日本のレース界に”喝!”コンチネンタル登録のインタープロサイクリングアカデミーがなぜ海外へ武者修行に出たのか、日仏混成チームが果たす役割と、そこから見えてくるものとは

いま日本のレース界はアニメの影響などもあり盛り上がりを見せている。しかし海外で活躍できる日本人はすでに海外で活躍をしている新城幸也や別府史之ら数人を除いて育ってきていない。日本の最高峰レースシーンであるJBCFでは多くの選手達がしのぎを削るが、そのレース内容を見てもまだまだ世界は遠いと感じざるを得ない。

『世界を目指すためのレースを ©Interpro』
東京五輪という目標もある中、チームUKYOは海外のレースに選手を送り込んでいるが、今シーズンはもう1チーム海外での武者修行を行っているチームがある。それがインタープロサイクリングアカデミーだ。昨年まではニールプライド・南信スバルと言う名で知られたチームはアマチュアチームながらプロチームにまじり年間総合5位と素晴らしいシーズンを送り、今シーズンからコンチネンタル登録となった。
元々が日仏サイクリング協会からスタートし、チーム関係者の多くが外国籍、そして選手は日本と海外の選手が半々の国際チームだ。現アフリカチャンピオンなども所属し、個性溢れるメンバーとなったチームは、今シーズンは選手育成を目標に掲げ、シーズン中盤UCIヨーロッパツアーなどに選手たちを送り込んだ。

『ヨーロッパでの高地トレーニング ©Interpro』
結果はやはり力不足を露呈することとなったが、それがわかったことが一番の収穫だろう。また主催者が日本からの参戦を快く受け入れ、枠を与えてくれたことからも、機材大国と言える日本のチームがどれほど走れるのか、と言ったところへの関心は高いといえるだろう。日本人選手たちは、世界レベルでのレース慣れをしているチームメイト達から多くを吸収し、実際のハイレベルなレースの場で学ぶ機会を得た。
日本人選手が海外への挑戦でまず立ちはだかるのが語学の壁、世界での活躍も経験しているある日本人選手が、日本国内の若手選手が将来の夢を「ツール・ド・フランス」と語りながらも、一切語学習得に関心がない姿を見て「本気度が感じられない」と語る通り、日本人にとっては語学は自転車選手としてのフィジカルポテンシャル並みに必要不可欠な要素となっている。

『日本とは違う環境、世界に出るにはその経験は不可欠だろう ©Interpro』
インタープロサイクリングアカデミーでは、普段から外国人選手と過ごすことで言葉に慣れるだけではなく、多くの選手が語学を積極的に習得しようとしている。そしてさらに海外遠征を経験させることで、語学に対する意識付けを徹底することも、上を目指すためには必要不可欠なプロフェッショナリズムだということを選手に教えている。
ただインタープロサイクリングアカデミーは監督やオーナーは全て外国籍、またスタッフや選手も外国籍が多いことで、日本の企業からスポンサーを敬遠されがち、また日本の輪界からも距離を置かれてしまっている。確かにチーム関係者のコミュニケーションの問題も多少なりともあるとは思うが、しかしそれでいいのだろうか?若手日本人選手を積極的に海外に連れて行こうとするチームへのもっと積極的なサポートを見たいものだ。

『世界のトップクラスとのレースは最高の経験とトレーニングになる ©Interpro』
いつまでも世界に”機材だけは一流の国”などと揶揄され続けてはいけない。昨年度さいたまクリテリウムで2位に入った内間康平が今年は世界で挑戦、その壁を今肌で感じているはずだ。もっともっと海外へ挑戦する選手が増える必要性は間違いなくある。日本のレースの本数も距離も速度も海外に比べれば練習レベルと言われてしまうことさえある。経験を積む上ではやはり現状の環境を変えていかねば選手たちの飛躍には繋がりにくいだろう。
国内主力チームはあくまでも主戦場を日本に置き、海外遠征などは殆どないのが実情だ。これではなかなか今の日本のレベルを超えていく、絵画レベルに到達するような選手は育たないだろう。しかしこうして今海外への門戸を開こうとしているチーム、海外レースへのコネクションを持っているチームがあるということを、もっと輪界は大切にしなければならないのではないだろうか。
インタープロサイクリングアカデミーが日本のレース界に今突きつけているモノは、これからの日本レース界を考えれば、輪界がもっと真摯に向き合わねばならない実情だろう。
H.Moulinette