ツール・ド・フランス2022St.18:総合直接バトルでヴィンゲガードがポガチャルを振り切り勝利!下りでポガチャル落車もヴィンゲガードは復帰を待つフェアプレイ(ダイジェスト動画あり)

総合優勝をめぐるバトルは、極めてハイレベルなバトルとなった。総合首位のヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズ)と総合2位のタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)がこのステージでもライバルを寄せ付けない勝負を展開したが、高速ダウンヒルセクションでお互い仕掛ける中でポガチャルが落車、しかしヴィンゲガードはそこからポガチャルの復帰を待つフェアプレイ、追いついたポガチャルと握手をする象徴的なシーンとなった。

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そこから仕切り直しとなった勝負は、これをきっかけに追いついてきたユンボ・ヴィズマのアシスト勢、さらには先行して逃げ、先頭で待っていたワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)の猛烈な引きにより最後はポガチャルが脱落、ヴィンゲガードはここからさらにペースを上げ独走で今大会2勝目を挙げるとともに、総合優勝へ大きく一歩近づいた。
「最高だよ。とにかくチームメイトに感謝だね。ファン・アールトがポガチャルを脱落させたし、そこまで牽引し続けたセップ・クス(ユンボ・ヴィズマ)をはじめとした皆の走りの結果がこの勝利だよ。勝利で大方総合の決着がつけられてほっとしているよ。でもパリの最終ステージの前に後二日あるから、気を引き締めていくよ。」ヴィンゲガードはチームメイトたちへの感謝を口にするとともに、改めて気を引き締めた。

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最後の山岳ステージは序盤から激しいアタックの応酬となった。特に山岳賞ジャージを着用するサイモン・ゲシュケ(コフィディス)はこのステージの結果いかんで山岳賞を確定させることもできるだけに、必死に何度もアタックを繰り返した。しかしこのステージで逃げを決めたのは、すでにポイント賞ジャージを確定させているファン・アールト、エースのアシストも兼ね、今大会何度も見てきたそのパワーをこのステージでもまた感じることとなる。そして最終的に27名の大所帯の逃げが決まる。ファン・アールトは余裕をもって中間スプリントをトップ通過しさらにポイントを重ねる反面、逃げを逃したゲシュケはチーム名と共に何とか合流すべく猛追をする。
ゲシュケはここでポイントを重ねられない場合、逃げに乗ったギウリオ・チッコーネ(トレック・セガフレド)がポイントを荒稼ぎした場合とゴールでヴィンゲガードが先着、上位に入るだけで逆転されてしまうだけに何とか合流を果たしたかったが、逃げのペースも時速50㎞を超えるハイペースとなり、山岳賞ジャージキープの可能性がどんどんと遠のいていった。そして追走してきたマイヨ・ジョーヌのヴィンゲガードらのメイン集団にも抜かれた瞬間、ゲシュケの緊張の糸は切れ、どんどんと脱落していってしまう。

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オービスク峠では、先行する逃げに加え総合7位のルイス・メインチェス(インターマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオー)がアタック、数名を引き連れ総合でのジャンプアップを目指し抜け出していく。代わりに逃げていた総合10位のエンリック・マス(モビスター)は、下りで一気に順位を落としていく。

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そして次の山岳、コル・デ・スパンデルスでレースは大きく動く。先頭ではファン・アールトが一気に後続を引き離しにかかり、ダニエル・マルチネス(イネオス・グレナディアス)とティボー・ピノー(グルーパマFDJ)の二人のみがそれについていくことができた。その背後のメイン集団では満を持してポガチャルがアタック、それに反応できたのはヴィンゲガードのみだった。残り40㎞以上を残しての総合バトル勃発、ここからポガチャルな何度となくアタックを繰り返す。しかし結果的にヴィンゲガードを引き離せず、そこへクス、そして総合3位のゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス)らが合流を果たすを繰り返す。しかしこの極端なペースのアップダウンを嫌ったトーマスが今度はアタックしばし単独走となる。だがここでもう一度ポガチャルがアタック、一気にトーマス、さらにはその先にいたメインチェスを次々と追い越し、総合1位と2位のランデブー状態となる。

