リーダーとして落ち着いたコメントを残した。

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これで総合争いは2位以下が離れ、総合3位から6位が約1分の中での接戦となり、総合8位から15位も1分以内にひしめき合っており、それぞれ総合表彰台、総合トップ10争いが激化している。そして今大会で引退するアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)も総合14位につけている。
ブエルタ・ア・エスパーニャ第9ステージダイジェスト
ブエルタ・ア・エスパーニャ第9ステージ順位
1位 ルイ・メインチェス(インターマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオー) 4h32’39”
2位 サミュエル・バティステラ(アスタナ・カザフスタン) +1’01”
3位 エドアルド・ザンバニーニ(バーレーン・ヴィクトリアス) +1’14”
4位 レムコ・エヴァネポエル(クイックステップ・アルファヴァイニル) +1’34”
5位 フィリッポ・コンカ(ロット・ソウダル) +1’58”
6位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ) +2’08”
7位 サイモン・ググリエルミ(アルケア・サムシック)
8位 エンリック・マス(モビスター) +2’18”
9位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +2’20”
10位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +2’26”
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 レムコ・エヴァネポエル(クイックステップ・アルファヴァイニル) 34h02’32”
2位 エンリック・マス(モビスター) +1’12”
3位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +1’53”
4位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ) +2’33”
5位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +2’36”
6位 サイモン・イェーツ(バイクエクスチェンジ・ジェイコ) +3’08”
7位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +4’32”
8位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ・カザフスタン) +5’03”
9位 ジェイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ) +5’36”
10位 パヴェル・シヴァコフ(イネオス・グレナディアス) +5’39”
H.Moulinette