ブエルタ・ア・エスパーニャ2021第21ステージ:最終ステージ個人TTもログリッチが制し4勝目、大会3連覇に華を添える、コート・ニールセンはステージ4勝目ならず(ダイジェスト動画あり)
遂に終幕を迎えた今年のブエルタ・ア・エスパーニャ、最後まで光ったのはプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)の強さだった。最終ステージの個人TTも制し今大会4勝目を挙げた。オープニングの個人TTと最終日個人TTを制し、中判での山岳ステージでもステージを制すなど、圧倒的な強さを随所に発揮、安定した強さでライバルたちの攻撃をかわすだけではなく、自らが積極的に攻撃に出るスタイルで大会3連覇をつかみ取った。
最終ステージ、そのログリッチに4勝目を奪われたが、マグナス・コート・ニールセン(EFエデュケーションNIPPO)がステージ2位に入った。もし勝利していれば、逃げ切り、スプリント、TTと異なるスタイルでの勝利となっていただけに惜しかったが、それでも今大会間違いなく存在感抜群の結果を残して見せた。
総合争いではステージ勝利こそなかったもののエンリック・マス(モビスター)が安定した走りで2位に入った。ログリッチに最後まで食い下がるシーンが何度も見られ、間違いなく総合系の選手としての成長が感じられるとともに、2度目のグランツール総合2位、あと一歩というところまで来ている。
総合3位にはジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス)が入った。エースのミケル・ランダが絶不調、それに代わるセカンドエースとして浮上すると、ジロ・デ・イタリアで総合2位に入ったダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス)と共に、山岳で安定した走りを続けた。そして昨日のステージで逆転で総合表彰台圏内に浮上すると、最終日個人TTでもアダム・イェーツ(イネオス・グレナディアス)の逆転を許さず総合表彰台を決めた。またジーノ・マーダー(バーレーン・ヴィクトリアス)は新人賞獲得と共に総合でも5位に入った。この二人の援護に回ったチームメイトたちの走りもあり、結果としてバーレーン・ヴィクトリアスにチーム総合までもたらす結果となった。新城幸也もそのメンバーの一人として表彰台に上った。
山岳賞はマイケル・ストーラー(チームDSM)、全く予期していなかった選手だったが、なんと逃げ切りなどでステージ2勝、さらにはその後もステージ勝利をニアミスするなど、かなりの存在感を見せた。独走力と思い切りのいい判断力は、今後が楽しみになる存在だ。
ポイント賞は完全復活を遂げたファビオ・ヤコブセン(ドゥクーニンク・クイックステップ)だ。大怪我からの復帰、骨折に加え顔面の復元形成手術の痛みに何度も耐えてきた男が、これ以上ないドラマを呼んだ。誰もが認めるスプリントでの勝利、スプリントの様な高出力では、野球選手がホームランを打つ時同様に歯をくいしばることも多く、歯が命とも呼ばれているが、その歯もあの落車で僅か一本しか残らなかったが、それでもこうして結果で世界中に完全復活を印象付けた。ドゥクーニンク・クイックステップも今大会は完全にそのアシストに徹するなど、組織力の強さを見せつけた。
圧倒的な総合の選手がいると、レース全体がしらけることがあるといわれるが、今大会は様々な選手が特徴的な勝利を重ねることで、非常に見ごたえのある大会となった。ログリッチが守りに入らず、攻めに徹したそのスタイルもさることながら、ライバルチームがいかにログリッチを攻略するかに注目が集まった。残念ながら難攻不落のスロベニアンの牙城は誰も崩せなかったが、それでも純粋に面白いと思える展開を何度もみせてくれた。
これで今年のグランツールは終わったが、これから世界選手権、さらには春先から延期されたために多くのクラシックがシーズン最後まで続く。今大会で活躍した選手たちのさらなる活躍から目が離せない。
ブエルタ・ア・エスパーニャ第21ステージダイジェスト
ブエルタ・ア・エスパーニャ第21ステージ順位
1位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) 44’02”
2位 マグナス・コート・ニールセン(EFエデュケーションNIPPO) +14”
3位 テイメン・アレンスマン(チームDSM) +52”
4位 ヨセフ・チェルニー(ドゥクーニンク・クイックステップ) +1’16”
5位 チャド・ハガ(チームDSM) +1’43”
6位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) +1’49”
7位 フェリックス・グロスシャルトナー(ボーラ・ハンスグロエ) +1’52”
8位 スティ―ブン・クライズワイク(ユンボ・ヴィズマ)
9位 エンリック・マス(モビスター) +2’04”
10位 ヨン・イザギーレ(アスタナ・プレミアテック) +2’06”
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) 83h55’29”
2位 エンリック・マス(モビスター) +4’42”
3位 ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス) +7’40”
4位 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアス) +9’06”
5位 ジーノ・マーダー(バーレーン・ヴィクトリアス) +11’33”
6位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) +13’27”
7位 ダビ・デ・ラ・クルス(UAEチームエミレーツ) +18’33”
8位 セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ) +18’55”
9位 ギヨーム・マルタン(コフィディス) +20’27”
10位 フェリックス・グロスシャルトナー(ボーラ・ハンスグロエ) +22’22”
山岳賞
マイケル・ストーラー(チームDSM)
ポイント賞
ファビオ・ヤコブセン(ドゥクーニンク・クイックステップ)
新人賞
ジーノ・マーダー(バーレーン・ヴィクトリアス)
チーム総合
バーレーン・ヴィクトリアス
H.Moulinette