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そのまま頂上を超えたポガチャルとヴィンゲガードは、レースラジオで「砂利が浮いているので要注意」との警告が出ていたにもかかわらず、猛烈な速度で下っていく。するとまずヴィンゲガードがコーナーで挙動を乱し後輪が宙に浮かしながらもなんとか落車を免れ、次にオーバーランでコーナーを曲がろうとしたポガチャルが砂利にホイールを取られ落車してしまう。慌ててバイクに乗りなおし再スタートするポガチャル、だが目の前に待っていたのは予想外の光景だった。このタイミングで仕掛けることができたヴィンゲガードはなんとスローダウン、ポガチャルを待っていたのだ。昨今見ることが少なくなった紳士協定、フェアプレイの精神で二人は握手、ここからは速度を緩め、最後の上りでの直接対決に挑むことを選択する。

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先頭ではファン・アールトがそのままゴールまで最後の上り、オータカムに突入、その力強い走りで山岳をこなしていく。ポガチャルらの集団には、追走していたヴィンゲガードのアシストのクスとティス・ベノート(ユンボ・ヴィズマ)、トーマス、メインチェスらが合流を果たす。こうなれば数的優位が勝敗を左右する。まずはべノートが、そしてクスが牽引しペースはどんどんと上がっていく。気が付けばトーマスやメインチェスらは脱落、ポガチャルとヴィンゲガードのみがクスの刻むペースで上っていく。先頭でもまずピノーが脱落、そしてマルチネスも脱落し、ファン・アールトだけになった先頭に追走の3人が合流を果たす。そしてクスが脱落した残り2㎞、満を持してファン・アールトが最後の大仕事で強烈にペースを上げた。するとこれでポガチャルがついに脱落する。これを確認したファン・アールトはさらに加速、ヴィンゲガードはそれに淡々とついていき、ファン・アールトがアシストを終えると一気に加速、ポガチャルとの差をどんどんと開いていった。

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そのまま独走でヴィンゲガードはガッツポーズでゴール、ステージ優勝と共に、総合優勝も大きく手繰り寄せた。ポガチャルは踏ん張り切り2位でゴールも、総合優勝争いでの実質的な敗北宣言をした。ファン・アールトは3位でゴール、今大会の活躍はTTから平坦ステージ、そして山岳にまで及んだ。
この最後の上りで驚異的な追い上げを見せたのが総合5位のダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ)、早い段階で遅れながらもマイペース走法と、チームメイトのアシストをうまく使いこなし順位を上げ続け、最後はトーマスに追いつきトーマスに続くステージ5位、総合でも4位へと順位を上げた。総合はこの日もシャッフル、メインチェスが総合6位へと順位を上げ、

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「もう僕の逆転は難しいと思うよ。今日はもちろんステージ勝利ではなくマイヨ・ジョーヌだけを目指して走ったよ。そして攻め抜いてこの結果なんだから、2位には満足している。ただ攻めすぎて下りで落車したのは自分の責任だし、ああいう形で勝負のチャンスを自ら失ったことは残念だと思っているよ。今大会はうちがフルメンバーのアシストが揃っていたとしても、ヴィンゲガードを倒すの困難だったと思うよ。ただもっと攻めるチャンスは増えていたとは思うけどね。」ポガチャルは敗北を認めるとともに、チーム力の差を初めて明確に口にした。
ツール・ド・フランス第18ステージダイジェスト
ツール・ド・フランス第18ステージ順位
1位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) 3h59’50”
2位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +1’04”
3位 ワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ) +2’10”
4位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス) +2’54”
5位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +2’58”
6位 アレクセイ・ルチェンコ(アスタナ・カザフスタン) +3’09”
7位 ダニエル・マルチネス(イネオス・グレナディアス)
8位 セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ) +3’27”
9位 アレクサンダー・ヴラソウ(ボーラ・ハンスグロエ) +4’04”
10位 ティボー・ピノー(グルーパマFDJ) +4’09”
ツール・ド・フランス総合順位
1位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) 71h53’34”
2位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +3’26”
3位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス) +8’00”
4位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +11’05”
5位 ナイロ・キンターナ(アルケア・サムシック) +13’35”
6位 ルイス・メインチェス(インターマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオー) +13’43”
7位 アレクサンダー・ヴラソウ(ボーラ・ハンスグロエ) +14’10”
8位 ロメイン・バルデ(チームDSM) +16’11”
9位 アレクセイ・ルチェンコ(アスタナ・カザフスタン) +20’09”
10位 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアス) +20’17”
H.Moulinette